公衆浴場の衛生管理の推進のための研究

文献情報

文献番号
202227019A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場の衛生管理の推進のための研究
課題番号
22LA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 俊郎(岡山理科大学 獣医学部)
  • 金谷 潤一(富山県衛生研究所 細菌部)
  • 田栗 利紹(長崎県環境保健研究センター)
  • 淀谷 雄亮(川崎市健康福祉局 健康安全研究所)
  • 中西 典子(神戸市健康科学研究所  感染症部)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 枝川 亜希子(大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部)
  • 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 森 康則(三重県保健環境研究所 衛生研究室 衛生研究課)
  • 栁本 恵太(山梨県衛生環境研究所 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
20,587,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 公衆浴場は、適温の湯でレジオネラ等病原性微生物が増殖し、レジオネラ集団感染が繰り返された。衛生向上を目的とする公衆浴場において、衛生低下の問題が生じた(2002年 宮崎県他)。浴場施設の塩素消毒が緊急避難的に導入されたが、高pH(8~)での消毒効果の不足や、塩素臭の敬遠から消毒が不徹底等に陥る(2022年 福岡県)。未だに感染事故がある(2021年 広島県、2022年 兵庫県)。
 先の研究班の成果として、一般的な遊離塩素ではなく、結合塩素(モノクロラミン)の消毒によって、消毒の不足や塩素臭の回避が可能となった。成果は厚労省通知「公衆浴場における衛生等管理要領等について(令和元年9月19日生食発0919第8号)」となり、自治体条例への反映が始まった。本研究は浴場施設の衛生向上と推進、さらに他の管理や対策方法の選択肢を増やすことを目的とする。
研究方法
 研究班を①消毒洗浄、②迅速検査法、③保健所衛生部局との連携、④培養検査の向上、⑤分子疫学の大きく分けて5分野に編成し、これらの成果により直接あるいは間接的に衛生管理の向上と推進が得られることを目指した。研究分担者10名、研究協力者多数の参画を得て、研究を遂行した。地衛研・保健所や民間企業を通じて、現場施設の支援、協力や参加を得た。感染研と地衛研で形成するレファレンスセンターの協力を得て、患者株や環境株の収集解析を行った。
結果と考察
 高pHで塩素消毒の効果が低下することを、L. pneumophila、M. phleiの消毒試験により改めて確認した。高pHには、遊離塩素よりモノクロラミンの消毒効果が高い結果であった。しかしモノクロラミン消毒を続けると従属栄養細菌数が増加し、バイオフィルムの発生が懸念された。モノクロラミンによる消毒だけで解決しようとせず、洗浄が大事なことに代わりはなかった。菌叢を解析した範囲において、モノクロラミン使用中の病原細菌の増加は認められず、レジオネラ属菌も抑えられていた。強く汚染を受けると考えられるのが循環ろ過器だが、これに対しては、オゾン消毒を併用した逆流洗浄により、レジオネラ属菌を10ヶ月の長期に抑える実施例が得られた。
 レジオネラ培養検査は1~2週間の時間を要することから、より迅速な検査法があれば有用である。フローサイトメトリーやモバイルqPCR法を整備し、特に前者の応用が進んだ。現場施設の不衛生な状態を探知し、丁寧な対話により施設が改善した2例が得られた。従来の培養検査法については、精度向上に新しい外部精度管理の選択肢を用意し、また複雑な前処理を避けられるレジオラート法を検討した。
 公衆浴場の実際の現場に立ち入るのは保健所の衛生部局であることから、指導の内容や根拠が大事になる。実態を把握し、不足部分を補うようヒアリングや検討会を実施し、将来の通知や手引の改定を準備した。残念ながら患者が発生した際には、指導に根拠が求められることから、分子疫学の高度化を検討した。従来の免疫凝集法では群別できなかった菌株であっても、M-PCR法により型別できた。MLVA法も改良された。多少なりと感染源調査に要する時間の短縮が期待される。全ゲノム解析を行い、患者株と環境株がSNPsのわずか2~4個違いで対応し、疑い施設が感染源と判断された。レジオネラ感染事故の指導根拠として、知る限りにおいて、初めて全ゲノム解析が使われた事例となった。レジオネラが長期に施設に定着しており、洗浄消毒の困難さが改めて認識された。
結論
 公衆浴場の衛生管理の推進に有用な結果を得た。高pHで塩素消毒の低下を改めて確認した。高pHにはモノクロラミン消毒の効果が高かったが、洗浄の大切さが改めて指摘された。モノクロラミン消毒中の病原細菌の増加は認められず、レジオネラ属菌も抑えられていた。オゾン消毒を併用した逆流洗浄により、循環ろ過器のレジオネラ属菌を10ヶ月間抑えられた。培養検査より迅速なフローサイトメトリーやモバイルqPCR法を整備し、応用により不衛生な状態2例が改善した。レジオネラ培養検査法の向上に新しい外部精度管理の選択肢を用意し、また複雑な前処理を避けられるレジオラート法を検討した。公衆浴場に立ち入る衛生部局とのヒアリングや検討会を行い、通知や手引の改定を準備した。M-PCR法による血清型別、MLVA法の改良、SNPs解析を行い、指導根拠となる分子疫学がより高度化された。患者株と環境株が2~4SNPsの違いで対応し、感染事故の指導根拠として使われた。レジオネラが長期に施設に定着しており、洗浄消毒の困難さが改めて認識された。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,357,000円
(2)補助金確定額
21,357,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,104,946円
人件費・謝金 307,490円
旅費 242,418円
その他 1,932,366円
間接経費 770,000円
合計 21,357,220円

備考

備考
自己資金215円+利息5円=220円差額

公開日・更新日

公開日
2024-02-02
更新日
-