日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究-微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明-

文献情報

文献番号
200926004A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究-微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明-
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 克己(公立大学法人滋賀県立大学 人間文化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 登志夫(神戸薬科大学 薬学部)
  • 吉田 宗弘(関西大学 化学生命工学部)
  • 佐々木 敏(国立大学法人 東京大学大学院医学系研究科)
  • 由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  • 森田 明美(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の食事摂取基準(2010年版)」および今後の改定に向けて,①エビデンスの乏しい栄養素の資料を,実験を通じて得ること,②摂取した栄養素の妥当性,つまり,摂取した栄養素をどの程度ヒトが利用できたかを評価する実用的な方法の創出,③生活習慣病の一次予防のためのエビデンス,つまり,多量栄養素の代謝潤滑油となる微量栄養素の多量栄養素当たりの必要量に関する科学的根拠を得る,④食事摂取基準の普及活動を通じて,国民が食品の好ましくない情報を理解し,危険度を判断できる能力を養い,食品の安心に寄与する,ことである.
研究方法
食事調査と尿中の栄養素並びに関連物質を分析する.
結果と考察
① 乳児の微量栄養素必要量の検討:市販離乳食からの微量ミネラル摂取量の推定を行った.② 微量栄養素の栄養評価の生体指標の創出とその目安量の算定:幼児(2-5歳),小児(10-12歳),成人(18-69歳)の水溶性ビタミン排泄量の目安量を算定した.この目安量を用いて栄養評価・指導を行った.ミネラルも尿中排泄量を指標とした栄養評価方法の開発に取り組み,10種類のミネラルについて摂取量と尿中排泄量との間に正の相関が認められたことを明らかにした.この結果は,尿中ミネラル排泄量を有効なバイオマーカーとして利用し,食事記録によるミネラル摂取量と併用することにより,ミネラル栄養状態を客観的に評価できる可能性を示すものである.③エビデンスのある成人(18-69歳)からエビデンスのない年齢区分(1-17歳)と高齢者(70歳以上)への微量栄養素の外挿法の検討:水溶性ビタミンの尿中排泄率(尿中排泄量/摂取量)を大学生(18-24歳),小児(10-12歳)と高齢者(70歳以上)間で比較した結果,大学生と高齢者との間にはすべてのビタミンにおいて排泄率に有意な差異は認められなかった.④妊婦と授乳婦の微量栄養素必要量の算定方法の統一化:食事摂取基準で示された付加量の妥当性を食事調査による栄養素摂取量と尿中排泄量の二つを指標として評価した.⑤普及活動は3回行った.
平成21年度:3回開催(6月13日北海道, 11月7日滋賀県市, 12月4日福岡県)
結論
 日本人の食事摂取基準の改定に求められていたエビデンスを提出することができた.また,普及活動も十分に実行できた.

公開日・更新日

公開日
2010-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200926004B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究-微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明-
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 克己(公立大学法人滋賀県立大学 人間文化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 登志夫(神戸薬科大学 薬学部)
  • 吉田 宗弘(関西大学 化学生命工学部)
  • 佐々木 敏(国立大学法人 東京大学大学院医学系研究科)
  • 由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  • 森田 明美(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の食事摂取基準(2010年版)」および今後の改定に向けて,①エビデンスの乏しい栄養素の資料を,実験を通じて得ること,②摂取した栄養素の妥当性,つまり,摂取した栄養素をどの程度ヒトが利用できたかを評価する実用的な方法の創出,③生活習慣病の一次予防のためのエビデンス,つまり,多量栄養素の代謝潤滑油となる微量栄養素の多量栄養素当たりの必要量に関する科学的根拠を得る.④食事摂取基準の普及活動を通じて,国民が食品の好ましくない情報を理解し,危険度を判断できる能力を養い,食品の安心に寄与する,ことである.
研究方法
食事調査と尿中の栄養素並びに関連物質を分析する.
結果と考察
① 乳児の微量栄養素必要量の検討.成果:日本人の母乳中(1-5か月)のビタミン,ミネラル濃度をすべて決定した. ②微量栄養素の栄養評価の生体指標の創出とその目安量の算定.成果:尿中ビタミンおよびミネラル排泄量が栄養指標の有効な代替指標として利用でき,食事記録による微量栄養素摂取量と併用することにより,微量栄養素状態を客観的に評価できることを示した.③70歳以上の微量栄養素の必要量の検討.成果:70歳以上の水溶性ビタミン排泄量の目安量を算定した.排泄目安量を用いて栄養評価・指導を行った. ④妊婦の微量栄養素必要量の算定方法の統一化.成果:各々の栄養素の代謝特性を考慮して算定した.たとえば,ナイアシンの付加量はトリプトファンからナイアシンへの転換率が高くなるため不要とした.⑤授乳婦の微量栄養素必要量の算定方法の統一化.成果: {(哺乳量×栄養素濃度)÷相対生体利用率}で求めることが妥当であることを示した. ⑥代表的な1日の食事で摂取される微量栄養素の相対生体利用率の検討.成果: 8種類のビタミンの相対生体利用率(遊離型ビタミンに対する食事性ビタミンの活性比率)を決定した.⑦微量栄養素の耐容上限量に代わる指標の創出:成果: 先行実験としてラットを使用して検討し,異化代謝応答の変動を指標としたニコチンアミドの「代謝上限量」を試みとして算出した.普及活動として,3年間で6回の講演会を開催した.
結論
日本人の食事摂取基準の改定に求められていたエビデンスを提出することができた.また,普及活動も十分に実行できた.

