既存添加物の品質向上に資する研究

文献情報

文献番号
202224008A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質向上に資する研究
課題番号
20KA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西崎 雄三(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,571,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物357品目(枝番込み374品目,但し,香辛料抽出物を1品目(74基原)とする)の内,222品目(枝番品目込み)の成分規格が設定済であるが,残り151品目(枝番込み)と香辛料抽出物1品目(74基原)の成分規格が未設定である(令和2年12月現在).成分規格が未設定である理由として,1.流通確認が取れないもの,2.基原・製法・本質が曖昧なもの,3.有効成分が解明できていないもの,4.現時点の科学技術で妥当な規格試験法が設定できないもの,が挙げられる.すなわち,少なくとも1に該当するものを除き,2〜4の問題を解決することが必要である.また,我が国の消費者の天然志向から天然由来の添加物である既存添加物の需要が合成由来の添加物に比べて高い.既存添加物は様々な加工食品に使用されているが,成分規格が設定されていても古い,若しくは国際的に認められていないものも多く残されており,国外への輸出の障害となっている.従って,流通量が多いあるいは国外においても利用価値が高いと考えられる既存添加物についても海外動向及び最新技術に基づく成分規格のアップデートが必要である.
このような問題を解決することに焦点を絞り,本研究では,(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:流通実態及び基原・製法・本質の調査,海外規格及び自主規格等の調査を行う.(2) 既存添加物の有効成分の解明:最新の知見及び技術により詳細な成分解析を行い,成分規格の設定に必要な指標成分を明らかとする.(3) 試験法及び分析法の開発:従来法では試験法が設定困難なものについては,指標成分又は代替物質の合成による定量用標品の供給体制の確立または定量用標品を必要としない相対モル感度(RMS)を用いたSIへのトレーサビリティを確保した定量法,分子生物学的手法を応用した試験法,等を検討する.(1)〜(3)で得られる知見は,既存添加物の成分規格の設定又は改正を迅速化するための基礎情報として必須である.
研究方法
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
既存添加物の成分規格(公定書案,自主規格,自社規格等),流通・使用実態,国内外の安全性情報の調査を行い,公的な成分規格の作成を迅速に行うための基礎情報を収集した.
2) 既存添加物の有効成分の解明,試験法及び分析法の開発
入手できた既存添加物のサンプルを用い,成分分析,試験法及び分析法の開発を行った.
結果と考察
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
令和3年度に引き続き,令和4年度は,成分規格が未設定である既存添加物について,自主規格,自社規格,又は業界団体が提案する成分規格案,流通・使用実態を調査すると共に,国内外の安全性評価状況を調査した.酵素品目の成分規格について業界の考え方をまとめた.また,既存添加物の基原植物の学名及び和名について調査した.これらの調査結果について業界団体と情報共有することによって,既存添加物の成分規格設定を効率的に行う体制を整えた.
2) 既存添加物の有効成分の解明 
令和3年度までに,ヒマワリ種子抽出物,ショウガ抽出物,香辛料抽出物(コショウ,シナモン,オールスパイス),クチナシ色素,シタン色素,ウコン色素,キトサン,酵素処理ナリンジン,アナトー色素,オリゴガラクチュロン酸,ニガヨモギ抽出物,香辛料抽出物(ローズマリー)等について検討したが,令和4年度は,キハダ抽出物,チャ乾留物,モウソウチク乾留物,香辛料抽出物(フェンネル,バニラ)等を加えて,これらの成分組成について継続して検討した.
3) 試験法及び分析法の開発
令和3年度までに,qNMR,RMS,向流クロマトグラフィー(CCC),MALDI/TOF-MS等を用いた分析法等を検討したが,令和4年度は,qNMR及びRMSを利用した信頼性の高いSIトレーサブルな分析法の開発を引き続き検討すると共に,DPPHを用いた抗酸化性を指標とした定量法,真菌数試験の比較等,成分規格の試験法への具体的な応用を目的として検討した.
結論
本研究で得られた結果は,既存添加物の成分規格案作成のための重要な基礎資料となっている.各品目の基礎情報に基づき,国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部において,成分規格素案を別に作成し必要に応じて実試験を行い評価した後,第3者検証を実施し,その結果を添加物業界にフィードバックしている.更に,業界における追試等の後,成分規格案として第10版食品添加物公定書作成検討会に提案している.令和元年 (2019)から令和3年(2021)の間に新規52品目及び改正20品目を同検討会に提案しており,概ね順調に成分規格案が作成されている.令和5年(2023)より開始される第11版食品添加物公定書作成検討会に向けて作業部会を開催し新規成分規格案及び改正案を作成しているところであり,得られた情報は確実に利用されている.

