再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200925026A
報告書区分
総括
研究課題名
再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森 慎一郎(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 内田 直之(国家公務員共済組合虎の門病院 血液内科)
  • 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 山下 卓也(東京都立駒込病院 血液内科)
  • 長藤 宏司(久留米大学医学部 内科学講座)
  • 河野 嘉文(鹿児島大学大学院 小児科学分野)
  • 加藤 裕久(昭和大学薬学部 医薬品情報学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植を実施する際の基本的薬物療法である、前処置薬と免疫抑制剤の個別化、最適化をはかる事により、わが国の治療成績を向上させることを目的とした。これらの臨床試験結果により薬剤の適正使用の方法論が確立した段階においては、各薬剤の添付文書にその成果を反映することを目的とする。これによって研究成果が広く速やかに臨床現場に普及し、治療技術の均てん化に大きく寄与するものと思われる。
研究方法
1) タクロリムスを経口投与量設定におけるタクロリムスクリアランス測定の有用性を検討した2) 肝障害やアゾール系抗真菌剤がタクロリムス血中濃度に及ぼす影響について検討した。3)静注ブスルファンを用いて同種造血幹細胞移植を実施する小児例高齢者例について、薬物動態試験を実施した。3) 合併症治療薬であるバルガンシクロビルの有用性について前向きに検討した。
結果と考察
1. 静注タクロリムスを経口に切り替える際には、推奨される4倍量が至適である患者は40%に過ぎず、タクロリムスクリアランス値に基づく投与量設定が有用である
2. 血清ビリルビン値はタクロリムスクリアランスに大きな影響を与えない。アゾール系抗真菌剤はタクロリムスの血中濃度を上昇させるが、一律の減量は不適切であり、血中濃度モニタリングが必須である。
3.小児例の体重に基づく用量設定は一定の妥当性がある。しかし、薬物動態上極端な過量投与や過少投与となる例が存在し、この様な例を予測する方法論の確立が必要である。
結論
臨床薬理学的試験を実施することにより、造血幹細胞移植療の基本的薬物療法の最適化が可能であることが明らかとなった。研究結果を広く共有する手段を講じることにより、治療技術の均てん化に寄与するものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200925026B
報告書区分
総合
研究課題名
再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森 慎一郎(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 内田 直之(国家公務員共済組合虎の門病院 血液内科)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院 細胞移植学)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 山下 卓也(東京都立駒込病院 血液内科)
  • 長藤 宏司(久留米大学医学部 内科学講座)
  • 河野 嘉文(鹿児島大学大学院 小児科学)
  • 加藤 裕久(昭和大学薬学部 医薬品情報学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植を実施する際の基本的薬物療法である、前処置薬と免疫抑制剤の個別化、最適化をはかる事により、わが国の治療成績を向上させることを目的とした。これらの臨床試験結果により薬剤の適正使用の方法論が確立した段階においては、各薬剤の添付文書にその成果を反映することを目的とする。これによって研究成果が広く速やかに臨床現場に普及し、治療技術の均てん化に大きく寄与するものと思われる。
研究方法
1) シクロスポリン、タクロリムスの至適な薬物モニタリングの方法を決定するため、前向き臨床試験を実施した。2)静注ブスルファンを用いて同種造血幹細胞移植を実施する小児例について、薬物動態試験を実施した3) 合併症治療薬であるシドフォビルやバルガンシクロビルの有用性について前向きに検討した。
結果と考察
1. 高齢者におけるシクロスポリン投与開始量は5mg/kg/日が適切である。2.シクロスポリン点滴静注開始後3時間(点滴終了時)の血中濃度(C3)をHLA一致血縁者間では800ng/dL以上、非血縁者では1,000ng/dL以上に調節する事によりGvHDの抑制が可能である。3. 併用薬剤、性別、実測クリアランス等を考慮する事により、適切なテクロリムスの投与量設定が可能である。4.小児例では、静注テスト量を投与して薬物動態をあらかじめ検討する事により、静注ブスルファンによる重篤な副作用の発生の予測が可能である。5. 造血幹細胞移植後の出血性膀胱炎に対して、シフドフォヴィルは有用である。サイトメガロウイルス感染症に対してバルガンシクロビルは有用であるが、適切な投与量設定が課題である。
結論
臨床薬理学的試験を実施することにより、造血幹細胞移植療の基本的薬物療法の最適化が可能であることが明らかとなった。研究結果を広く共有する手段を講じることにより、治療技術の均てん化に寄与するものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
