消化器がん個別化医療におけるファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの臨床応用と治療体制の確立

文献情報

文献番号
200924018A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器がん個別化医療におけるファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの臨床応用と治療体制の確立
課題番号
H19-3次がん・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 森正樹(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 関本貢嗣(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 土岐祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 永野浩昭(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 竹政伊知朗(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 松原謙一(株式会社DNAチップ研究所)
  • 西村紀(大阪大学蛋白質研究所)
  • 山崎泰代(Phenomenome Discoveries Inc)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は臨床試験と分子生物学的情報解析のスパイラル的発展を主軸とし、大規模消化器がん症例を対象に、がん組織の遺伝子・タンパク発現プロファイルによるがんの転移・再発の予測診断系とがん患者の末梢血のメタボローム解析による治療応答性の予測診断系をprospectiveに確立し、数年のうちに臨床応用化を実現することを目的とした。
研究方法
1)各消化器がん組織を用いたファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス
現在、前向きな臨床試験の準備をすすめている。また大腸癌24例、肝臓癌12例のMALDI-TOF/MS+NBS法により、それぞれ37種類、27種類の新規未報告癌関連蛋白を同定し、末梢血での発現をwestern blot法、ELISA法でスクリーニングしている。
2) 各消化器がん患者の末梢血を用いたメタボロミクス
超高感度・超高分解能のフーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析計により代謝物の精密質量数を観測し、多数の代謝物を同時一斉に分析するプラットフォームの構築を完了した。大腸癌の末梢血に特異的な6種のメタボライトによって、独立したブラインド検証試験で85%の正診率で大腸癌の存在診断が可能となった。現在、大腸癌では化学療法応答性、再発・転移に関与するメタボライトを、また膵癌、胃癌、肝臓癌でも特異的なメタボライトの同定を進めている。
結果と考察
それぞれのOMIC技術によって同定された分子は、他のassay法での発現verificationでも相同性の高いデータが得られていることから、それぞれがんの存在・病勢診断マーカー、さらには治療標的となることが期待される。今後は遺伝子とタンパクの相互関係を考慮し、パスウェイネットワーク解析することで、より中心的な役割を果たす分子の絞り込みと、candidateを適正に搭載した臨床型のDNAチップを用いた正確な予測診断系が期待される。また血清レベルでもメタボライトマーカーによる早期大腸がんリスクを評価する可能性が示され、OMICS技術の臨床応用が期待された。
結論
本研究では、がんの遺伝子・タンパクの両者から得られた基礎的研究の成果と、がん患者の末梢血のメタボローム解析によって得られた特異的メタボライト発現パターンの結果を、臨床研究デザインに合わせprospectiveに解析することで、トランスレーショナルリサーチとして十分なevidenceが得られることが期待され、臨床試験を経ていよいよ実践的な分子生物学の臨床応用化の基盤が整えれた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200924018B
報告書区分
総合
研究課題名
消化器がん個別化医療におけるファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの臨床応用と治療体制の確立
課題番号
H19-3次がん・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 正樹(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 関本貢嗣(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 土岐祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 永野浩昭(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 竹政伊知朗(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科学)
  • 松原謙一(株式会社DNAチップ研究所)
  • 西村紀(大阪大学蛋白質研究所)
  • 山崎泰代(Phenomenome Discoveries Inc)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は臨床試験と分子生物学的情報解析のスパイラル的発展を主軸とし、大規模消化器がん症例を対象に、がん組織の遺伝子・タンパク発現プロファイルによるがんの転移・再発の予測診断系とがん患者の末梢血のメタボローム解析による治療応答性の予測診断系をprospectiveに確立し、数年のうちに臨床応用化を実現することを目的とした。
研究方法
1)各消化器がん組織を用いたファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス
 現在、前向きな臨床試験の準備をすすめている。また大腸癌24例、肝臓癌12例のMALDI-TOF/MS+NBS法により、それぞれ37種類、27種類の新規未報告癌関連蛋白を同定し、末梢血での発現をwestern blot法、ELISA法でスクリーニングしている。
2) 各消化器がん患者の末梢血を用いたメタボロミクス
超高感度・超高分解能のフーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析計により代謝物の精密質量数を観測し、多数の代謝物を同時一斉に分析するプラットフォームの構築を完了した。大腸癌の末梢血に特異的な6種のメタボライトによって、独立したブラインド検証試験で85%の正診率で大腸癌の存在診断が可能となった。現在、大腸癌では化学療法応答性、再発・転移に関与するメタボライトを、また膵癌、胃癌、肝臓癌でも特異的なメタボライトの同定を進めている。
結果と考察
それぞれのOMIC技術によって同定された分子は、他のassay法での発現verificationでも相同性の高いデータが得られていることから、それぞれがんの存在・病勢診断マーカー、さらには治療標的となることが期待される。今後は遺伝子とタンパクの相互関係を考慮し、パスウェイネットワーク解析することで、より中心的な役割を果たす分子の絞り込みと、candidateを適正に搭載した臨床型のDNAチップを用いた正確な予測診断系が期待される。また血清レベルでもメタボライトマーカーによる早期大腸がんリスクを評価する可能性が示され、OMICS技術の臨床応用が期待された。
結論
本研究では、がんの遺伝子・タンパクの両者から得られた基礎的研究の成果と、がん患者の末梢血のメタボローム解析によって得られた特異的メタボライト発現パターンの結果を、臨床研究デザインに合わせprospectiveに解析することで、トランスレーショナルリサーチとして十分なevidenceが得られることが期待され、臨床試験を経ていよいよ実践的な分子生物学の臨床応用化の基盤が整えれた

