文献情報
文献番号
202225014A
報告書区分
総括
研究課題名
国民が安心してセルフメディケーションできるICTやIoT技術を活用したOTC医薬品の販売・授与に関する調査研究
課題番号
22KC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
赤川 圭子(佐々木 圭子)(昭和大学 薬学部 社会健康薬学講座 社会薬学部門)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 洋一(名城大学 薬学部)
- 城 祐一郎(昭和大学医学部 法医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,888,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
少子高齢化が進展し、医療費適正化やセルフケア・セルフメディケーションの推進が求められる中、国民が安心安全にOTC医薬品を使用できる環境を構築するため、ICTやIoT技術を用いた適切なOTC医薬品の販売・授与の方法について、早急に検討する必要がある。本研究では、海外におけるICTやIoT技術を活用したOTC医薬品の販売制度の現状と問題点について把握した上で、今後、OTC医薬品の適切な流通・販売のために必要と考えられる措置を整理し、ICTやIoT技術を活用したOTC医薬品の販売・授与について、患者等の利便性の向上を図りながら、国民が安心してセルフケア・セルフメディケーションを実施できるための方策を提言することを目的とした。
研究方法
海外調査は、米国、英国、オーストラリア、韓国およびスウェーデンを対象国とし、法的調査および現地で勤務する薬剤師に対するインタビュー調査を実施した。国内調査は、全国の保険薬局、ドラッグストアを中心に9社のヒアリングを実施し、団体として日本薬剤師会、日本保険薬局協会及び日本ドラッグストア協会の意見聴取も行った。ヒアリング調査を踏まえ、モデル地区として長野県上田地区を選定し、ICTやIoT技術を活用した医薬品の販売の現状を把握するためのWeb調査を行った。ヒアリング調査9社のうち、100店舗以上を経営する8社に対し、専門家による対応が必要な業務に対するICTやIoT技術の導入の現状または導入予定についてWeb調査を行った。さらに、OTC医薬品販売にデジタルサイネージを活用している薬局の視察も行った。
結果と考察
症状の確認から商品の決定、情報提供から副作用情報の収集と、OTC医薬品の適正使用に関わるまでの過程において、海外のOTC医薬品販売に活用されていたICTは、インターネット販売、Webサイト上のチャットによる薬剤師への質問対応、副作用情報の収集等であった。また、在庫管理や医薬品の温度管理にはIoT技術が用いられていた。深刻な薬物濫用問題を抱える米国、英国および豪州では、濫用等のおそれのある医薬品は薬局において販売され、どの薬局からでも購入履歴が販売前に確認できるようICTを活用した統一情報基盤が存在し、販売した際には履歴を残すこととなっていた。また、本研究で調査した国々では、専門家が関わらずとも販売できる医薬品が存在したが、販売可能な年齢制限、数量制限、配合成分・配合量の制限など、濫用や過量摂取につながらないよう安全性を担保するための制限を設けていた。我が国は違法薬物の生涯経験率は低いものの、増加傾向にあることを鑑みると、濫用の恐れのある医薬品に対する販売制限を遵守することに加え、過量服用しないための患者教育も必要と思われた。米国、英国および豪州では、薬剤師等が医療のファーストアクセス先であり、専門家の対面によるセルフケア・セルフメディケーション支援が充実していた。我が国の薬剤師等も、OTC医薬品の利用はセルフケアの一環であることを念頭に、生活者のヘルスリテラシーを向上させるような指導をするなど、生活者を教育することを視野に入れる必要があると考えられた。
国内の現状としては、情報収集の方法は、対面や電話の活用が最も多く、次いでLINEなどのSNSや電子薬歴の活用が多かった。また、具体的な取り組み事例については、個々の薬局やドラッグストアによっても異なるものの、アプリを活用した情報の管理、POSレジやデジタルサイネージの活用などがあったが、取り組み状況にはまだ各主体間において温度差が感じられた。しかしながら、OTC医薬品は、処方箋によらず自らの意思で購入し、使用することができるため、特に濫用等のおそれのある成分を含む場合は、直接対面でのやり取りが必要と考えられているところが多く、消費者の利便性向上を目的としてICTやIoT技術を活用した医薬品の販売・授与を行うことのはリスクを伴うと考えられた。
国内の現状としては、情報収集の方法は、対面や電話の活用が最も多く、次いでLINEなどのSNSや電子薬歴の活用が多かった。また、具体的な取り組み事例については、個々の薬局やドラッグストアによっても異なるものの、アプリを活用した情報の管理、POSレジやデジタルサイネージの活用などがあったが、取り組み状況にはまだ各主体間において温度差が感じられた。しかしながら、OTC医薬品は、処方箋によらず自らの意思で購入し、使用することができるため、特に濫用等のおそれのある成分を含む場合は、直接対面でのやり取りが必要と考えられているところが多く、消費者の利便性向上を目的としてICTやIoT技術を活用した医薬品の販売・授与を行うことのはリスクを伴うと考えられた。
結論
本調査で対象とした国々における事例を導入するには、法整備の違いもあり様々な課題があるが、安全性を担保するための制限やセルフケアに必要な情報基盤等は参考になる。今後、我が国において、OTC医薬品のICTやIoT技術を活用した販売を進めるにあたっては、専門家によるセルフケア・セルフメディケーション支援の機会を増やす契機とし、生活者のヘルスリテラシーを向上させるような教育を実施していくなど、現在より充実させること等が重要と考えられた。また、医薬品に紐づく情報の一元化、デジタル技術を活用する際の共通したデジタル環境整備も必要であることがわかった。
公開日・更新日
公開日
2023-08-04
更新日
-