バーチャルスライドシステムを用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200925058A
報告書区分
総括
研究課題名
バーチャルスライドシステムを用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松野 吉宏(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 高志(岩手医科大学 医学部)
  • 飯嶋 達生(茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 病理診断科)
  • 山城 勝重(国立病院機構北海道がんセンター 臨床研究部)
  • 長谷部 孝裕(国立がんセンターがん対策情報センター)
  • 有廣 光司(広島大学 広島大学病院)
  • 真鍋 俊明(京都大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国のがん患者それぞれに最適で質の高いがん医療を提供するためには、その基盤となる高い水準の病理診断を均てん化する必要がある。本研究は、有効性が大いに期待されるバーチャルスライド(VS)技術を用いた遠隔病理診断支援のあり方を多角的に検討し、診断支援網の構築を目指す。
研究方法
がん診療の質的向上と均てん化の観点からVSをどのように役立てていくことができるか、施設や地域における取り組みの実例を集積するとともに、各自治体や各医療圏、地域などの枠組みの中で行われている病理診断体制の実情を勘案し、病理診断支援拠点網構築の手順や運用を検討してきた。
結果と考察
1)VSを用いた病理補助診断法の集約化と精度管理体制の構築
がんの病理診断には必須となっている免疫染色等の病理補助診断法の施設間差を解消するため、染色作業を地域内の拠点施設に集約化し、染色標本をVSで各地域医療機関の病理医が観察するというモデルの実施可能性を検証している。本年度は、乳癌症例の手術標本、生検標本に対するER, PgRの免疫染色標本を準備し、各医療機関の30名の病理医によりVS観察と顕微鏡観察との再現性を検討している。
2)VSの有効利用を推進するための地域別ワーキンググループの編成と、運用計画立案の支援
北海道地区をモデルとし、日本病理学会北海道支部との共同作業として道内医療機関における病理医配置、遠隔病理診断の実態の調査・整理を行った。VSを用いたとしても術中迅速診断を行うために新たな病理検査室の立ち上げを要する二次医療圏、送られたVS画像を受けて診断する施設の病理専門医の業務量確保などを含めて、技術開発、行政など関連分野との問題共有も進め、数年から10年後を見据えたVS診断支援網の原案を作成している。
本研究では、昨年度までの研究事業で明らかになった問題点をふまえ、地域のがん診療機関の病理医と、拠点病院や高度専門機関、専門家との連携支援網など、各レベルにおける運用の簡便性や実現性などを検証・開発してきた。実際に諸々の地域や施設が直面する社会的事情に対し、VS活用で解決できるものを見極め、モデル地域を設定しながら具体的な運用計画立案を進めている。
結論
がんの診療支援にVSを有効に用いるためには、技術応用やハード環境の整備とともに地域や各施設での業務態勢やソフト面での課題を継続的に解決していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
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