効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究

文献情報

文献番号
200924015A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 正和(大阪府立健康科学センター健康生活推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 大島 明(大阪府立成人病センターがん相談支援センター)
  • 片野田 耕太(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
  • 福田 敬(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 望月 友美子(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、肺がん等の喫煙関連疾患の1次予防の推進を目指して、喫煙者に対する禁煙治療・支援の推進と喫煙者の禁煙の動機を高める環境整備の両視点から、禁煙者を増加させるための方法論や普及方策を検討し、政策提言を行うことにある。
研究方法
禁煙治療・支援と禁煙の動機を高める環境整備の推進にむけて、効果的な方法論や方策の検討と開発、政策提言にあたっての各種エビデンスの構築を行った。
結果と考察
禁煙治療・支援の推進に関する研究として、健診の場における禁煙介入の制度化にむけて政策提言の骨子案を作成した。手軽に利用できる無料の禁煙電話相談(Quitline)の有効性や整備方策の検討を行った。医療の場での禁煙治療に関わる研究として、今年度に実施された「ニコチン依存症管理料」の結果検証調査に参画し、前回の調査と比べて、治療終了9ヵ月後の禁煙継続率に著差はなく、諸外国の成績と比較しても一定の成果をあげていることを確認した。禁煙治療の医療経済評価として、禁煙治療の経済性を他のがん予防対策と比較し、禁煙治療の経済性が優れていることを明らかにした。喫煙者の禁煙行動のモニタリング調査の結果から、年間禁煙試行率は増加傾向にあるが、禁煙治療の利用割合は保険適用3年目でも4%と低く、英国での割合(28%)に比べて1/7と低率であった。喫煙者に禁煙を動機づける環境整備にむけての研究として、12学会からなる禁煙推進学術ネットワークと協働し、たばこ増税の検討に役立つエビデンスを整理して、財務省ならびに厚生労働省に対して意見書を提出した。さらに、たばこ税・価格の値上げ、公共の場所での喫煙禁止、および禁煙治療の普及の組合せによる死亡減少効果について推計した。公的場所や職場における受動喫煙防止のための法的規制の強化にむけた政策提言のための研究として、建物内禁煙を原則とした法的規制の効果について、3つのリサーチクエスチョン(RQ)を設定し、系統的な文献検索を行い、法的規制の効果を確認した。
結論
今後、喫煙者の禁煙推進を一層図るには、禁煙治療へのアクセスの向上、健診の場での禁煙勧奨・支援の制度化、無料の禁煙電話相談の整備などが課題である。禁煙を動機づける環境整備としては、引き続き、たばこ価格・税のさらなる大幅引き上げと受動喫煙防止の法的規制の強化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200924015B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 正和(大阪府立健康科学センター健康生活推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 大島 明(大阪府立成人病センターがん相談支援センター)
  • 片野田 耕太(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部)
  • 福田 敬(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 望月 友美子(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、肺がん等の喫煙関連疾患の1次予防の推進を目指して、喫煙者に対する禁煙治療・支援の推進と喫煙者の禁煙の動機を高める環境整備の両視点から、禁煙者を増加させるための方法論や普及方策を検討し、政策提言を行うことにある。
研究方法
禁煙治療・支援と禁煙の動機を高める環境整備の推進にむけて、効果的な方法論や方策の検討と開発、政策提言にあたっての各種エビデンスの構築を行った。
結果と考察
禁煙治療・支援の推進に関する研究として、健診の場における禁煙介入の制度化にむけて方法論や教材の開発、禁煙の効果に関するエビデンスの構築を行った。これらの成果を踏まえ、健診の場における禁煙勧奨・支援の制度化にむけて政策提言の骨子案を作成した。医療の場での禁煙治療に関わる研究として、これまでに2回実施された「ニコチン依存症管理料」の結果検証調査に参画し、イギリスの成績と比較しても一定の安定した成果をあげていること、他のがん予防対策と比較し、禁煙治療の経済性が優れていることを明らかにした。喫煙者に禁煙を動機づける環境整備の研究として、厚生労働科学研究の高橋班や日本学術会議と協働して、たばこ増税の検討に役立つエビデンスの構築や政策提言を行った。喫煙起因死亡を効果的に減少させるには、大幅なたばこの値上げと動機の高まった喫煙者への禁煙治療を組合せることの重要性が示された。今後のたばこ増税の検討に役立つ新たなエビデンスの構築として、たばこ税・価格の値上げ、公共の場所での喫煙禁止、および禁煙治療の普及の組合せによる死亡減少効果について推計した。公的場所や職場における受動喫煙防止のための法的規制の強化にむけた政策提言のための研究として、3つのリサーチクエスチョン(RQ)を設定し、系統的な文献検索を行った。その結果、「建物内を100%完全禁煙」とする立法上の措置は受動喫煙を防止する上で有効であること、喫煙率やたばこ消費量の減少に効果があり、最終的には喫煙関連疾患を直後から減少させる効果があることが認められた。
