がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有用性に関する研究

文献情報

文献番号
200925007A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有用性に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内富 庸介(国立がんセンター東病院 臨床開発センター)
  • 清水 研(国立がんセンター中央病院 精神科)
  • 松島 英介(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 平井 啓(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 奥山 徹(公立大学法人名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 大西 秀樹(埼玉医科大学 精神腫瘍科)
  • 引地 孝俊(大分大学医学部・脳神経機能統御講座 精神神経医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
11,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度はがん患者、家族を対象に、以下の研究を行った。
1)がん患者の精神症状に対する有効な精神医学的介入法の開発
大うつ病の重症度予測項目を検討した。
2)がん患者の抑うつに対するスクリーニング介入システムの開発
抑うつのスクリーニングプログラムの実施可能性および有用性を検討した。
3)化学療法を受けるがん患者のQOLの評価法および患者への介入
外来肺がん患者のQOLの実態把握を行った。
4)がん患者への認知行動療法に基づく介入プログラム開発に関する研究
乳がん患者を対象に問題解決療法の実施可能性と有効性を検討した。
5)がん患者のせん妄に関する病態解明と、それに基づく早期発見・介入パッケージの開発
せん妄に対する精神科リエゾン的介入の有用性を検討するための研究を開始した。
6)終末期せん妄を体験する家族に対するケアプログラムの開発
家族支援リーフレットの有用性を検討した。
7)がん患者における意識障害の原因としてのチアミン欠乏症の検討
外来がん患者におけるチアミン欠乏の頻度を検討した。
8)進行がん患者の抑うつ・不安症状に対する精神科アプローチの有効性の研究
専門的治療の有用性を検討した。
研究方法
研究毎に示した。
1)項目反応理論を用いて、重症度を予測する項目を検討した。
2)実施率および精神科受診率を検討した。
3)心理状態、QOLを経時的に評価した。
4)介入前後の心理状態を評価した。
5)介入内容を作成した。
6)遺族に対し質問紙調査を行った。
7)血清チアミン濃度を検討した。
8)精神科医、心理士を含めた介入の有用性を検討した。
結果と考察
研究毎に示した。
1)重症度の予測項目として、”ケアに参加しない”および”社会的ひきこもり”の有用性をしめした。
2)実施可能であるが、精神科受診へのバリアーの対応が課題とされた。
3)臨床症状の改善の有無がQOL全体に影響していた。
4)不安・抑うつが改善し、本プログラムの有用性が示された。
5)リエゾン介入の有用性を検討するための臨床試験を開始した。
6)リーフレットの有用性を示した。
7)約半数で血清チアミンが低下していた。
8)介入は効果的である可能性が示唆された。
結論
問題解決療法プログラムの有用性が示唆された。
精神症状の早期発見プログラムの実施可能性および問題点が明らかになった。
がん患者のせん妄に対する精神医学的介入および家族ケアのための基礎知見が集積された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200925007B
報告書区分
総合
研究課題名
がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有用性に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内富 庸介(国立がんセンター東病院 臨床開発センター)
  • 清水 研(国立がんセンター中央病院 精神科)
  • 松島 英介(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 平井 啓(大阪大学大学院 人間科学研究科)
  • 奥山 徹(公立大学法人名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 大西 秀樹(埼玉医科大学 精神腫瘍科)
  • 小早川 誠(広島大学病院 精神科)
  • 引地 孝俊(大分大学医学部・脳神経機能統御講座 精神神経医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者、家族を対象に、以下の研究を行った。
1)がん患者の精神症状に対する有効な精神医学的介入法の開発
終末期がん患者の実存的苦痛に対するディグニティ・セラピーの実施可能性を検討した。
2)がん患者の抑うつに対するスクリーニング介入システムの開発
抑うつのスクリーニングプログラムの実施可能性および有用性を検討した。
3)化学療法を受けるがん患者のQOLの評価法および患者への介入
化学療法を受ける患者のQOLを評価した。
4)がん患者への認知行動療法に基づく介入プログラム開発に関する研究
乳がん患者を対象に問題解決療法の実施可能性と有効性を検討した。
5)がん患者のせん妄に関する病態解明と、それに基づく早期発見・介入パッケージの開発
せん妄に対する精神科リエゾン的介入の有用性を検討するための研究を開始した。
