文献情報
文献番号
202225005A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン等の品質確保を目的とした国家検定の最適化や国際整合化を目指すための研究
課題番号
21KC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究分担者(所属機関)
- 浜口 功(国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター)
- 高橋 宜聖(国立感染症研究所 治療薬・ワクチン開発研究センター)
- 花木 賢一(国立感染症研究所 安全実験管理部)
- 多屋 馨子(神奈川県衛生研究所)
- 水上 拓郎(国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター)
- 伊藤 睦代(高山 睦代)(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 妹尾 充敏(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 落合 雅樹(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国家検定は、保健衛生上特別の注意を要する医薬品(特に高度な製造技術や試験技術を要するもの)について、製造販売業者等で実施する出荷判定に加えて、検定機関がロットリリースを行う制度であり、WHOにおいても各国の規制当局が実施しなければならない必須要件と定めている。国家検定制度は、ワクチン、血液製剤、抗毒素等(ワクチン等)の品質確保において重要な役割を担っている一方で、近年の医薬品の製造及び品質管理技術の向上に伴い、国家検定制度のあり方については国際的にも検討が進められているところである。こうした背景を踏まえ、過去の厚生労働科学研究で得られた成果及び諸外国の国家検定制度の状況を参考にしながら、本邦の国家検定制度をより効果的かつ効率的な制度に向上させるために必要な調査、研究を行う。
研究方法
本研究では、1)製造・試験記録等要約書(SLP)審査制度の血液製剤、抗毒素製剤等への拡大、2)生物学的製剤の品質管理試験法の評価と改良、3)リスクに応じた国家検定試験の最適化及び試験検査機関の品質システム強化、を主として検討した。
結果と考察
1) 国家検定へのSLP審査導入については、令和3年7月より血液製剤及び抗毒素製剤等でのSLP審査を開始し、すべての生物学的製剤(最終製品)にSLP審査が導入された。
2) 品質管理試験法の評価に関しては、定量的試験結果の安定性及び同等性の評価法として、試験値の正規分布仮定が困難な場合を想定し、矩形分布仮定における評価法を新たに開発した。複数の試験データ群について、正規分布法と矩形分布法の評価結果を比較した結果、ほとんどの試験で同等の評価結果が得られたが、疑外れ値を含む試験では、矩形分布法の方がより厳しい判定になる傾向があった。異常毒性否定試験については、過去の国家検定、自家試験を精査し、製剤の均一性が確認されたことから、現在国内で販売されているすべての生物学的製剤について、生物学的製剤基準(2023年3月27日告示)から異常毒性否定試験の削除が完了した。その他、狂犬病ワクチンの力価試験及びジフテリア毒素無毒化試験の代替法、致死性動物試験の人道的エンドポイント設定の検討を進めた。
3) ワクチンの国家検定へのリスク評価に基づく一部ロット試験の導入に向けて、リスク評価シートを見直し、過去のリスク評価結果を考慮した上で直近の実績等に基づきリスク評価を実施し、試験頻度を減じる対象品目を選定した。国家検定にリスク評価に基づく一部ロット試験が導入されることにより、製造技術や品質管理手法の向上、新規モダリティの製品の導入などに応じた国家検定の最適化や国際整合化が期待できる。ワクチンの安全性の評価に関しては、新型コロナワクチンについて、厚生科学審議会で公表された結果について検討し、新型コロナワクチン接種後の血管迷走神経反射(VVR)は10~20代で頻度が高く、1回目接種後は2回目より頻度が高かったことから、10~20代への初回接種後は、VVRの好発時期である接種後30分間の体調観察が重要と考えられた。試験検査機関の品質システムについては、PIC/SやWHOにおいてISO 17025が実質的な国際標準となっている現状を踏まえ、感染研でもISO 17025の認定を取得することが望ましいと考えられ、(公財)日本適合性認定協会に認定を申請した。認定取得の過程で見いだされた課題等への取組みは、品質システムの強化と向上にも資すると期待できる。
2) 品質管理試験法の評価に関しては、定量的試験結果の安定性及び同等性の評価法として、試験値の正規分布仮定が困難な場合を想定し、矩形分布仮定における評価法を新たに開発した。複数の試験データ群について、正規分布法と矩形分布法の評価結果を比較した結果、ほとんどの試験で同等の評価結果が得られたが、疑外れ値を含む試験では、矩形分布法の方がより厳しい判定になる傾向があった。異常毒性否定試験については、過去の国家検定、自家試験を精査し、製剤の均一性が確認されたことから、現在国内で販売されているすべての生物学的製剤について、生物学的製剤基準(2023年3月27日告示)から異常毒性否定試験の削除が完了した。その他、狂犬病ワクチンの力価試験及びジフテリア毒素無毒化試験の代替法、致死性動物試験の人道的エンドポイント設定の検討を進めた。
3) ワクチンの国家検定へのリスク評価に基づく一部ロット試験の導入に向けて、リスク評価シートを見直し、過去のリスク評価結果を考慮した上で直近の実績等に基づきリスク評価を実施し、試験頻度を減じる対象品目を選定した。国家検定にリスク評価に基づく一部ロット試験が導入されることにより、製造技術や品質管理手法の向上、新規モダリティの製品の導入などに応じた国家検定の最適化や国際整合化が期待できる。ワクチンの安全性の評価に関しては、新型コロナワクチンについて、厚生科学審議会で公表された結果について検討し、新型コロナワクチン接種後の血管迷走神経反射(VVR)は10~20代で頻度が高く、1回目接種後は2回目より頻度が高かったことから、10~20代への初回接種後は、VVRの好発時期である接種後30分間の体調観察が重要と考えられた。試験検査機関の品質システムについては、PIC/SやWHOにおいてISO 17025が実質的な国際標準となっている現状を踏まえ、感染研でもISO 17025の認定を取得することが望ましいと考えられ、(公財)日本適合性認定協会に認定を申請した。認定取得の過程で見いだされた課題等への取組みは、品質システムの強化と向上にも資すると期待できる。
結論
これまでの国家検定の試験成績、SLPの情報等を活用したワクチンの品質等のリスク評価方法については、リスク評価シートを見直し、過去のリスク評価結果を考慮した上で直近(令和4年9月末まで)の実績等に基づきリスク評価を実施し、試験頻度を減じる対象品目を選定した。ワクチンの国家検定にリスク評価に基づく一部ロット試験が導入されることで、国家検定の最適化や国際整合化が期待できる。
動物試験に関する検討に関しては、異常毒性否定試験等の動物試験の今後のあり方について国際的な動向等を踏まえながら幅広く検証した。異常毒性否定試験についてはすべての製剤についてこれまでの試験結果を精査し、すべての結果について問題が無かったことを確認し、またそれぞれの製剤の特徴および製造環境等の確認からも異毒削除による影響がない事を確認し、今後は異常毒性否定試験を用いない品質管理の方法へ移行可能であることが確認された。また、試験精度の向上や3Rs対応を目指した試験法の開発及び改良について、引き続き検討を行っている。
動物試験に関する検討に関しては、異常毒性否定試験等の動物試験の今後のあり方について国際的な動向等を踏まえながら幅広く検証した。異常毒性否定試験についてはすべての製剤についてこれまでの試験結果を精査し、すべての結果について問題が無かったことを確認し、またそれぞれの製剤の特徴および製造環境等の確認からも異毒削除による影響がない事を確認し、今後は異常毒性否定試験を用いない品質管理の方法へ移行可能であることが確認された。また、試験精度の向上や3Rs対応を目指した試験法の開発及び改良について、引き続き検討を行っている。
公開日・更新日
公開日
2024-08-23
更新日
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