造血幹細胞移植時に用いられる、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)、移植前処置薬(静注ブスルファン)、合併症治療薬(抗ウイルス剤)について、多数の臨床薬理動態・薬力学試験を実施し、その至適投与法を確立した。特に高齢者、小児、臓器機能障害などの特別な患者群における用量設定や、静注製剤を経口製剤に切り替える場合など、現実の臨床現場で頻繁に遭遇する状況における薬剤エビデンスを確立した。
臨床的観点からの成果
通常薬剤は添付文書の用法、用量を参考に使用されるが、これは主に少数例の治験患者のデータに基づいて設定されている。しかし、現実の臨床現場では、高齢者、小児、肝腎障害患者等、通常の投与量では過量、過少になるリスクを有する患者が多数存在する。本研究班が多数実施した臨床薬理学的試験の結果により、これらの患者に対しても安全かつ有効な薬物投与が可能となった。
ガイドライン等の開発
主任研究者は、日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会のメンバーとして、「造血幹細胞移植後早期の感染管理」「GVHD」「HLA不適合血縁者間造血幹細胞移植」「急性骨髄性白血病」「予防接種」などの日本造血細胞移植学会ガイドラインの作成に関与した。また、新型インフルエンザの流行に際して、造血幹細胞移植患者に対する「インフルエンザ」ガイドラインを緊急的に作成、公表した。
その他行政的観点からの成果
同種造血幹細胞は、生物製剤である造血幹細胞を除けば、純然たる薬物療法である。従って既に方法論が確立している薬物動態学・薬力学的な研究によって薬物治療の最適化をはかる事は重要であるとともに、確実に成果が得られる分野である。しかし、わが国におけるエビデンスは絶対的に不足しており、現場では個人の経験によるさじ加減や欧米のデータに基づいた治療レジメンがそのまま用いられているという現状がある。本研究班の研究成果はこういった状況を打開し、治療成績の向上と治療技術の均霑化に大きく寄与し得るものと期待される。
その他のインパクト
本研究班の研究成果は、国内外の学会にて発表され、論文の形で公表されている。また、主任研究者は収集した薬剤エビデンスのデータベースに基づき、造血幹細胞移植領域で適応拡大可能な薬剤の公知申請に関する研究を実施し、学会と製薬企業の協力のもと、フルダラビンの「同種造血幹細胞移植前処置」及びミカファンギンの「造血幹細胞移植時の真菌感染予防」の効能・効果の適応を取得した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
72件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Onishi Y, Mori S, Kusumoto S, et al
Unrelated-donor bone marrow transplantation with a conditioning regimen including fludarabine, busulfan, and 4 Gy total body irradiation.
Int J Hematol , 85 , 256-263  (2007)
原著論文2
Miyakoshi S, Kami M, Uchida N, et al.
Tacrolimus as prophylaxis for acute graft-versus-host disease in reduced intensity cord blood transplantation for adult patients with advanced hematologic diseases.
Transplantation , 84 , 316-322  (2007)
原著論文3
Kim SW, Mori S, Tanosaki R, et al.
Busulfex (i.v. BU) and CY regimen before SCT: Japanese-targeted phase II pharmacokinetics combined study.
Bone Marrow Transplant , 43 , 611-617  (2009)
原著論文4
Takenaka K, Eto T, Nagafuji K, et al.
Oral valganciclovir as preemptive therapy is effective for cytomegalovirus infection in allogeneic hematopoietic stem cell transplant recipients.
Int J Hematol , 89 , 231-237  (2009)
原著論文5
Nishikawa T, Okamoto Y, Kawano Y, et al.
Unexpectedly high AUC levels in a child who received intravenous busulfan before stem cell transplantation.
Bone Marrow Transplantation , 45 , 602-604  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-