院内の医療安全管理体制を定量的に評価する指標の確立と実装を行う研究

文献情報

文献番号
202222064A
報告書区分
総括
研究課題名
院内の医療安全管理体制を定量的に評価する指標の確立と実装を行う研究
課題番号
22IA2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
  • 兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
  • 遠山 信幸(自治医科大学 医学部)
  • 浦松 雅史(東京医科大学 医療の質・安全管理学分野)
  • 大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 整形外科学)
  • 深見 達弥(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
  • 平松 真理子(三宅 真理子)(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 梅村 朋(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 植村 政和(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,391,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、これまでの医療安全教育およびリスク評価技術の研究成果を基に、医療安全評価指標を確立し、複数の医療機関で試験的に導入を行うとともに、本格的な社会実装に向けた検証を行う(図 1)。
また同時に当指標を医療安全専門の医師の配置前後で測定し、医療安全専門の医師が医療機関へ寄与する効果についても検証を行う(図 2)。
令和2年の公益通報者保護法の改正により、令和4年6月より、医療機関を含む事業者には公益通報を受け付ける窓口(以下、公益通報窓口)の設置等が義務(従業員300人以下の事業者は努力義務)づけられているが、現状、どの程度公益通報窓口が設置されているか調査を行う。
研究方法
(1)医療安全に専門性を有する医師養成プログラムおよび中長期支援の継続実施
平成30年度より実施している最高質安全責任者(CQSO)養成プログラムを継続し、医療安全に専門性を有する医師を養成、中長期の支援を継続実施する。また(2)以降で確立される安全指標の測定対象を当プログラム修了生またはASUISHI養成プログラム修了生の施設とすることで、医療安全専門医師が医療機関へ寄与する効果についての検証を可能とする。
(2)リスク評価指標の確立
名古屋大学医学部附属病院(以下、名大病院)の医療安全管理者(以下、GRM)は、院内で報告される全てのインシデント・アクシデントレポート(以下、レポート)を精読し、インシデントによって患者にどの程度の疾患が発生したか、医療行為に過失があったか、GRMとして気になると思うか等、さまざまな判断を行っている。
これまでのリスク評価指標の研究において、上記GRMの判断結果を教師データとして、重症スコア、過失スコア、リスクスコア(=3.245×重症スコア+4.106×過失スコア)を開発した(各スコアにはTerm単位、レポート単位、組織単位のものがある)。またその後、GRM3人以上が気になると判断したレポートを「インパクトレポート」と定義し、これを教師データとして機械学習することでインパクトスコアを開発した。これまでの研究結果から、リスクスコアとインパクトスコアには強い相関があることがわかっており、今回、リスクスコア算出式の重症スコアと過失スコアの係数の精度を向上するべく、インパクトスコアと最も強い相関を持つ新たな係数を求める。
(3)複数施設のリスク評価
複数施設で(2)で確立したリスク指標を実際に測定する。CQSO養成プログラム修了者またはASUISHI養成プログラム修了者の施設を測定対象として、プログラム受講前後で施設のリスク指標が変化したかをみる。
(4)社会実装に向けた課題の抽出
多くの施設で当リスク評価を行うにあたっていくつか課題が予想される。(3)で複数施設のリスク評価を実施した施設にアンケートを行い、実施にあたっての難点・要望・課題を収集し、社会実装に向けた課題を抽出する。
(5)対策立案
(4)で抽出された課題について対策を立案する。もしその時点で十分な対策を講じることが不可能である場合には適用範囲や前提条件を明示する。
(6)公益通報窓口設置に関する現状調査と対策の検討
調査はインターネット上のアンケート形式・無記名で行う。回答に必要なID・パスワードは一施設に一つ配布し、重複の回答を防ぐ。調査結果を基に、設置に向けての対策を検討する。
結果と考察
・最高質安全責任者(CQSO)第3期生9名を輩出するとともに、第4期生の養成を開始し、令和5年6月に8名が修了した。
・CQSO修了生に対して、修了後半年ごとにフォローアップ研修会を実施、またASUISHI・CQSO修了生に対して、年2回の研究会を実施し、修了生への中長期的支援を実施した。
・リスクスコアの新しい算出式(=0.287×過失スコア+0.392×重症スコア)を求め、従来より精度を向上させた。
・リスク量測定技術を社会に実装すべく、リスク量測定プログラムの改良、さらに、リスク量測定機能を搭載したインシデントレポートシステムを開発した。
・次年度は、これらのリスク量測定技術の具体的な応用・活用方法についてさらに検討を加え、社会実装に向け、準備を進める予定である。
・公益通報窓口の設置状況を調査すべく、全国の1000施設(300床以上)にアンケート調査を行った。その結果、32%の施設が公益通報窓口を設置しており、84%の施設が職員からの何らかの通報方法があるとの回答を得た。
結論
医療安全に専門性を有する医師養成、リスク量測定技術の精度向上および社会実装において、2か年研究の1年目として、順調な成果を得た。また、全国医療機関における公益通報窓口の設置状況について現状を把握した。
次年度は、これらのリスク量測定技術の具体的な応用・活用方法についてさらに検討を加え、社会実装に向け、準備を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222064Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,110,000円
(2)補助金確定額
6,110,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 222,791円
人件費・謝金 1,616,580円
旅費 41,360円
その他 3,510,269円
間接経費 719,000円
合計 6,110,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-17
更新日
-