6)終末期せん妄を体験する家族に対するケアプログラムの開発
家族支援リーフレットの有用性を検討した。
7)がん患者における意識障害の原因としてのチアミン欠乏症の検討
外来がん患者におけるチアミン欠乏の頻度を検討した。
8)進行がん患者の抑うつ・不安症状に対する精神科アプローチの有効性の研究
専門的治療の有用性を検討した。
研究方法
研究毎に示した。
1)終末期がん患者にディグニティ・セラピーを実施した。
2)実施率および精神科受診率を検討した。
3)心理状態、QOLを経時的に評価した。
4)介入前後の心理状態を評価した。
5)介入内容を作成した。
6)遺族に対し質問紙調査を行った。
7)血清チアミン濃度を検討した。
8)精神科医、心理士を含めた介入の有用性を検討した。
結果と考察
研究毎に示した。
1)実施可能性が低いことが示された。
2)実施可能であるが、精神科受診へのバリアーの対応が課題とされた。
3)治療状態に応じた対応の必要性が示唆された。
4)不安・抑うつが改善し、本プログラムの有用性が示された。
5)リエゾン介入の有用性を検討するための臨床試験を開始した。
6)リーフレットの有用性を示した。
7)約半数で血清チアミンが低下していた。
8)介入は効果的である可能性が示唆された。
結論
ディグニティ・セラピーは、実施可能性が低いことが示された。問題解決療法プログラムの有用性が示唆された。
精神症状の早期発見プログラムの実施可能性および問題点が明らかになった。
せん妄に対する精神医学的介入および家族ケアのための基礎知見が集積された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、がん患者に頻度の高い、抑うつ、不安、実存的苦痛、せん妄などの精神症状を標的症状として、効果的な精神医学的介入を開発することを目的とした。主たる成果として、世界に先駆け、がん患者の抑うつに対するスクリーニング介入システムの開発、不安・抑うつ改善のための問題解決療法プログラムの開発、がん患者のせん妄の頻度の高い原因の解明、終末期せん妄を体験する家族に対するケアプログラムの開発を行った。
臨床的観点からの成果
本研究の特色の一つは、わが国の医療システムを念頭においた上で、精神症状への介入法を開発を行う点にあった。その成果として、均てん化を念頭においた簡便な精神症状スクリーニングシステムを開発するとともに、実施可能性の高い問題解決療法プログラムが開発された。中でも2問から構成される質問票を用い、そのスクリーニング結果をもとに担当医が精神科受診を推奨するスクリーングプログラムは、ケアが望まれる精神症状を有するがん患者を専門診療科に早期につなぐ有効な介入であることが示され、国際的にも高い評価を受けた。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
がん患者の療養生活の質を維持向上し、がんになっても安心して過ごすことができるように医療サービスを充実させていく上で、患者に対する適切な精神的ケアの提供は不可欠であるため、本研究で得られた結果の意義は極めて大きいと考えられる。このように、がんになっても適切な精神的ケアが受けられる体制を提供することは、国民の安心感につながり、低いがんの検診率を向上させることにも寄与する可能性が期待される。
その他のインパクト
わが国の一般病院の自殺者で最も頻度が高い疾患はがんであることも明らかにされているため、がん患者の精神症状の早期発見、早期治療を通して、わが国の自殺予防に寄与することも期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
102件
その他論文(和文)
140件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
209件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akechi T, Ishiguro C, Okuyama T,et al
Delirium training program for nurses.
Psychosomatics , 51 (2) , 106-111  (2010)
原著論文2
Akechi T, Okamura H, Nakano T,et al
Gender differences in factors associated with suicidal ideation in major depression among cancer patients
Psychooncology , 19 (4) , 384-389  (2010)
原著論文3
Akechi T, Ietsugu T, Sukigara M,et al
Symptom indicator of severity of depression in cancer patients: a comparison of the DSM-IV criteria with alternative diagnostic criteria.
Gen Hosp Psychiatry , 31 (3) , 225-232  (2009)
原著論文4
Akechi T, Hirai K, Motooka H,et al
Problem-solving therapy for psychological distress in Japanese cancer patients: preliminary clinical experience from psychiatric consultations.
Jpn J Clin Oncol , 38 (12) , 867-870  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-10-01
更新日
-