危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
202225007A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグと関連代謝物の有害作用評価と乱用実態把握に関する研究
課題番号
21KC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経機構学分野)
  • 北市 清幸(岐阜薬科大学 医療薬剤学大講座 薬物動態学研究室)
  • 嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグの検出ならびに有害作用評価に関する研究を実施した。オピオイド化合物について、行動薬理学的特性および細胞毒性とオピオイドµ受容体作用強度の相関性に関する検討を行った。また、化学計算によるインシリコ評価法を用いてtetrahydrocannabinol(THC)類縁体、Δ9-THCおよびΔ8-THC誘導体のカンナビノイドCB1受容体活性予測を行った。同様に、危険ドラッグの検出手法を明確にする目的で、フェンタニル類似化合物の代謝物の検出手法確立に関する基盤研究を行なった。さらに、新規乱用薬物の研究および評価の際の基礎資料を提供する目的で、10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態に関する予備的疫学調査を試みた。
研究方法
強力なオピオイド作用を有するニタゼン系化合物のオピオイド受容体作用の解析、運動活性に対する影響および精神依存性について検討した。カチノン系化合物の神経毒性発現を評価するため、ドパミントランスポーター (DAT)をターゲットとする簡易機能評価キットの作製を試みた。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの作用強度予測に関する研究としては、活性既知のTHC類縁体を用いてQSAR(定量的構造活性相関)解析を行い、作成した確度の高いQSAR式を用いて活性が未知のTHC類縁体の活性予測を行った。代謝物の検出に関する研究では、GC-MS、LC-MS,LC-MS IT-TOFを用い、フェンタニル類似体であるfluorofranylfentanyl (FFF)をモデルドラッグとしてその位置異性体の測定方法の確立とin vitro代謝実験を実施した。ヒト肝ミクロソームにFFF位置異性体を添加し、経時的に採取したサンプルをLCMS-IT-TOFにて測定し、代謝物の同定を行った。疫学調査:10代の大麻使用少年を対象に大麻ベイプを含む大麻の使用実態および危険ドラッグを含む大麻以外の違法薬物の使用実態を行った。
結果と考察
4種類のニタゼン系オピオイド化合物の投与によって、強力な運動促進作用が発現し、中枢興奮作用を有することが明らかになった。また、4種類は精神依存形成能を有することが明らかになった。同様に、CHO-µ受容体発現細胞を利用して機能解析を行ったところ、µ受容体を介して薬理作用が発現することが明らかになった。行動解析データとオピオイドµ受容体作用強度に相関性があることから、オピオイドµ受容体発現細胞による機能解析から、ニタゼン系オピオイド化合物の中枢興奮作用および精神依存性などの有害作用を推測できる可能性が示唆された。同様に、Δ9-THCおよびΔ8-THC誘導体について、QSAR解析によりCB1受容体を標的にした活性予測を実施し、良好なQSAR式(R2= 0.978)を得た。本QSAR式を用いて、9-THC類縁体および8-THC類縁体の活性予測を行った。化合物12個のマトリックスを完成することができた。今後、評価化合物を増やして検討を行うことにより、THC類縁体包括規制への展開が期待される。また、CATH.a細胞を用いて、DAtracerを反応させ固定後、蛍光アジドとのクリック反応によりドパミンを蛍光標識するクリックケミストリーを行った。カチノン系化合物では蛍光シグナルが同時添加で抑制され、DATへの競合拮抗作用を有していることを評価できた。カチノン系化合物の高用量では神経細胞死が発現し、DAtracerの蛍光シグナルが抑制されていた。さらに、ヒト肝ミクロソーム(HLMs)を用いた代謝実験より、得られた代謝物の測定が可能であった。FFF位置異性体の識別については、GC-MSのみが有効であり、3種の位置異性体が識別可能であることが明らかになった。危険ドラッグの代謝挙動の推定において、HLMs培養細胞による解析は有用であることが示唆された。疫学調査:調査対象の少年において、過去1年以内の大麻ベイプの使用率は、全体の66.7%であった。大麻ベイプ使用群は、大麻使用開始年齢が若く(ベイプ群13.3歳、対照群15.8歳)、薬物関連問題の重症度(DAST-20スコア)の平均値が高かった.。
結論
本研究で確認された動物実験と細胞による総合的な有害作用評価システムは、オピオイド化合物並びに合成カンナビノイドの迅速規制のために貢献できる解析手法であると考えられる。また、コンピュータシミュレーションによる解析を併用することにより、危険ドラッグの有害作用の推測が可能となり、適切な包括指定対象範囲を設定することが可能であると考えられる。培養細胞を利用したフェンタニル類似化合物の代謝物検出ならびに細胞毒性の検出法の妥当性が示された。実態調査については、危険ドラッグに加え、大麻および濃縮製品についても乱用状況を把握していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-08-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,970,000円
(2)補助金確定額
2,970,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,431,766円
人件費・謝金 419,850円
旅費 108,384円
その他 10,000円
間接経費 0円
合計 2,970,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-08-23
更新日
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