輸出に向けて加工食品に用いられる食品添加物の安全性評価の加速のための研究

文献情報

文献番号
202224032A
報告書区分
総括
研究課題名
輸出に向けて加工食品に用いられる食品添加物の安全性評価の加速のための研究
課題番号
20KA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
窪崎 敦隆(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,925,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第200回臨時国会において、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)が成立し、令和2年4月1日に施行された。本法律は、日本で生産された農林水産物や加工食品の輸出の促進を図るため、輸出に取り組む事業者の支援等を行うことにより、農林水産業・食品産業の持続的な発展に寄与することを目指している。3年目の令和4年度は、今後、加工食品の輸出の拡大が期待されるアセアン諸国などがコーデックス委員会において作成されるグローバル規格を準用していることから、Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives(JECFA)の安全性審査、特に天然由来成分の品質や評価に関する事例等の解析を行い、本研究期間内に目標を達成する計画とした。
研究方法
本年度は、コーデックス委員会において作成されるグローバル規格に着目したことから、「JECFAにおける食品添加物の安全性評価に関する情報収集と解析」、「日本からのJECFAリスク評価申請に関する実態調査」、「毒性病理試験における国際調和の動向」、「EHC240食品中の化学物質に関する評価」、「GSFA準拠の国の食品添加物使用許可申請におけるコンサルタントの役割」の調査研究を行った。
結果と考察
JECFAが公表している資料のうち、JECFAでの評価過程で指摘が多く、天然由来成分の食品添加物の評価として参考になると考えられた9種類の食品添加物を選択した。具体的には、「Carob bean gum」「Curcumin」「Gellan gum」「Jagua blue」「Lutein and Lutein esters」「Mineral oil」「Rosemary extract」「Steviol glycosides」「Quillaia extract」であったが、JECFAの指摘や追加情報提出要望が伝えられたCCFAでどのような議論が行われたかが明らかとなった。次に、我が国から「JECFAによる評価のための食品添加物の優先リストの追加及び変更の提案」を提出する際に、日本食品添加物協会が申請者との仲介を務めていることから日本食品添加物協会の担当者に、申請の手順や留意点等に加えて、これまでの対応等について聴取を進めた。その結果、2013年3月開催のCCFA45以降の直近10年間に日本がデータ提供者となっている品目と支援状況について情報を入手することが出来た。毒性試験について、米国、欧州及び国際機関において、他の国や地域における食経験の有無にかかわらず食品添加物の安全性評価に必要なデータに違いは少ないが、同じ所見に対する評価や用いる専門単語が日本と諸外国で異なることがあるため、この問題の解決に資する国際動向の整理を行った。EHC240については、食品中の化学物質のリスク評価の原則と手法として重要である第4章の「ハザードの特定と特徴づけ:毒物学的および毒性学的特性とヒト試験」の項目の整理を行った。今後、我が国の加工食品の輸出が拡大することが期待できる国の中にコーデックス委員会において作成される国際的な食品添加物の一般規格GSFAを準用している国・地域が多いことから、それらの国々における食品添加物使用許可申請におけるコンサルタントの役割について情報を集めた。具体的には、シンガポールなど10か国から構成されるアセアン諸国とUAE及びサウジアラビアを含む湾岸協力理事会加盟国を対象に行った。
結論
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律が施行されたことを受けて、厚生労働省では農林水産省と共同で食品輸出拡大のため、相手国・地域の規制等への対応強化を進めている。食品添加物に関しては、輸出先国の許可申請等に関する技術支援を行うもので、具体的には、農林水産省が行っている「輸出環境整備推進委託事業」において、事業者・農林水産省・厚生労働省の三者協議会に厚生労働省食品基準審査課担当官と共に出席している。令和4年度に、三者協議会は計4回開催された。その際に本研究で得られた情報等を踏まえた申請支援や技術的指導を行っており、本研究の成果は、これらの施策に直接活用されている。また、研究成果は、日EU経済連携協定における衛生植物検疫措置(SPS)に関する専門委員会の対処方針案作成等の基礎資料としても活用できると考えられる。平成31年2月1日に発効した日EU経済連携協定では、SPS専門委員会において食品添加物が議題に挙がっている。令和4年12月7日から2日間開催された第4回会合において、食品添加物に関して、会合中に提起された問題を引き続き意見交換することで同意されており、欧州における指定手続きの仕組みを詳細に把握したうえで、科学的根拠に基づいた的確かつ合理的な対応が可能となることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224032B
報告書区分
総合
研究課題名
輸出に向けて加工食品に用いられる食品添加物の安全性評価の加速のための研究
課題番号
20KA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
窪崎 敦隆(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)が令和2年4月1日に施行された。本法律に関連して、「経済財政運営と改革の基本方針2020」等の中で、我が国の農林水産物・食品の輸出額を「2025年までに2兆円、2030年までに5兆円」へ拡大させることとなっており、令和2年12月15日の「農林水産業・地域の活力創造本部」において、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」が決定された。その中で、「菓子」等の食品添加物を含む加工食品が海外で評価され輸出拡大の余地が大きい品目として挙げられている。現在、日本の加工食品は、諸外国で人気が高く輸出量の拡大が見込まれるが、日本と輸出先国で食品添加物の規制が異なることから、日本で使用が認められている食品添加物を含む加工食品が、輸出先国で食品添加物の使用が認められていないことを理由に輸出できないという問題が生じている。海外に輸出する加工食品に用いられる食品添加物の安全性については、輸出先国としても関心が高く、相手国・地域における食品添加物にかかる評価への対応が輸出促進の課題の一つとなっている。そこで、本研究では、食品添加物、特に天然由来の添加物の規格基準や安全性に関して、諸外国等がどのような点に着目して評価しているか等について情報を収集し整理することで、輸出拡大のための規制等への対応に関する問題の解決につながる道筋を示すことを目的にした。