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224008B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物の品質向上に資する研究
課題番号
20KA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西崎 雄三(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物357品目(枝番込み374品目,但し,香辛料抽出物を1品目(74基原)とする)の内,222品目(枝番品目込み)の成分規格が設定済であるが,残り151品目(枝番込み)と香辛料抽出物1品目(74基原)の成分規格が未設定である(令和2年12月現在).成分規格が未設定である理由として,1.流通確認が取れないもの,2.基原・製法・本質が曖昧なもの,3.有効成分が解明できていないもの,4.現時点の科学技術で妥当な規格試験法が設定できないもの,が挙げられる.すなわち,少なくとも1に該当するものを除き,2〜4の問題を解決することが必要である.また,我が国の消費者の天然志向から天然由来の添加物である既存添加物の需要が合成由来の添加物に比べて高い.既存添加物は様々な加工食品に使用されているが,成分規格が設定されていても古い,若しくは国際的に認められていないものも多く残されており,国外への輸出の障害となっている.従って,流通量が多いあるいは国外においても利用価値が高いと考えられる既存添加物についても海外動向及び最新技術に基づく成分規格のアップデートが必要である.
このような問題を解決することに焦点を絞り,本研究では,(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:流通実態及び基原・製法・本質の調査,海外規格及び自主規格等の調査を行う.(2) 既存添加物の有効成分の解明:最新の知見及び技術により詳細な成分解析を行い,成分規格の設定に必要な指標成分を明らかとする.(3) 試験法及び分析法の開発:従来法では試験法が設定困難なものについては,指標成分又は代替物質の合成による定量用標品の供給体制の確立または定量用標品を必要としない相対モル感度(RMS)を用いたSIへのトレーサビリティを確保した定量法,分子生物学的手法を応用した試験法,等を検討する.(1)〜(3)で得られる知見は,既存添加物の成分規格の設定又は改正を迅速化するための基礎情報として必須である.
研究方法
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
既存添加物の公的な成分規格設定を迅速に行うための基礎情報の収集を行った.主に第9版食品添加物公定書に未収載品について,検証用規格及び自主規格を含めた成分規格の整備状況,安全性試験実施状況,国内外規格の有無,流通実態等を調査した.基原・製法・本質に記載されている基原種について,削除,変更又は拡大の必要性の有無の調査した.酵素品目について,基原種の同定及び分類,成分規格の定義の学名の設定方法等について考え方をまとめた.
2) 既存添加物の有効成分の解明,試験法及び分析法の開発
流通が確認されサンプルが入手できた品目について有効成分の探索,必要に応じて分析法及び試験法の開発を行った.
結果と考察
既存添加物の内,「キトサン」,「オリゴガラクチュロン酸」,「キハダ抽出物」,「ショウガ抽出物」,「ヒマワリ種子抽出物」,「酵素処理ナリンジン」,「ニガヨモギ抽出物」,「木酢液」,「チャ乾留物」,「モウソウチク乾留物」,「ウコン色素」,「シタン色素」,「アナトー色素」,「香辛料抽出物(コショウ,オールスパイス,フェンネル,バニラ,ケイヒ,ローズマリー等)」,「アミラーゼ」,「ガラクトシダーゼ」,「セルラーゼ」,「ヘミセルラーゼ」,「プロテアーゼ」について検討した.
これらの品目について,有効成分や指標成分等の単離精製,構造決定,定性分析,定量分析等を行った.各品目に適した分析法を選択しそれを適用した.適した分析法がない場合は,分析法を開発しそれを適用した.本研究で用いた分析法及び試験法は, 各種NMR測定,qNMR,HPLC,分取HPLC,RMS(相対モル感度)を用いた定量法,LC/MS,GC/MS,TLC,HSCCC,DPPHアッセイ,MALDI-ToF MS,微生物限度試験等である.
結論
本研究で得られた結果は,既存添加物の成分規格案作成のための重要な基礎資料となっている.令和元年 (2019)から令和3年(2021)の間,第10版食品添加物公定書作成検討会において,新規52品目及び改正20品目の審議資料の一部となっている.本研究により基礎情報が収集でき,試験法が設定可能と判断された品目について,成分規格素案を別に作成し必要に応じて実試験を行い評価した後,第3者検証を実施し,その結果を添加物業界にフィードバックし,同意が得られた品目,試験法について同検討会に審議資料を提供している.このように,1.基礎情報の収集,2.成分規格案及び試験法案の作成,3.第3者検証,を循環して行い公的な成分規格及び試験法を効率的に作成している.また,qNMRについては,令和4年12月19日にISO24583:2022を成立,RMSについては令和4年度に国内標準化を開始する等,レギュラトリーサイエンスの発展に確実に貢献している.

公開日・更新日

公開日
2023-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
qNMRが国際標準(ISO 24583: 2022)として認められた.本手法は,化合物の絶対純度を簡便且つ精確に測定できるため,実用化及び標準化が望まれていた.食品添加物公定書の他,日本薬局方,米国薬局方,JIS K0138に既に採用されている.本手法の国際標準化は日経バイオテク等に掲載され大きな反響があった
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
qNMRは食品添加物公定書の一般試験法に採用されており,純度評価等に用いられているが,その手法を国際標準化した.
その他行政的観点からの成果
既存添加物の成分規格案の作成時の基礎資料として活用されている.作成された成分規格案は,食品添加物公定書作成検討会において審議資料とされている.
その他のインパクト
ISO24583:2022を成立(令和4年12月19日)
日本電子など、qNMR(定量NMR)法が国際規格(ISO)に医薬品や試薬、食品成分などの有機化合物の定量分析の信頼性向上に貢献(日経バイオテク: 令和4年12月12月21日)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
講演1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202224008Z