文献情報
文献番号
202227003A
報告書区分
総括
研究課題名
水道スマートメーター導入に向けたデータ利活用の検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
20LA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大瀧 友里奈(国立大学法人一橋大学 大学院社会学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,809,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、スマートメータから得られるデータの利活用の可能性を検討し、その利点を具体的に示すことにより、スマートメータ導入の促進に寄与することである。そのため、①ディープラーニング手法によるデータの解析、②見える化の方法など需要サイドから手法検討、③多様な料金制度の検討、という3つのアプローチを行う。
研究方法
1. ディープラーニング手法による解析
これまでに取得済みの水使用量および水使用行動のデータを用いて、解析に適した形へのデータクリーニング手法や、水使用量データの特徴にあったディープラーニング手法を引き続き探索した。
また、実社会への実装を想定し、流量センサーのサンプリング周期を1秒から20秒まで粒度を粗くしていき、精度の劣化度を測定した。
2. 需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
スマートメータデータを活用したサービスとして考えられている「見える化」としては、同じような家庭との比較を棒グラフ等で表示する方法が一般的に行われているが、一方で多様な価値観にあわせた提示が重要であるという指摘がある。そこで、資源に対する価値観(つまり、節電や節水についての価値観)を元にクラスタリングし、同じ集団との比較により使用量を見える化することの有効性を検証した。
3. 多様な料金制度の検討
国外での水道スマートメータ導入に伴うダイナミックプライシングの適用に関する研究、および国内電力の季節別料金制度に関する研究についてサーベイを行った。更に、日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証するため、経済的方法(Pricing)とナッジが短期的に水使用量に与える影響についてのフィールド実験を行った。
これまでに取得済みの水使用量および水使用行動のデータを用いて、解析に適した形へのデータクリーニング手法や、水使用量データの特徴にあったディープラーニング手法を引き続き探索した。
また、実社会への実装を想定し、流量センサーのサンプリング周期を1秒から20秒まで粒度を粗くしていき、精度の劣化度を測定した。
2. 需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
スマートメータデータを活用したサービスとして考えられている「見える化」としては、同じような家庭との比較を棒グラフ等で表示する方法が一般的に行われているが、一方で多様な価値観にあわせた提示が重要であるという指摘がある。そこで、資源に対する価値観(つまり、節電や節水についての価値観)を元にクラスタリングし、同じ集団との比較により使用量を見える化することの有効性を検証した。
3. 多様な料金制度の検討
国外での水道スマートメータ導入に伴うダイナミックプライシングの適用に関する研究、および国内電力の季節別料金制度に関する研究についてサーベイを行った。更に、日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証するため、経済的方法(Pricing)とナッジが短期的に水使用量に与える影響についてのフィールド実験を行った。
結果と考察
1. ディープラーニング手法による解析
単一区間波形識別器は9クラス分類のrank1識別精度で60%程度の精度である。これは、単一区間波形の特徴が家庭により大きく異なるため訓練データに過学習しやすいことが原因の一つに考えられる。また、測定粒度を粗くしていった場合のシミュレーションを行ったところ、粒度に対して指数関数的に劣化する結果となった。
上記のことより、ディスアグリゲーションの実用化には、更に様々な検討が必要であると考えられる。
2. 需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
4つの価値についての回答を元に、調査参加者216名をクラスタリングした結果、3つのクラスタに分類することができた。
同じ価値観の人(同じクラスタの人)の電気使用量との比較を提示した結果、比較による使用量の変化に有意差はなかった。一方、比較の効果はクラスタごとに異なり、比較の効果があった集団(環境配慮)、無かった集団(倹約重視、日和見)があった。また、「倹約重視」「日和見」では、ブーメラン効果(介入によって使用量が増加する傾向)が見られた。
以上のように、“personalized nudge” (Sunstain, 2012)が有効である可能性が指摘でき、水道への応用可能性を提示することができた。
3. 多様な料金制度の検討
国外水道のダイナミックプライシングについては、スペインのバレンシア地方、ブラジル南部のフロリアノポリス、オーストラリアのクィーンランド地域、イギリスのロンドンなどで研究が行われており、ダイナミックプライシングの節水効果が報告されている。国内電力でのフィールド実験でも経済学的インセンティブがより大きく持続的な効果を持ち、最も低いクリティカルピーク価格で14%、最も高いクリティカルピーク価格で17%の節電となったことが報告されていた。
日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証についてのフィールド実験では、値上げ期間中は、経済的方法によって、水使用量は減少した。一方で、ナッジによる方法は有意な効果がなかった。経済的方法にナッジを組み合わせると、水使用量削減効果が薄れる傾向がある。これは、ナッジの画像で水使用量が多くないことに気づくことで、経済的方法による節水意図が薄れている可能性がある。
単一区間波形識別器は9クラス分類のrank1識別精度で60%程度の精度である。これは、単一区間波形の特徴が家庭により大きく異なるため訓練データに過学習しやすいことが原因の一つに考えられる。また、測定粒度を粗くしていった場合のシミュレーションを行ったところ、粒度に対して指数関数的に劣化する結果となった。
上記のことより、ディスアグリゲーションの実用化には、更に様々な検討が必要であると考えられる。
2. 需要サイドからの水使用データ活用手法の検討
4つの価値についての回答を元に、調査参加者216名をクラスタリングした結果、3つのクラスタに分類することができた。
同じ価値観の人(同じクラスタの人)の電気使用量との比較を提示した結果、比較による使用量の変化に有意差はなかった。一方、比較の効果はクラスタごとに異なり、比較の効果があった集団(環境配慮)、無かった集団(倹約重視、日和見)があった。また、「倹約重視」「日和見」では、ブーメラン効果(介入によって使用量が増加する傾向)が見られた。
以上のように、“personalized nudge” (Sunstain, 2012)が有効である可能性が指摘でき、水道への応用可能性を提示することができた。
3. 多様な料金制度の検討
国外水道のダイナミックプライシングについては、スペインのバレンシア地方、ブラジル南部のフロリアノポリス、オーストラリアのクィーンランド地域、イギリスのロンドンなどで研究が行われており、ダイナミックプライシングの節水効果が報告されている。国内電力でのフィールド実験でも経済学的インセンティブがより大きく持続的な効果を持ち、最も低いクリティカルピーク価格で14%、最も高いクリティカルピーク価格で17%の節電となったことが報告されていた。
日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証についてのフィールド実験では、値上げ期間中は、経済的方法によって、水使用量は減少した。一方で、ナッジによる方法は有意な効果がなかった。経済的方法にナッジを組み合わせると、水使用量削減効果が薄れる傾向がある。これは、ナッジの画像で水使用量が多くないことに気づくことで、経済的方法による節水意図が薄れている可能性がある。
結論
複数家庭に普遍的なディスアグリゲーションについては高い精度を得ることができなかった。また同様に、複数家庭に普遍的に測定粒度を粗くすると、精度が指数関数的に劣化することも明らかになった。需要サイドからの水使用量データの利活用については、使用量を比較した際の効果は人の持つ価値観によって異なっており、環境配慮に重きを置く人には効果的であった。
日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証についてのフィールド実験では、Scarcity Pricingによって水使用量が減少することが実証され、渇水期への活用可能性を見出すことができた。
日本の水道へのScarcity Pricing導入可能性の検証についてのフィールド実験では、Scarcity Pricingによって水使用量が減少することが実証され、渇水期への活用可能性を見出すことができた。
公開日・更新日
公開日
2025-09-05
更新日
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