要保護児童における被虐待による問題や障害等の類型化された状態像とケアの必要量の相互関連に関する研究

文献情報

文献番号
200923017A
報告書区分
総括
研究課題名
要保護児童における被虐待による問題や障害等の類型化された状態像とケアの必要量の相互関連に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院 福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 庄司 順一(日本子ども家庭総合研究所 子ども家庭福祉研究部)
  • 山縣 文治(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 東野 定律(静岡県立大学 経営情報学部)
  • 山内 康弘(帝塚山大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国における社会的養護を必要としている要保護児童の状態と現在、施設で提供されているケア量に関する分析を行い、その提供の実態を明らかにした上で児童の状態に応じた適正な処遇を図るための資料を提供することである。この研究が必要性とされる理由は、児童福祉施策において社会的養護を必要とする児童が増加し、その体制の拡充に向けた取り組みが強く求められているからである。
研究方法
今年度は、調査説明会を開催したうえで、児童養護施設21か所、乳児院4か所、情緒障害児短期治療施設3か所、児童自立支援施設2か所、母子生活支援施設4か所の計34施設を対象に1分間タイムスタディ調査の実施し、その結果について分析を行った。
 同時に、ケアを提供した要保護児童および母親のアセスメント調査に加えて、提供されていたケア時間と職員の主観的負担感のデータを収集した。
さらに、社会的養護施設種別のグループインタビュー調査の実施し、グランデッドセオリー(GT)による質的な分析を行った。
結果と考察
今年度の分析結果より、以下の四つが明らかになった。
①1分間タイムスタディ調査の結果から、児童の状態に応じたケア提供の優先度は、明確でなく、十分なケアが提供されていない状況が明らかになった。こうした状況は、今後の社会的養護におけるケアの標準化を検討する上で大きな課題である。
②母子生活支援施設における現状の施設機能において母親に対する情緒的サポートや社会適応への対応を支援する体制が不十分であることが明らかになり、今後は、母親へのケアについてのシステム整備と人材配置が求められる。
③社会的養護施設(児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設)別にDEA分析を実施した結果の効率性スコア(平均値)を導くことができ、各施設種別、施設別に技術効率性には相当のばらつきがあることがわかった。
④ケア量の多寡に関する職員の意思決定は、児童の問題的特性よりも、ケアを提供する児童グループによる日々の変動が大きく、ケアの優先度よりも、臨床的なケア量の配分が影響を及ぼしていた。
結論
調査データの分析によって、ケア時間を増加させる要保護児童の要因は明らかにされたが、現状では、児童の障害特性別には、ケアの優先度は明確にされてはおらず、ケア量は標準化されておらず、臨床場面に即してケア量が変動していた。さらに、職員の臨床経験によって大きく変化することが日常的となっており、今後、社会的養護におけるケアの標準化を検討していく上では、大きな障害となる状況となっていることが示された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
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