日中両国を含む東アジア諸国におけるがん対策の質向上と標準化を目指した調査研究

文献情報

文献番号
200924039A
報告書区分
総括
研究課題名
日中両国を含む東アジア諸国におけるがん対策の質向上と標準化を目指した調査研究
課題番号
H20-3次がん・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 英夫(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 味木 和喜子(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 井上 真奈美(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
  • 田中 政宏(大阪府立成人病センター がん予防情報センター 企画調査課)
  • 松尾 恵太郎(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
  • 椙村 春彦(浜松医科大学)
  • 三宅 淳(東京大学大学院工学研究科 バイオエンジニアリング専攻)
  • 増井 徹(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 河原 ノリエ(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東アジア諸国では、平均余命の延長等によりがん罹患数が増大している。本研究班の主な目的は、(1)各国が科学的ながん対策を立案・評価できるよう、東アジアに多いがんの部位の5年相対生存率を算出し、相互比較すること、(2)遺伝的特性が比較的類似すると考えられるアジア人におけるがんの一次予防に資する知験を検証的に得ること、そのために今年度は、肥満度(BMI)と総死亡、がん死亡との関係について、コホート研究を対象としたメタ解析を行うことである。
研究方法
(1)精度の高い地域がん登録から研究事務局(日本)が作成したreporting formに従って提出された生存率データの信頼性をチェックし、これにより、日本(宮城、山形、新潟、福井、大阪、長崎の6施設)、韓国(全土)、台湾(全土)、フィリピン(ManilaとRizal)の10地域が参加した。1997~99年診断の胃、大腸、肝、肺、乳房(女)、子宮頸がんの5年相対生存率を算出した。
(2)肥満度と死亡との関連について結果を公表しているコホート集団を文献検索により確認し、条件に合致した参加各集団から、肥満度他、因果に影響を与えると考えられる喫煙歴、等の項目を収集し、コホートのリクルートの結果、日本、中国、台湾、韓国、インド、シンガポール、バングラデシュの合計18コホート集団(合計101.2万人、11.2万人の死亡)が対象となった。
結果と考察
(1)日本の生存率は他の地域に比べて概ね高かったが、日本の子宮頚がんの生存率は地域差が大きく、しかも韓国、台湾に比べて低かった。
(2) 総死亡リスクは、高低BMIどちらにおいてもリスクが上昇するU-shapeの関連が見られた。死亡に至る疾病のためにやせる、というような因果の逆転の影響をできるだけ少なくするために、3年以内の早期死亡を除外して解析したところ、BMIが35以上で1.6倍、BMIが15未満で2.6倍と高くなった。特に中国人及び韓国人と日本人において高BMIでも明らかなリスクの上昇が見られた。総死亡のリスクパターンはがん死亡、循環器疾患死亡、その他の死亡、ともに類似していた。
結論
(1)東アジア諸国による上記6部位の地域ベースの5年相対生存率は、各国で相当の差があった。これらの結果は、その差異の原因の調査を今後進めて行くことで、低位にある国の生存率を改善する糸口を見出す可能性があることを示している。
(2)東アジア人のコホートデータを使って統合解析し、BMIと死亡リスクとの関係、特にリスクが上がる閾値について、初めて明確に設定することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-