保健・医療サービス等における栄養ケアの基盤的研究

文献情報

文献番号
200926005A
報告書区分
総括
研究課題名
保健・医療サービス等における栄養ケアの基盤的研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
須永 美幸(聖徳大学 人間栄養学部 人間栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 堤 ちはる(日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部 栄養担当)
  • 市川 陽子(静岡県公立大学法人 食品栄養科学部 栄養生命科学科)
  • 田中 久子(女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科)
  • 森奥 登志江(椙山女学園大学 生活科学部 食品栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,007,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、質の高い栄養ケア提供のためのマンパワー確保等の基盤整備を行うことを目的とする。本年度は、(1)米・英・豪州国において栄養専門職の教育・育成の質の確保に用いられている実践能力(competency)の基準を作成し、実践現場で求める到達度と、管理栄養士養成教育により修得できる到達度の実態を比較分析し、課題を明らかにするとともに、(2)病院管理栄養士の業務時間を調査分析し、必要配置数の推算をすることを目的とした。
研究方法
(1) 実践能力の基準(指標案):①病院の実践能力基準検討会を設置し、栄養ケア・マネジメント等の5分野、計106項目からなる調査票を作成した。調査は平成21年12月?平成22年1月に行い、病院の新規採用者に求める実践能力の到達度は栄養部門長(347病院)から、管理栄養士養成課程在籍の4年次学生の80%以上に当てはまる学習成果(到達度)は養成校の臨地実習主担当専任教員(42校)から回答を得て比較分析した。②行政栄養士に求める実践能力指標案は基本指針に基づき作成し、資質向上の必要性、マンパワー充実での実施可能性等の評価について保健所及び市町村保健センター652カ所1267人を対象に平成21年12月?平成22年2月に調査した。
(2)病院業務時間調査:平成20年度調査で協力の得られた157施設とし、平成21年9月中の任意の3日間に10分単位の業務時間及び9月に実施した栄養ケア及び栄養指導等の延べ件数を調査した。回収された80施設、282名のうち、一般病床を有する53病院の155名のデータを解析に用いた。
結果と考察
(1) 管理栄養士の実践能力:①病院で求める実践能力レベルを修得するためにはインターンシップの導入が求められた。②行政栄養士は、複数配置の施設では基本指針の各項目について出来ていると回答する割合が高かった。今後必要とされる実践能力は、栄養ケアの指導・監督、マネジメント能力であり、OJTが重要と考えられた。
(2)管理栄養士の必要数:調査対象病院の平均病床数は355.7床、委託が8割を占め、病棟または診療科担当者は85.2%であった。業務時間は1日平均10時間、全業務時間に占める栄養ケア業務時間は54%、給食管理業務は22%であった。栄養ケアに必要な病院管理栄養士配置数は患者100人に対し3.5人と推算された。
結論
本研究において作成された実践能力基準(指標案)を管理栄養士教育養成・育成における到達目標として活用し、必要数を養成するため、今後、国際標準であるインターンシップの導入、上級栄養専門職や指導者の養成を含めた生涯教育を組込んだ育成体制の構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-01-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200926005B
報告書区分
総合
研究課題名
保健・医療サービス等における栄養ケアの基盤的研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
須永 美幸(聖徳大学 人間栄養学部 人間栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 堤 ちはる(日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部 栄養担当)
  • 市川 陽子(静岡県公立大学法人 食品栄養科学部 栄養生命科学科)
  • 森奥 登志江(椙山女学園大学 生活科学部 食品栄養学科)
  • 田中 久子(女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、保健・医療・福祉・介護の制度改正に伴う栄養ケア・マネジメント体制の導入、さらに特定保健指導ならびに今後推進されていくチーム医療に対応した業務を担う管理栄養士の栄養ケアの質を確保するため、管理栄養士の養成及び生涯教育体制の将来像、さらには諸外国における望ましい栄養ケア体制事例を提示し、栄養ケア基盤の整備に寄与することを目的とした。
研究方法
