日本人の食事摂取基準の活用方法に関する検討

文献情報

文献番号
200926003A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食事摂取基準の活用方法に関する検討
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 今枝 奈保美(名古屋女子大学 家政学部)
  • 荒井 裕介(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト )
  • 森田 明美(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 食事摂取基準プロジェクト )
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部)
  • 堤 ちはる(社会福祉法人 恩賜財団 母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 柴田 克己(滋賀県立大学 人間文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省は平成21年5月に平成22年4月より5年間使用する日本人の食事摂取基準(2010年版)を公表した。2010年版においては、総論の部分に「活用の基礎理論」が新たに記載された。これは従前の2005年版に比べ大きく前進した部分であると評価される。しかし、管理栄養士等がさまざまな現場において、食事摂取基準を適切に活用しようとする場合には、さらに具体化して整理しないと、十分に落とし込むことが困難と考えられた。そこで、研究3年目は、これまでに得られた知見を基に食事摂取基準の利用者にとって、無理なく適切で誤解なく、それぞれの状況に応じた望ましい活用法が理解されることを目的に取り組みを実施した。
研究方法
前年度に食事摂取基準の適切なアセスメントとその手順を取りまとめた活用書について、日本人の食事摂取基準(2010年版)の公表にあわせて、整合性が取れるようにその内容を改めた。一方、管理栄養士養成施設等における日本人の食事摂取基準の教育手法の向上、栄養管理の現場における活用スキルの向上を目的とした、アンケート調査や普及啓発を目的としたセミナーを実施し、その問題点や改善策も検討した。また、食事バランスガイドの各種設定の変更についても検討した。
結果と考察
改定した活用書については、普及啓発を目的としたセミナーに参加した管理栄養士等に評価をしてもらい、全般的には具体的な業務に落とし込みやすいことが確認された。管理栄養士等養成課程の給食経営管理分野担当教員に実施したアンケート結果では、種々の工夫がなされている一方で、アセスメント情報の不足、給与栄養目標量の設定等について、教育上の課題が認められた。さらに食事バランスガイドのサービングサイズ数の設定について、エネルギーに関わる点について部分的な修正が必要であることが確認された。
結論
食事摂取基準(2010年版)においては、新たに活用の基礎理論が示されたことによって、利用者の理解は深まるものと考えられる。しかし、管理栄養士等が幅広く携わる栄養管理業務等における具体的な落とし込みは未だ十分ではない。今後もさまざまな形でも試行錯誤や調査・研究の積み重ねが求められる。また、小さな取り組みの成果を集積し、適切に取りまとめる仕組みの構築が望まれ、これらから得られる知見が食事摂取基準の活用を前進させることに繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200926003B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の食事摂取基準の活用方法に関する検討
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 今枝 奈保美(名古屋女子大学 家政学部)
  • 荒井 裕介(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト )
  • 坪田(宇津木) 恵(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 食事摂取基準プロジェクト )
  • 森田 明美(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 食事摂取基準プロジェクト )
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部)
  • 堤 ちはる(社会福祉法人 恩賜財団 母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 柴田 克己(滋賀県立大学 人間文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象に国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的として、エネルギー及び各栄養素の摂取量を示したものである。しかし、この活用方法に関して十分な検討は殆ど行われておらず、実践の場での取り扱いは、明確化されていなかった。本研究では、わが国の状況に応じた活用方法を検討し、より具体的な方向性を示すことを目的とした。また、適切に活用できるよう専門家向けに普及啓発活動も実施した。