結論
今後、喫煙者の禁煙推進を一層図るには、禁煙治療へのアクセスの向上、健診の場での禁煙勧奨・支援の制度化、無料の禁煙電話相談の整備などが課題である。禁煙を動機づける環境整備としては、引き続き、たばこ価格・税のさらなる大幅引き上げと受動喫煙防止の法的規制の強化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健診の場での短時間の禁煙介入の方法論の開発や有効性評価等の成果をもとに、その制度化の政策提言の骨子案を作成した。禁煙を効果的に推進する保健医療システムの構築のためには、健診の場での禁煙介入と保険による禁煙治療を制度として組合せて実施することが必要であり、本提言はその検討にあたっての貴重な基礎資料となる。中医協の結果検証のデータを用いて禁煙治療の医療経済評価を行い、極めて経済効率性が優れていることを明らかにした。本研究で用いた確率感度分析は新しい手法であり、この分野の研究の推進につながる。
臨床的観点からの成果
平成18-19年と21年に中医協が計2回実施した「ニコチン依存症管理料」の結果検証に研究班として調査設計・評価に中心的に関与し、一定の成果をあげていることを明らかにした。第2回調査では多変量解析を用いて継続的な禁煙成功要因を明らかにした。このことにより、禁煙治療に対する保険適用が継続され、登録医療機関も増加し、治療を受けやすい環境整備につながった。本結果検証での評価方法が他の医療サービスの評価において有用なモデルとなっただけでなく、国際的にも禁煙治療の長期的効果を明らかにした点で意義深い。
ガイドライン等の開発
13のクリニカルクエスチョンで構成される禁煙治療の診療ガイドラインの骨子を作成した。今後、本ガイドラインを広く普及することは、禁煙治療の質の確保ならびに向上を図る上で有用である。公的場所や職場における受動喫煙防止の法規制の効果に関して系統的文献レビューを行い、建物内全面禁煙とする立法措置の有効性を明らかにした。今後、本成果をガイドラインとして取りまとめ、国や自治体における立法化・条例化の検討資料として活用されるよう、その普及を図る。
その他行政的観点からの成果
日本学術会議によるたばこ規制推進の要望書「脱タバコ社会の実現に向けて」作成に研究班として参画し、その作成に寄与した。高橋班(厚労科研)および日本学術会議と共同して、たばこ増税の検討に役立つエビデンスを作成し、厚生労働省に随時提供した。12学会が合同で財務省と厚生労働省に提出した税制改正要望の意見書作成に関与した。平成22年度税制改正大綱にたばこ増税が盛り込まれ、同年10月からたばこ価格が1本5円程度の引き上げがなされることにつながったが、本研究班の成果や活動が一定の貢献をしたものと考える。
その他のインパクト
一般国民および専門家への普及・啓発活動として、日本学術会議主催のシンポジウム「脱タバコ社会の実現のために」の企画・開催への全面的な協力、 たばこ増税に関するメディアセミナーの開催とNHKへの取材協力・出演、サイモン・チャップマン著の「タバコを歴史の遺物に」の翻訳とセミナーの開催、健診の場での禁煙介入のための指導者マニュアル「脱メタバコ支援マニュアル」や医師会会員向けの患者配布用リーフレットの作成とホームページ等での普及、一般向け小冊子「もう、「たばこ」はいいでしょう」の作成協力などを行った。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
62件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
61件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
10件
その他成果(普及・啓発活動)
17件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oshima A, Ito Y, Nomura H
Sensitivity analysis of the efficacy of varenicline in smoking cessation with a special reference to study dropouts.
J Smoking Cessation , 4 (2) , 86-89  (2009)
原著論文2
Hagimoto A, Nakamura M, Morita T, et al.
Smoking cessation patterns and predictors of quitting smoking among the Japanese general population: a 1-year follow-up study.
Addiction , 105 (1) , 164-173  (2010)
原著論文3
Katanoda K, Saika K, Yamamoto S, et al.
Projected Cancer Mortality Among Japanese Males under Different Smoking Prevalence Scenarios: Evidence for Tobacco Control Goal Setting.
Jpn J Clin Oncol , 41 (4) , 483-489  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-