諸外国における栄養専門職の教育制度について最新の既存資料等により調査・分析を行った。地域保健サービスは厚生労働省行政栄養士業務量調査を活用し、行政栄養士の配置状況等を把握した上で作成した業務量把握様式による業務量調査とともに、新任行政栄養士に必要な実践能力の行動目標を作成して実態を把握した。医療サービスにおける人材育成体制は現任病院管理栄養士を対象にした教育・研修及びキャリアアップ支援体制の実態調査を行った。医療サービスは病院管理栄養士の業務時間調査結果に基づき必要配置数を推算し、さらに病院採用時に求められる管理栄養士の実践能力について評価項目を作成し、現場で求められている実践能力のレベルと養成校において評価されたレベルとの乖離状況を明らかにした。
結果と考察
米英豪州国における栄養専門職の養成は高度専門教育に位置づけ、実践能力(competency)の到達目標により栄養ケアの質を確保するとともに、今後の社会的ニーズに対応するための生涯教育の推進体制が構築されていた。地域保健サービスの充実のためには、常勤管理栄養士の配置環境の
改善が必要であり、栄養ケアは国策を確認しながら地域性を重視し、効果的に実施する方策を具体的に示す必要性が示唆された。新任行政管理栄養士等が実践能力を習得するためには、日常業務において計画的にOJT が遂行される体制の強化、行政経験年数に応じた研修体制の確立が急務であった。
結論
わが国においても管理栄養士に求められる実践能力の到達目標を明らかにするとともに、生涯教育を含めて大学院教育を推進していくことが求められた。
管理栄養士の必要配置数は、入院患者及び外来患者に対する栄養食事指導料を含み、栄養管理実施加算及び栄養サポートチーム加算において評価される病棟業務を担う管理栄養士の業務時間調査から推算することが求められた。これに伴って病院採用時に求められる管理栄養士の実践能力を明確に示し、管理栄養士養成における到達目標として活用が図られることによって教育の質の確保とともに、医療サービスにおける栄養ケアの質の確保に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-01-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
諸外国における栄養専門職の養成・育成体制においては、栄養ケアに関する実践に必要とされる能力(competency)の基準を明確に示し、臨床研修(インターンシップ)等を通じて現場指導者のもとで実践経験を積み習得させていること、さらには国家政策を反映した実践能力の最低基準を習得した必要数を養成したうえで、生涯教育を組み込んだ育成体制を構築し、栄養ケアの質を保証していることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
医療サービスにおける栄養ケアの実践能力に関する項目を、病院において栄養ケアを推進し後進を育成している栄養部門長の管理栄養士ならびに管理栄養士養成課程の管理栄養士の資格を有する専任教員からなる検討委員会を設置し、検討した「実践能力基準」を作成したため、管理栄養士養成のための到達目標として今後活用されることにより、病院管理栄養士の新規採用者における実践能力レベルの向上が期待される。
ガイドライン等の開発
医療サービスの専門職として参画できる実践能力を採用前に習得しているためには、国際標準である学士号以上の学位取得、及びインターンシップと同等の臨床研修の導入が求められ、さらにはプリセプター等の上級専門職の創設や指導者の養成を含めた大学院専門教育の推進、生涯学習を義務づけた育成体制について検討していくことが望まれ、本研究に用いられた実践能力の基準が管理栄養士の養成・育成の到達目標として位置付けられ、医療サービスにおける栄養ケアの質を継続的に保証することが期待される。
その他行政的観点からの成果
一般病床を有する病院における管理栄養士の業務時間調査結果に基づき、栄養ケアを担う管理栄養士の必要数を100床当たり3.5人と推算されたことにより、今後のマンパワー確保に寄与するものと考える。
その他のインパクト
平成21年度流山市栄養士研修会における学校給食事業の一環として学校給食栄養士の資質向上を目的とし、「栄養士の今後のあり方や指導方法について」をテーマに本研究における研究成果である諸外国における栄養専門職の教育制度及び実践能力の習得ならびに専門職としての質の保証に向けた体制について紹介した。学校給食分野においても今後の職能基準のあり方を検討する必要があるのではないかと考える。

発表件数

原著論文(和文)
1件
諸外国における栄養専門職の育成・生涯教育制度
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
平成20年1月 日本健康・栄養システム学会、平成20年9月 日本栄養改善学会、平成21年度9月 日本栄養改善学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
須永美幸、堤ちはる、杉山みち子他
諸外国における栄養専門職の育成・生涯教育制度
日本健康・栄養システム学会誌 , 8 (3) , 25-32  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-