限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200925017A
報告書区分
総括
研究課題名
限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 西脇 裕(国立がんセンター東病院)
  • 森 清志(栃木県立がんセンター)
  • 岡本 浩明(横浜市立市民病院)
  • 野田 和正(神奈川県立がんセンター)
  • 横山 晶(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 樋田 豊明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 根来 俊一(兵庫県立がんセンター)
  • 今村 文生(大阪府立成人病センター)
  • 松井 薫(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 河原 正明(近畿中央胸部疾患センター)
  • 安宅 信二(近畿中央胸部疾患センター・臨床研究センター)
  • 木浦 勝行(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局型小細胞肺がんを対象として、次期第III相試験の治験治療選択を目的とした「エトポシド+シスプラチン(EP)療法1コースと加速多分割胸部放射線療法(AH-TRT)の同時併用(EP/AH-TRT)後の、アムルビシン+シスプラチン(AC)療法とシスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)療法ランダム化第II相試験」の前段階として、「EP/AH-TRT後のAC療法の安全性確認試験」を実施する。
研究方法
対象は、限局型かつ初回治療の小細胞肺がんで、70才以下、ECOG Performance Status (PS) 0-1、測定可能病変を有し、主要臓器機能が保持された症例とする。安全性確認試験では、まず6例でAC療法の安全性を確認し、ランダム化第II相試験の開始までにさらに6-15例を追加して有効性、安全性を評価する。ランダム化第II相試験では、EP/AH-TRT後、CODE療法あるいはAC療法を実施する。主要評価項目は1年無増悪生存割合、全国38施設の共同試験とし、予定症例数80例、集積期間1.5年とする。
結果と考察
「限局型小細胞肺がんに対する、EP/AH-TRTに引き続く、AC療法の安全性確認試験」は、本年6月までに予定21例の登録を完了した。18例(86%)がAC療法3コースまで完遂した。7例にAMRの減量を要した。主な毒性は血液毒性であり、Grade 4の好中球減少を17例(81%)に認めた。発熱性好中球減少は9例に認めたが、そのうち5例で持続期間は1日であった。治療関連死はなかった。抗腫瘍効果は、CR+good PR 18例(81%)、PR 1例、NE 1例、奏効率95%であった。
ランダム化第II相試験は、まもなくJCOGプロトコール審査委員会の承認を得、試験を開始する予定である。
結論
EP/AH-TRT後のAC療法の安全性確認試験において安全性、有効性を評価し、有望な治療法であると結論した。ランダム化第II相試験をまもなく開始する。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200925017B
報告書区分
総合
研究課題名
限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 西條 長宏(国立がんセンター東病院)
  • 西脇  裕(国立がんセンター東病院)
  • 森  清志(栃木県立がんセンター)
  • 岡本 浩明(横浜市立市民病院)
  • 野田 和正(神奈川県立がんセンター)
  • 横山  晶(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 樋田 豊明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 根来 俊一(兵庫県立がんセンター)
  • 今村 文生(大阪府立成人病センター)
  • 松井  薫(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 河原 正明(近畿中央胸部疾患センター)
  • 安宅 信二(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 木浦 勝行(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局型小細胞肺がんを対象として、(1)「エトポシド+シスプラチン(EP)療法1コースと加速多分割胸部放射線療法(AH-TRT)の同時併用(EP/AH-TRT)後のアムルビシン+シスプラチン(AC)療法の安全性確認試験」を行い、実施可能性を評価する。(2)次期第III相試験における試験治療選択のため、「EP/AH-TRT後の、シスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)療法とAC療法のランダム化第II相試験」を実施する。
研究方法
(1)EP/AH-TRT後のAC療法の安全性確認試験
 対象は、限局型小細胞肺がん初回治療例で、70才以下、 PS 0-1、測定可能病変を有するものとする。まず、6例で忍容性を評価し、その後6-15例を追加して安全性、有効性を評価する。
(2)ランダム化第II相試験
EP/AH-TRT後、CODE療法あるいはAC療法を実施する。主要評価項目は1年無増悪生存割合、全国38施設の共同試験とし、予定症例数80例、集積期間1.5年とする。本試験で選択された治療法は次期第III相試験において、現在追跡中の「限局期小細胞肺がんに対する、EP/AH-TRTに引き続く、IPとEPを比較する第III相試験(JCOG0202)」(平成18年度までの本研究事業で283例の登録を完了)の勝者を対照に、有用性を検証する。
結果と考察
(1)EP/AH-TRT後のAC療法の忍容性確認試験
全21例のうち18例(86%)がAC療法3コースまでの治療を完遂した。7例でAMRの減量を要した。Grade 4の好中球減少を17例(81%)に認めた。発熱性好中球減少は9例に認めたが、5例で持続期間は1日であった。治療関連死はなかった。抗腫瘍効果は、CR+good PR 18例(81%)、PR 1例、NE 1例、奏効率95%であった。
(2)ランダム化第II相試験の実施計画書の作成
ランダム化第II相試験の実施計画書は、まもなくJCOGプロトコール審査委員会の審査、承認を得る見込みである。
結論
EP/AH-TRT後のAC療法の安全性、実施可能性を確認した。ランダム化第II相試験は、間もなくJCOGで承認を得、開始する予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
限局型小細胞肺がんに対する標準治療は、エトポシド+シスプラチン療法と加速多分割胸部放射線療法の同時併用である。これに日本独自のシスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)毎週投与法あるいはアムルビシン+シスプラチン(AP)療法を追加する治療は、現時点で最も効果が期待される治療法であるとともに、世界的にも注目を集めている。
臨床的観点からの成果
本研究およびこれに引き続く第III相試験の実施により、全国主要38参加施設の診療のレベルアップ、すなわち日本の肺がん診療レベルの向上および均てん化への貢献が期待される。我々は、本研究で評価する新治療法により、3年生存率が15%向上することを狙っており、大きな治療成績の進歩になると思われる。
ガイドライン等の開発
現時点でガイドライン等への貢献はない。小細胞肺がんの治療体系は、我々の実施してきた一連の第III相試験の成果に基づくところが大きい。本研究において選択された治療法は、引き続き第III相試験で評価され、その成果はガイドラインに組み込まれると思われる。
その他行政的観点からの成果
小細胞肺がんは肺がんの15%程度を占め、その半数は限局期である。我々は、新たな治療法の確立により、治癒率を10-15%向上させることを見込んでいる。これは国民福祉への多大な貢献であると同時に、再発後の化学療法、放射線療法、支持療法とこのための入院などの医療費を削減する経済的効果も期待される。また、日本全国38施設で実施する本研究は、肺がん診療の均てん化およびレベルアップに大きく貢献するものと考える。
その他のインパクト
日本の小細胞肺がん臨床研究は世界のトップにあり、我々の実施した臨床試験は、小細胞肺がんの標準的治療の発展に大きく寄与してきた。本研究は世界的に注目されるものであり、今後得られる成果は、我が国の肺がん診療レベルの高さを改めて世界に示すとともに、医療の進歩のための国際協調の中で極めて大きな貢献となると考える。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
28件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-01
更新日
-