研究方法
本研究期間内に、「諸外国等における食品添加物の規格基準等の情報収集」「毒性病理試験の国際調和」「食品添加物使用許可申請支援会社に関する調査」について調査研究を行った。
結果と考察
その結果、日本では、天然由来の成分で混合物からなる食品添加物の多くは、平成8年に告示された「既存添加物名簿」に収載されているが、これらの食品添加物は、その当時の手法に則った毒性試験結果や使用実績に基づいて使用が認められているが、諸外国にとっては新規の食品添加物となるため、使用許可申請の際には、本研究で収集したような最新の各国又は国際的な試験条件に基づいた追加の試験結果を準備する必要があることが分かった。本研究において、米国及び欧州の食品添加物の規格基準や安全性審査等の情報に加え、グローバル規格基準やJECFAにおける食品添加物の安全性評価に関する情報の収集及び整理を行った。また、毒性病理学分野では、日本と米国で同じ所見に対する評価や用いる専門単語に異なる点が存在することが問題として挙がってきている。この問題から申請時に求められているGLPやOECDテストガイドラインに準じた毒性試験であっても、日本国内で準備した試験結果を用いると、諸外国への申請時に円滑に話が進まない要因になっていた。専門単語の国際調和は、短期間で解決できる問題ではないが、現実的な対応としては、関連分野の研究者の協力や助言を得ながら申請を進める方法が考えられた。さらに、諸外国への使用許可申請の経験者からの意見で、食品添加物の申請に対応できる優秀なコンサルタントを探すことの難しさが指摘されていたことから、諸外国の食品添加物使用許可申請支援会社に関する調査を行い、有効な情報収集の方法を整理できた。例えば、米国FDAが公表している「GRAS Notices」の開示情報のうち「GRAS Notices Inventory」から入手できる資料には、実際の届出の際に提出された資料が含まれており、食品添加物使用許可申請支援会社に関してデスクトップ調査で得られる情報よりも実態に即した極めて有効な情報を効率よく収集できることを明確に示すことが出来た。
結論
本研究により、食品添加物、特に天然由来の成分で混合物からなる添加物を中心に、諸外国における品質や安全性審査の着目点が明らかとなり、今後の輸出拡大のための相手国・地域の規制等への対応に関する問題点の解決につながる道筋を示すことが出来た。本研究の成果を活用することにより、輸出先国のリスク管理上の懸念を生むことなく、我が国の加工食品の輸出の加速につながることが期待される。農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律が施行されたことを受けて、厚生労働省では農林水産省と共同で食品輸出拡大のため、相手国・地域の規制等への対応強化を進めている。食品添加物に関しては、輸出先国の許可申請等に関する技術支援を行うもので、本研究で得られた情報等を踏まえた申請支援や技術的指導を既に行っており、これらの施策に直接活用され成果も出てきている。また、今後、輸出先国の新規使用許可申請を希望する企業や団体が出てきた際に、本研究の成果を利活用することにより、技術水準の向上や迅速化に資すると考えられ、食品安全政策の適切な施行に貢献すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、食品添加物、特に天然由来の成分で混合物からなる添加物を中心に、諸外国における品質や安全性審査の着目点が明らかとなり、本調査で収集したような最新の各国又は国際的な試験条件に基づいた追加の試験結果を準備する必要があることなど、今後の輸出拡大のための相手国・地域の規制等への対応に関する問題点の解決につながる道筋を示すことが出来た。本研究の成果を活用することにより、輸出先国のリスク管理上の懸念を生むことなく、我が国の加工食品の輸出の加速につながることが期待できた。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床的成果を得ることを目指したものではない。
ガイドライン等の開発
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律が施行されたことを受けて、厚生労働省では農林水産省と共同で食品輸出拡大のため、相手国・地域の規制等への対応強化を進めている。食品添加物に関しては、輸出先国の許可申請等に関する技術支援を行うもので、具体的には、農林水産省が行っている「輸出環境整備推進委託事業」において、本研究で得られた情報等を踏まえた申請支援や技術的指導を行っており、本研究の成果は、これらの施策に直接活用された。
その他行政的観点からの成果
今後、輸出先国の新規使用許可申請を希望する企業や団体が出てきた際に、本研究の成果を利活用することにより、技術水準の向上や迅速化に資すると考えられ、食品安全政策の適切な施行に貢献すると考えられた。また、本研究で欧州での食品添加物の新規使用許可申請に関する研究を行ったが、その成果は、日EU経済連携協定における衛生植物検疫措置(SPS)に関する専門委員会の対処方針案作成等の基礎資料としても活用できると考えられた。
その他のインパクト
「輸出環境整備推進委託事業」において、本研究成果が活用され、クチナシ青色素の米国及び欧州への申請が行われた。「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」に関連して、「経済財政運営と改革の基本方針2020」等の中で、我が国の農林水産物・食品の輸出額を「2025年までに2兆円、2030年までに5兆円」へ拡大させることとなっている。「菓子」等の食品添加物を含む加工食品が輸出拡大の余地が大きい品目として挙げられており、クチナシ青色素の欧米での使用が認められた際は大きく話題になると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202224032Z