がん検診に有用な腫瘍マーカーの開発

文献情報

文献番号
200924046A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診に有用な腫瘍マーカーの開発
課題番号
H21-3次がん・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 哲司(国立がんセンター研究所 化学療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 格(国立がんセンター研究所 プロテオームバイオインフォマティックスプロジェクト)
  • 関根 茂樹(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 佐藤 雄一(北里大学医療衛生学部遺伝子検査学教室附属疾患プロテオミクスセンター疾患診断プローブ開発部門)
  • 菊池 正二郎(京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門)
  • 島原 政司(大阪医科大学感覚器機能形態医学講座口腔外科学教室)
  • 弦間 昭彦(日本医科大学内科学(呼吸器・感染症・腫瘍部門))
  • 藤田 茂之(和歌山県立医科大学 口腔顎顔面外科学講座)
  • 土田 明彦(東京医科大学外科)
  • 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター)
  • 井岡 達也(大阪府立成人病センター 検診部)
  • 八木原 一博(埼玉県立がんセンター 歯科口腔外科)
  • 西 洋孝(東京医科大学 産科婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
68,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん検診で無症状の段階でがんを発見し、早期に治療を開始することは有効ながん対策法の一つと考えられる。本研究班では、非浸襲的に得られる血液を検体に用い、精密検診を行うべき症例を効率良く絞るプレスクリーニングに使用できる新規腫瘍マーカーを開発することを目的とする。
研究方法
東レ株式会社で新たに開発された中空糸膜によるサンプル分画技術を用いて膵がん症例24例と健常者21例の血漿微量タンパク質を分離濃縮し、国立がんセンター研究所で開発された2 Dimensional Image Converted Analysis of Liquid chromatography and mass spectrometry (2DICAL)法で定量解析を行い、膵がんの早期診断に有用な新規腫瘍マーカーを探索した。また大腸がん130症例で細胞重層化関連分子であるダーモカイン(以下DK)の血清中濃度を独自に構築したサンドイッチELISA法で測定した。
結果と考察
【膵がんの新規腫瘍マーカー】膵がん症例で血漿CXC chemokine ligand 7 (CXCL7)/Platelet Basic Protein(PBP)濃度が有意に低下することを見出した。ROC解析にてAUC=0.84と健常者との判別に有用であり、多施設共同研究により同一の採血、輸送、保存プロトコールで前向きに集めた血清・血漿ライブラリーの独立した検証コホート(膵臓がん症例140例、健常者87例)においても判別能は早期症例を含めてAUC=0.85であった。

【早期大腸がんにおける血清ダーモカインの検討】血清DK陽性率は手術大腸がん症例(Tis:28.6%,T1:36.8%)に対して内視鏡切除症例(Tis:10%,T1:33.3%)と内視鏡切除症例(Tis)では決して高くなかった。しかし、腺腫症例での偽陽性は10%でありCEA,p53自己抗体に比較しても低い傾向にあった。
結論
CXCL7はCA19-9と組み合わせることでCA19-9単独の判別能を有意に改善し、CA19-9の診断性能を補完する新たな腫瘍マーカーであると考えられた。既存腫瘍マーカーであるCEA/CA19-9/p53自己抗体との重複陽性例は非常に少なく既存マーカーにDKを加えることで診断感度は改善した。DKは早期大腸がん症例に対する診断マーカーとしては有用であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-16
更新日
-