ヒスタミンと心不全の関連についての検討-H2レセプターブロッカーは心不全を改善するか

文献情報

文献番号
200926010A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒスタミンと心不全の関連についての検討-H2レセプターブロッカーは心不全を改善するか
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 裕之(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 和泉  徹(北里大学 医学部)
  • 安村 良男(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 循環器科)
  • 佐々木達哉(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター 循環器内科)
  • 松原 広己(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 循環器内科)
  • 白木 照夫(独立行政法人国立病院機構岩国医療センター 循環器内科 )
  • 海北 幸一(熊本大学 医学部附属病院)
  • 宮尾 雄治(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
市販されているヒスタミンレセプターブロッカー(H2ブロッカー)を使用することが、心不全の管理にも影響を及ぼすと考えられる。本研究では臨床例から明らかになったヒスタミン刺激と心筋代謝・心不全との関与を明確にし、更にメカニ ズムの分子生物学的解析および多施設による本薬剤の効果確認試験を行い、心不全の病態を新しい側面から明らかにすることを目的とする。
研究方法
我々は新しい情報工学手法を用いた臨床情報解析により、糖尿病治療薬である「αグ ルコシダーゼ阻害剤」および消化性潰瘍治療薬である「H2ブロッカー」が、すでにACE阻害薬・β受容体遮断薬で治療されている心不全症例の心機能改善に有効であることを見出した。本研究では「H2ブロッカー」の 心不全症例に対する作用機序と実効性を下記の4段階に分けて検討した。 1.マウス心不全モデルにおけるH2ブロッカーの心不全予防効果の検討、 2.糖尿病マウスを利用したマウス心筋代謝における長期間高血糖とヒスタミン関連 の検討 、3.成犬ペーシング不全モデルにおけるH2ブロッカーの心不全予防効果の検討、4.多施設共同臨床試験によるH2ブロッカーの心不全に対する効果およびそのメカニズ ムの検討
結果と考察
本研究ではこれら臨床例から明らかになったヒスタミン刺激と心筋代謝・心不全との関わりを明確にするため、分子メカニズムの解明および多施設臨床試験を行った。その結果、マウスおよびイヌ心不全モデルにおいて、H2ブロッカーによる心不全改善効果が明らかとなった。またH2ブロッカーは、拡張型心筋症、虚血性心筋症、心臓弁膜症、 高血圧性心筋症の各症例で心機能低下を抑制する傾向を示した。また、虚血性心筋症、高血圧性心筋症で再入院回数を減少させた。 今後は、今回のデータをもとに産業界と連携し、H2ブロッカーが慢性心不全治療薬として、慢性心不全で苦しむ患者さんに有用であるか否かを検討する必要があると考えられる。また、H2ブロッカーでさらに心血管系に親和性の高い薬剤を、薬学部、民間研究所との共同研究で開発、本結果より、更に強力に慢性心不全を改善する薬剤の作成も必要ではないかと考える。
結論
「H2レセプターブロッカー」は心不全治療に有用である可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200926010B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒスタミンと心不全の関連についての検討-H2レセプターブロッカーは心不全を改善するか
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 裕之(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 和泉 徹(北里大学 医学部)
  • 安村 良男(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 循環器科)
  • 佐々木達哉(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター  循環器内科)
  • 松原 広己(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 循環器内科)
  • 白木 照夫(独立行政法人国立病院機構岩国医療センター  臨床研究部)
  • 海北 幸一(熊本大学 医学部附属院病院)
  • 宮尾 雄治(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
すでに市販されているヒスタミンレセプターブロッカー(H2ブロッカー)を使用すること が、心不全の管理にも大きな影響を及ぼすこと考えられる。本研究ではこれら臨床例から明らかになったヒスタミン刺激と心筋代謝・心不全との関与を明確にし、その分子メカニズムの解析および多施設による薬剤の効果確認試験を行い、心不全の病態を新しい側面から明らかとすることを目的とする。
研究方法
「H2ブロッカー」の心不全症例に対する作用機序と実効性を下記の4段階に分けて検討した。 1.マウス心不全モデルにおけるH2ブロッカーの心不全予防効果の検討、2.糖尿病マウスを利用したマウス心筋代謝における長期間高血糖とヒスタミン関連の検討、3.成犬ペーシング不全モデルにおけるH2ブロッカーの心不全予 防効果の検討、4.多施設共同臨床試験によるH2ブロッカーの心不全に対する効果およびそのメカニズ ムの検討
結果と考察
「マウス心不全モデルにおけるH2ブロッカーの心不全予防効果の検討」および後ろ向き臨床データベース解析により明らかになった「H2ブロッカーの心不全予防効果」を前向きに収集した1200症例のデータを用いた解析を行った。解析ではプロペンシティ解析を行うため、患者背景を含む多変量ロジスティック回帰モデルを用い、各患者がH2ブロッカーを投与される確率(プロペンシティ・スコア)を算出し、プラセボ群およびH2ブロッカー群においてプロペンシティ・スコアがマッチする心不全患者を抽出した。以前の検討から、心不全の基礎疾患によりH2ブロッカーの効果に差があることが明らかとなっており、拡張型心筋症、肥大型心筋症、虚血性心筋症、心臓弁膜症、高血圧性心筋症の5群の基礎心疾患群に分けて検討を行った。拡張型心筋症ではβ遮断薬の投与量の影響が特に強くロジスティック解析モデルに加えた。
 H2ブロッカーは、拡張型心筋症、虚血性心筋症、心臓弁膜症、高血圧性心筋症の各症例で心機能低下を抑制する傾向を示した。また、虚血性心筋症、高血圧性心筋症で再入院回数を減少させた。
結論
