文献情報
文献番号
200925016A
報告書区分
総括
研究課題名
胃上部癌手術における脾合併切除の意義に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐野 武(財団法人癌研究会有明病院 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
- 大下 裕夫(岐阜市民病院 外科)
- 木下 平(国立がんセンター東病院 外科)
- 齋藤 俊博(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 外科)
- 高金 明典(函館五稜郭病院 消化器外科)
- 田中 洋一(埼玉県立がんセンター 消化器外科)
- 二宮 基樹(広島市立広島市民病院 外科)
- 平塚 正弘(市立伊丹病院 外科)
- 平林 直樹(広島市立安佐市民病院 外科)
- 藤田 淳也(市立豊中病院 外科)
- 藤谷 恒明(宮城県立がんセンター 外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
胃上部に発生した胃癌は、たびたび脾門部および脾動脈幹沿いのリンパ節に転移をきたす。これを十分に郭清する目的で、胃全摘に加えて脾を合併切除する術式が広く行われてきた。しかし、脾摘に伴い手術合併症が増加することや脾門リンパ節の郭清効果が不明確なこともあって、脾摘の意義に対する否定的な考えもあり、欧米ではすでに脾摘は危険な手技として避けるべきものという評価が固まりつつある。
本研究では、治癒切除可能な胃上部の進行癌に対する脾摘の意義を多施設共同ランダム化比較対照試験で検証する。
本研究では、治癒切除可能な胃上部の進行癌に対する脾摘の意義を多施設共同ランダム化比較対照試験で検証する。
研究方法
胃上部進行胃癌で胃全摘手術予定の患者から前もって同意を得て、手術中に適格条件を確認し、ランダム割付を行う。治療法は以下の通り。脾摘群:膵脾を脱転し、膵を温存しつつ脾摘を行い、脾動脈周囲および脾門部リンパ節を完全に郭清する。脾温存群:膵脾を脱転せず、脾摘を行わない。脾動脈周囲リンパ節は可能な範囲で郭清する。両群共通:胃全摘術を行い、リンパ節郭清は脾門部を除きD2とする。主評価項目は全生存期間、副次評価項目は術後合併症率、手術時間、出血量。比較デザインは非劣性の証明とする。
結果と考察
平成14年6月から症例登録が開始された。平成18年7月までに目標症例数の64%にあたる319例を登録していたが、この時点で胃癌補助化学療法の多施設共同RCT、ACTS-GCが決着し、S-1投与群の生存期間が手術単独を上回ることが判明したため、プロトコール改訂を行った。平成19年8月末から登録を再開し、21年3月、505例をもって登録を完了した。
平成21年度は、全登録症例の退院を待って副次評価項目の解析を行った。手術合併症発生割合は脾摘群30.3%、脾温存群16.7%と脾摘群で有意に高く(p<0.01)、出血量も脾摘群が多かったが(477ml vs. 405ml、p=0.02)、手術時間には差を認めなかった(239分vs.236分)。以上より、脾摘が手術侵襲を高めることが明確となった。脾摘が手術侵襲を高めることは明確となったため、最終生存解析で脾温存群の非劣性が証明された場合は、脾温存術が標準術式として採用されることになる。
平成21年度は、全登録症例の退院を待って副次評価項目の解析を行った。手術合併症発生割合は脾摘群30.3%、脾温存群16.7%と脾摘群で有意に高く(p<0.01)、出血量も脾摘群が多かったが(477ml vs. 405ml、p=0.02)、手術時間には差を認めなかった(239分vs.236分)。以上より、脾摘が手術侵襲を高めることが明確となった。脾摘が手術侵襲を高めることは明確となったため、最終生存解析で脾温存群の非劣性が証明された場合は、脾温存術が標準術式として採用されることになる。
結論
胃癌に対する脾摘の意義を、多施設共同の大規模ランダム化比較試験で検証するRCTを遂行中である。手術手技の統一・品質管理に留意しつつ、予定の症例数の登録が完了した。副次評価項目の解析により、脾摘の侵襲が有意に大きいことが証明された。最終生存解析(平成26年)により、上部進行胃癌に対する標準手術法に関する重要なエビデンスが得られることになる。
公開日・更新日
公開日
2010-05-31
更新日
-