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DNAチップ、NBS(2-nitrobenzenesulfenyl)法を用いてそれぞれ遺伝子、タンパク発現プロファイルを取得し、癌の転移・再発に関わる予測診断系を構築した。また癌患者の末梢血からフーリエ変換質量分析計を用いたメタボロミクス技術を用いてメタボライトバイオマーカを探索した。各癌腫における悪性度予測、治療応答性予測のパターン判別に加え、遺伝子、タンパク、代謝産物各レベルでのkey moleculeのcandidateを同定した。
臨床的観点からの成果
臨床病理学的情報および定期的な予後情報を含有する消化器癌症例集積コンソーシアムにより約4500例の消化器癌を登録・解析した。各癌腫において、生検材料による治療応答性予測、リンパ節転移診断予測、また根治切除材料による術後再発予測などについてそれぞれ約70ー80%の高い予測診断システムを構築した。大腸癌では予後不良群を同定可能(DFS: p=0.008)な臨床診断型チップの開発に成功するなど、個別化医療実践への基盤を築いた。
ガイドライン等の開発
本研究によるガイドラインの開発は行われていない。
その他行政的観点からの成果
本研究による行政施策は行われていない。
その他のインパクト
遺伝子プロファイル研究による大腸癌の異時性肝転移予測の可能性および臨床診断型DNAチップの開発、胃癌の腹膜播種予測、肝臓癌の再発予測について、数多くの国内外学会のシンポジウムやワークショップ(AACR, JCR, AAPC, 日本癌学会、日本外科学会など)で注目を集めた。またラジオや新聞で多数回にわたり取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
41件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
(申請中)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamasaki M., et al.
The gene expression profile represents the molecular nature of liver metastasis in colorectal cancer.
Int J Oncol. , 30 (1) , 129-138  (2007)
原著論文2
Kittaka N., et al.
Molecular mapping of human hepatocellular carcinoma provides deeper biological insight from genomic date
European Journal of Cancer , 44 , 885-897  (2008)
原著論文3
Komori T., et al.
Gene expression of colorectal cancer preoperative genetic diagnosis using endoscopic biopsies.
Int J Oncol. , 32 (2) , 365-375  (2008)
原著論文4
Takeno A, et.al
Integrative approach for differentially overexpressed genes in gastric cancer by combining large-scale gene expression profiling and network analysis
Br J Cancer , 21 (99) , 1307-1315  (2008)
原著論文5
Yoshioka S, et.al
Molecular predicition of early recurrence after resection of hepatocellular carcinoma
Br J Cancer , 145 (5) , 457-464  (2009)
原著論文6
Motoori M, et.al
The feasibility of using biopsy samples from esophageal cancer for comprehensive gene expression profiling
Int J Oncol , 35 (2) , 265-271  (2009)
原著論文7
Watanabe M., et al.
An Application of the 2-Nitrobenzenesulfenyl (NBS) Method to Proteomic Profiling of Human Colorectal Carcinoma:A Novel Approach for Biomarker Discovery
PROTEOMICS-Clinical Applications , 2 , 925-935  (2008)
原著論文8
Noda T., et al.
Activation of Wnt/beta-catenin signalling pathway induces chemoresistance to interferon-alpha/5-fluorouracil combination therapy for hepatocellular carcinoma.
Br J Cancer , 100 (10) , 1647-1658  (2009)
原著論文9
Makino T., et al.
Dickkopf-1 expression as a marker for predicting clinical outcome in esophageal squamous cell carcinoma
Ann Surg Oncol , 16 (7) , 2058-2064  (2009)
原著論文10
Uemura M., et al.
Prevention of severe pelvic abscess formation following extended radical surgery for locally recurrent rectal cance
Ann Surg Oncol , 16 , 2204-2210  (2009)
原著論文11
Asaoka T., et al.
Differential transcriptome patterns for acute cellular rejection in recipients with recurrent hepatitis C after liver transplantation
Liver Transpl , 15 (2) , 1738-1749  (2009)
原著論文12
竹政伊知朗,他
消化器癌における癌幹細胞研究の現状
日本外科学会雑誌 , 110 (4) , 207-212  (2009)
原著論文13
植村守,他
大腸癌に対する化学療法、分子標的治療
総合臨床 , 58 (9) , 1965-1971  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-