本研究は、心不全の本態である心筋機能不全に関して新しい側面から検討するものであり、従来の研究による分子生物学的メカニズムからみた心不全の理解を深めることを可能する。かかる意味において本研究は独創的であり、大きな成果を得られたと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では研究成果かになったヒスタミン刺激と心筋代謝・心不全とのかかわりを明確にし、さらにそのメカニズムの分子生物学的解析および多施設によるかかる薬剤の効果確認試験をおこなうことにより心不全の病態を新しい側面から明らかとする端緒となった。
臨床的観点からの成果
本研究は、心不全の本態である心筋機能不全に関して新しい側面から検討するものであり、従来の研究による分子生物学的メカニズムからみた心不全の理解を深めることを可能とした。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等については、特に本研究内容は反映されていない。今後、学会等に本研究内容を伝達して、積極的に働きかけていく予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究内容は特許を出願中であり、特許を取得できれば創薬などに働きかけていきたい。
その他のインパクト
アメリカ心臓病学会にて発表。海外情報誌に記事が掲載され、世界中に本研究内容が情報発信されている。また、フランス、韓国の製薬メーカーから本研究からの創薬について問い合わせがあった。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
74件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Seguchi O,Takashima S,Kitakaze M et al
A cardiac myosin light chain kinase regulates sarcomere assembly in the vertebrate heart
J Clin Invest , 117 , 2812-2824  (2007)
原著論文2
Asanuma H,Nakai K,Kitakaze M et a
S-nitrosylated and pegylated hemoglobin, a newly developed artificial oxygen carrier, exerts cardioprotection against ischemic hearts
J Mol Cell Cardiol  (2007)
原著論文3
Kitakaze M, Asakura M,J-WIND Inv estigators et al
Human Atrial Natriuretic Peptide and Nicorandil as an Adjunct to Reperfusion Therapy for Acute Myocardial Infarction with ST-segment Elevation;
Lancet , 370 , 1483-1493  (2007)
原著論文4
Asai M,Tsukamoto O,Kitakaze M et al
PKA rapidly enhances proteasome assembly and activity in in vivocanine hearts
J Mol Cell Cardiol , 46 , 452-462  (2008)
原著論文5
Fu H Y, Minamino T.Kitakaze M etal
Overexpression of endoplasmic reticulum-resident chaperone attenuates cardiomyocyte death induced by proteasome inhibition
Cardiovasc Res , 79 , 600-610  (2008)
原著論文6
Fujita M, Asakura M,Kitakaze, M et al
Activation ofecto-5'-nucleotidase in the blood and hearts of patients with chronic heart failure
J Card Fail , 14 , 426-430  (2008)
原著論文7
Liao Y,Zhao H,Asakura M, Kim J,Kitakaze M etal
Atorvastatin slows the progression of cardiac remodeling in mice with pressure overload and inhibits epidermal growth factor receptor activation
Hypertens Res , 31 , 335-344  (2008)
原著論文8
Min K D, H, Asakura M, Kitakaze M et al
Identification of genes related to heart failure using global gene expression profiling of human failing myocardium
Biochemical and Biophysical Research Communications , 393 , 55-60  (2010)
原著論文9
Tsukamoto O, Fujita M,Kitakaze M et al
Natriuretic peptides enhance the production of adiponectin in human adipocytes and in patients withchronic heart failure
Journal of the AmericanCollege of Cardiology , 53 (22) , 2070-2077  (2009)
原著論文10
Takahama H, Minamino T, Kitakaze M et al
Prolonged targeting of ischemic/reperfused myocardium by liposomal adenosine augments cardioprotection in rats
Journal of the American College of Cardiology , 53 (8) , 709-717  (2009)
原著論文11
Sasaki H., Asanuma H.Kitakaze M et al
Metformin prevents progression of heart failure in dogs: role ofAMP-activated protein kinase
Circulation , 119 (19) , 2568-2577  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-