研究方法
欧米諸国、韓国の食事摂取基準等の活用に関する情報を収集し整理・分析した。日本人の食事摂取基準(2005年版)の活用状況と次期策定に際して望まれる、活用方法理解のための取り組みニーズを明確化する管理栄養士等を対象とした調査を実施した。また、既述の知見を基に具体的な活用のための手順書を作成し、日本人の食事摂取基準(2010年版)にも対応させた。さらに、給食管理及び教育養成に従事する管理栄養士等を対象とした普及啓発のためのセミナーを開催した。その他、食事摂取基準の改定に伴う食事バランスガイドの対応についても検討した。
結果と考察
諸外国における食事摂取基準等の活用に関する状況は国ごとに異なり、栄養士の捉え方や活用(参照)のレベルには差が認められた。国内の管理栄養士等は食事摂取基準の基本的な枠組みは理解できているものの、自身の日常教務に対して具体的な落とし込みが出来ておらず、不安を持っていることが明らかとなり、このことに対する対応を求める意見が多かった。食事摂取基準を適切に活用するためには、対象者・集団に対する定期的なアセスメントとモニタリングが必要であり、ライフステージ別に具体化した手順書として取りまとめた。また、この成果物は、普及啓発のためのセミナーにも用い、概ね適切に理解されることを確認した。食事バランスガイドについては、部分的な追加・修正が必要であると判断された。以上は何れも食事摂取基準の望ましい活用と普及に必要な対応であったと位置づけられる。
結論
食事摂取基準の質的向上は、単に理論や研究レベルの科学的根拠の積み上げのみでは不十分であり、実際に現場において適切に活用されることにより、その目的が達成される。今後もこの種の研究が継続され、実践に根ざした視点での調査・研究の発展と成果の集積が求められる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成16年に公表された日本人の食事摂取基準(2005年版)は、従来からの日本人の栄養所要量とはその目的や概念あるいは策定の根拠等が大きく変化した。しかし、実践的な業務に対して望ましい活用法については、具体的に示されなかった。このため、現場レベルでは混乱が認められた。本研究はこのような状況を少しでも改善するために、国内外からの情報収集と整理、ならびに日本人の食事摂取基準(2010年版)に新たに示された活用の基礎理論の考え方をより具体化するような成果物等の提案とこれらを用いた普及啓発活動を行った。
臨床的観点からの成果
日本人の食事摂取基準(2010年版)においては、これらを適切に活用するため、対象者や対象集団に対するアセスメントやモニタリングを定期的に実施し、対象の状況に応じた栄養管理の見直しを求めている。これはいわゆる健康人だけではなく、生活習慣病のハイリスク者や軽度の罹患者への対応としても極めて重要である。そこで、成果物(解説書)では、ライフステージ別あるいはリスク有無別に確認しておくことが望ましい検査項目等を具体的に示すなど、臨床的観点からも食事摂取基準を活用できるような検討を行っている。
ガイドライン等の開発
食事摂取基準の改定を踏まえた食事バランスガイドの見直しに関する検討については、平成21年度に厚生労働省健康局が設置した「日本人の食事摂取基準」活用検討会でも議題として取り上げられ、この第3回目(平成22年3月8日)には、具体的な内容が検討されている。また、同委員会の最終報告書(平成22年3月)中の記載に関して資料として用いられている。
その他行政的観点からの成果
日本人の食事摂取基準は、国や地方自治体が担う栄養行政にも密接に関与している。中でも特定給食施設等に対する指導は自治事務となっていることから、各自治体が個別に条例や規則を定めて対応している。この際、日本人の食事摂取基準をどの様に解釈して施設を指導するのか、あるいは、そこに従事する管理栄養士等に対する研修などが課題となっている。本研究では、地方自治体からの問い合わせや情報提供の依頼があった場合、積極的に対応し、研究成果の還元を行うと共に、現場サイドからの意見や要望の吸い上げも行った。
その他のインパクト
本研究の成果物である「日本人の食事摂取基準(2010年版)を適切に活用するための具体的な留意事項等に関する取りまとめ:解説(書)」を用いて、平成21年12月に2か所で管理栄養士等を対象としたセミナーを開催した。また、これとは別に管理栄養士等養成施設の給食経営管理分野を担当する教員向けに食事摂取基準の活用に関わる教授法等についてのセミナーも開催した。各参加者に対してはアンケートを実施し、この分野における課題の明確化と共に、この種の取り組みに対する期待の大きさ明らかとなった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-