女性生殖器における妊孕能の客観的な評価法の確立

文献情報

文献番号
200923023A
報告書区分
総括
研究課題名
女性生殖器における妊孕能の客観的な評価法の確立
課題番号
H20-子ども・若手-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉野 修(東京大学 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 大須賀 穣(東京大学 医学部 産婦人科)
  • 堀 正明(順天堂大学 放射線科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 阿部 宏之(山形大学 工学部 )
  • 浅田 弘法(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 小辻 文和(福井大学 医学部 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不妊治療のニーズが高まる中、生殖機能の客観的な評価法が確立しているとは言い難く、このことが不妊治療の方針が定まらない原因と思われる。子宮、卵巣、胚の質に関して客観的なスクリーニング法を確立し、その概念に立脚した効率のよい治療法の提示を目的とする。
研究方法
1).卵巣機能評価、2).得られた卵子および胚の評価、3).子宮内膜の着床能の評価にわけ、各々の分野で精力的に基礎研究を行ってきた研究者と共同研究を開始した。1)の卵巣機能評価はおもに基礎的研究を行い、2)の卵子および胚の評価はマウス、ウシ、ヒト胚を用い、実験に供した。3)の子宮内膜の着床能の評価はマウスおよびヒト検体を用い基礎的検討を行い、臨床的検討では新たなMRI撮像法として動画MRIによる子宮内膜の機能評価および癒着評価を行った。
結果と考察
1)卵巣機能評価 卵胞に発現するサイトカインBMP-6,BMP-7,GDF-9,BMP-15に関して主にin vitro実験を行い四種類全てのサイトカインが卵胞発育に重要な役割を果たすFSH受容体およびインヒビン・アクチビンを卵胞に誘導することを認め、BMP-6,-7が卵巣予備能力の指標として注目されているanti-Mullerian hormone(AMH)を誘導することを見出した。現在、血中AMH値、BMP値と卵巣機能との関係について臨床研究中である。
2)胚・卵子の選別法 マウスおよびヒト胚の質と呼吸活性との関係を明らかにするために、マウスおよびヒト胚の呼吸量を、走査型電気化学顕微鏡をベースに開発した「胚・卵子呼吸測定装置」を用いて調べた。マウス胚は発生の進行に伴い呼吸量が増加し、特に桑実胚以降はミトコンドリアの発達と一致して呼吸活性が顕著に増加することが明らかになった。一方、ヒト胚はマウス胚同様、桑実胚から胚盤胞期にかけて呼吸活性が増加することを明らかにした。
3)子宮内膜の評価法 (その1)ヒト子宮内容洗浄液中のMMP発現の測定を開始しており、妊娠との
関連データを集積中である。また、BMP-7が子宮内膜の制御に関与することも明らかにした。
(その2)不妊患者に対しCine MRIを用いた子宮内膜および癒着評価の動画データを集積中である。現在、子宮内膜の異常運動と妊娠率についての知見を得つつあり、また癒着の評価法として動画MRIが有用であることが分かった。
結論
3箇年計画の第二年度を終えるにあたり、今年度は不妊症検査に関する基礎的知見を加えることができた。また同時に来年度以降のデータを蓄積することができる研究環境も整えることができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-23
更新日
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