新興・再興感染症等の感染症から献血由来の血液製剤の安全性を確保するための研究

文献情報

文献番号
202225012A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症等の感染症から献血由来の血液製剤の安全性を確保するための研究
課題番号
22KC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
  • 大隈 和(関西医科大学 医学部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 浦山 健(一般社団法人日本血液製剤機構 中央研究所 感染性病原体研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、検査法の進歩によって輸血後感染症は激減し、安全性は飛躍的に向上した。その一方で気候の温暖化や森林等の開発によって新興・再興感染症が生じ易い環境にある。本研究は新興・再興感染症から献血由来の血液製剤の安全性を確保することを目的とした。特に新型コロナウイルスの国内外での流行によって献血血液の安全性確保が課題となっている。そのため新型コロナウイルスが混入した場合を想定して中和抗体や抗体以外の血漿成分による抗ウイルス活性等の有無を実験的に解析し、安全性の評価を行う。さらに病原体不活化工程による不活化効率も検討し、血漿分画製剤の安全性を変異ウイルス等を含めて実験的に検証する。さらに原料血漿プールでの新型コロナウイルスのSタンパクに対する抗体価や中和抗体価をモニターし、流行拡大やワクチン接種の影響を解析する。これらの評価のためにはBSL3レベルの実験室が必要だがBSL2実験室で実ウイルスと同等に感染性等の評価が可能な感染系の開発も行い、血液製剤の安全性評価に使用できるようにする。その一方で新型コロナウイルス対策が優先されたことによって蚊媒介の感染症(特にフラビウイルス属)や他の新興・再興感染症の対策が疎かになっていると推定される。経済活動の再開と共にこれらの感染症がパンデミックとなり、国内に持ち込まれる可能性が危惧される。また、Q熱など人畜共通感染症の感染リスクについて検討されてこなかったが、最近のペットブームによって犬や猫との濃厚接触が生じていることから検討する。これらのためにWHOやCDC、各地域の感染症研究組織や論文等から新興・再興感染症等の感染症の情報を集め、リスクを評価し関係行政機関に情報提供を行い、特にリスクが高いと判断された感染症に対しては血液から高感度に病原体遺伝子を検出できる方法を開発する。また、培養が困難なウイルスに対して血漿分画製剤のウイルス不活化の評価は、動物由来のウイルスが使用されていたが、B型肝炎ウイルスの培養が可能になったので不活化効果についてモデルウイルスとの相違を明らかにする。また、原料血漿におけるパルボウイルスB 19の流行は4年周期で起こるため中和抗体価も周期的に変動する可能性がある。原料血漿プールでの中和抗体活性を経時的に測定することで現行のパルボウイルスの安全基準が適しているのか検討し、血漿分画製剤の安全性向上に努める。以上の研究によって新興・再興感染症等の感染症から献血血液の安全性確保と安定供給を目指した。
研究方法
・蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、欧州で問題となっているウスツウイルスの検出法開発や性状解析のため2種のウイルス株を検討した。
・国内採血の原料血漿プールから抗パルボウイルスB19V抗体による中和活性を測定した。また、新型コロナウイルスに対する抗体価の推移を経時的に測定した。
・HBVのin vitro感染系を用いて感染性の評価法を改良し、液状加熱による不活化法効果と抗HBs抗体による中和活性を評価した。
・BSL2での新型コロナウイルス感染等の解析のために水疱性口内炎ウイルスを用いた代理ウイルス系作成のためにSタンパクをクローニングした。
・M痘の国内での発生を受け検出法を整備し、60度の液状加熱による不活化効率を検討した。
・献血血液に影響する可能性のある人畜共通感染症等の情報収集とリスク評価及びその検査法の開発のために WHO、CDC、ECDC、国内の感染症発生状況、等から報告を集め精査した。
結果と考察
・導入した2種のウスツウイルスの系統樹解析を行い、由来が判明した。
・原料血漿プールに存在する抗B19V抗体は、B19V抗原スクリーニング検査をすり抜けたB19Vを十分に中和可能であった。また、新型コロナウイルスのSタンパクに対する抗体の変化は、ワクチンの接種人数や回数を非常に良く反映していた。
・代理ウイルスの作成に必要な変異株を含めた新型コロナウイルスのSタンパクをクローニングした。
・HBVの感染性評価法を改良することで精度良く評価ができた。その結果、アルブミン製剤の液状加熱では3Log以上の不活化、200単位の抗HBs抗体によって2X104の感染価を有するHBVが中和できた。
・M痘は60℃10分の液状加熱によって検出感度以下にまで不活化できた。
・2022年度はSARS-CoV-2の第7波と第8波の中で, 様々な新興・再興感染症のアウトブレイクが確認された。中でも2022年7月25日にWHOが緊急事態に該当すると宣言したM(サル)痘に関しては、血中からウイルスが検出されることが報告されている。国内で散発的に感染例の報告があり、今後検出試薬の標準品・参照品の整備等による精度管理の必要性を明らかにした。
結論
これら成果は献血由来の血液製剤の安全性確保のために大いに役立つと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-

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収支報告書

文献番号
202225012Z