公開日・更新日

公開日
2011-01-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
尿中ビタミンおよびミネラル排泄量が栄養指標の有効な代替指標として利用でき,食事記録による微量栄養素摂取量と併用することにより,微量栄養素状態を客観的に評価できることを示した.
臨床的観点からの成果
糖尿病患者とクローン病患者の栄養素摂取状況とビタミン栄養状態を示した.
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
日本人の食事摂取基準(2010年版)の改定に必要なエビデンスを提供した.具体的には,妊婦に対するナイアシンの付加が不要であること,母乳中のクロム,モリブデンの値を示したこと,母乳中のビタミン含量を明確にしたこと,哺乳量を示したこと,ビタミンの相対生体利用率を示したこと,授乳婦の付加量の算出方法を統一化したこと,などである.
その他のインパクト
平成19年度 : 10月28日滋賀県彦根市「皆で知ろう! 栄養バランス.-生活習慣病予防のために微量栄養素と多量栄養素バランス-」. 2月16日大阪科学技術センター「食と健康に関する講演会」.平成20年度: 12月23日滋賀県立大学「食と健康-栄養学の追究・研究と臨床の視点から-」.平成21年度:6月13日北海道函館市「新しくなった食事摂取基準」. 11月7日滋賀県彦根市「未来の食事」12月4日福岡県小倉市「新しくなった食事摂取基準」

発表件数

原著論文(和文)
22件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuwatari T, Shibata K
Effect of nicotinamide administration on the tryptophan-nicotinamide pathway in humans.
Int. Vitam. Nutr. Res. , 77 , 255-262  (2007)
原著論文2
Sawamura H, Fukuwatari T, Shibata K
Effects of excess biotin administration on the growth and urinary excretion of water-soluble vitamins in young rats.
Biosci. Biotechnol. Biochem. , 71 , 2977-2984  (2007)
原著論文3
吉田宗弘,生田剛
食品および飲料水中のバラジウム含量と日本人のバナジウム摂取量(予報)
Trace Nutrients Reserach , 24 , 65-70  (2007)
原著論文4
福渡努,柴田克己
葉酸の大量摂取が幼若ラットの成長と水溶性ビタミン代謝におよぼす影響
食品衛生学雑誌 , 49 , 51-55  (2008)
原著論文5
福渡努,柴田克己
遊離型ビタミンに対する食事中のB群ビタミンの相対利用率
日本家政学会誌 , 59 , 403-410  (2008)
原著論文6
Fukuwatari T, Shibata K
Urinary water-soluble vitamin and their metabolites contents as nutritional markers for evaluating vitamin intakes in young Japanese women.
J Nutr Sci Vitaminol , 54 , 223-229  (2008)
原著論文7
廣瀬潤子,遠藤美佳,柴田克己ら
日本人母乳栄養児(0?5ヵ月)の哺乳量
日本母乳哺育学会雑誌 , 2 , 23-28  (2008)
原著論文8
Yoshida M, Takada A, Hirose J, Endo M, et al
Molybdenum and chromium concentrations in breast milk from Japanese women.
Biosci Biotechnol Biochem , 72 , 2247-2250  (2008)
原著論文9
福渡努,柴田克己
水溶性ビタミン混合剤投与中止1週間後の尿中水溶性ビタミン排泄量
ビタミン , 82 , 601-606  (2008)
原著論文10
福渡努,柴田克己
パンを主食とした食事中に含まれる水溶性ビタミンの遊離型ビタミンに対する相対利用率
日本家政学会誌 , 60 , 57-63  (2009)
原著論文11
Fukuwatari T, Fujita M, Shibata K.
Effects of UVA irradiation on the concentration of folate in human blood.
Biosci Biotechnol Biochem , 73 , 322-327  (2009)
原著論文12
Tsugawa N, Shiraki M, Suhara Y, et al
Low plasma phylloquinone concentration is associated with high incidence of vertebral fracture in Japanese women.
J Bone Miner Metab , 26 , 79-85  (2009)
原著論文13
福渡努,葛谷真子,佐藤志織,柴田克己
ラットへのビタミンB1あるいはビタミンB2の過剰投与がB群ビタミンの尿中排泄量におよぼす影響
日本食品衛生学会誌 , 50 , 70-74  (2009)
原著論文14
福渡努,伊藤景子,柴田克己
ラットへのピリドキシンの過剰投与がB群ビタミンの尿中排泄量におよぼす影響
日本食品衛生学会誌 , 50 , 75-79  (2009)
原著論文15
Fukuwatari T, Shibata K
Consideration for diurnal variations in human blood NAD and NADP concentrations
J Nutr Sci Vitaminol , 55 , 279-281  (2009)
原著論文16
柴田克己,遠藤美佳,山内麻衣子ら
日本人の母乳中(1?5か月)の水溶性ビタミン含量の分布(資料)
日本栄養食糧学会誌 , 62 , 179-184  (2009)
原著論文17
Shibata K, Fukuwatari T, Watanabe T, et al
Intra- and Inter-Individual Variations of Blood and Urinary Water-soluble Vitamins in Japanese Young Adults Consuming a Semi-purified Diet for 7 Days
J Nutr Sci Vitaminol , 55 , 459-470  (2009)
原著論文18
Fukuwatari T, Sugimoto E, Tsuji T, et al
Urinary excretion of vitamin B12 depends on urine volume in female university students and elderly subjects in Japan
Nutrition Research , 29 , 839-845  (2009)
原著論文19
Takahashi K, Fukuwatari T, Shibata K
Fluorometric determination of pantothenic acid in human urine by isocratic reversed-phase ion-pair high-performance liquid chromatography with post-column derivatization
J Chromatogr , 877 , 2168-2172  (2009)
原著論文20
Kuwabara A, Tsugawa N, Tanaka K, et al
Improvement of vitamin D status in Japanese institutionalized elderly by supplementation with 800 IU of vitamin D3.
J Nutr Sci Vitaminol , 55 , 453-458  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-