「周産期母子医療センターネットワーク」による医療の質の評価と、フォローアップ・介入による改善・向上に関する研究

文献情報

文献番号
200923005A
報告書区分
総括
研究課題名
「周産期母子医療センターネットワーク」による医療の質の評価と、フォローアップ・介入による改善・向上に関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 正哲(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 上谷 良行(兵庫県立子ども病院)
  • 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部)
  • 河野 由美(自治医科大学)
  • 横尾 京子(広島大学)
  • 和田 和子(大阪大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. わが国の中核的周産期医療施設における最新医療の標準化を行う。
2. 母子保健の課題である罹病率・死亡率・発達障害発症率・成長発達予後等をアウトカム指標とする。
3. 多施設臨床試験のインフラと技術の蓄積を進め、新生児学におけるエビデンス確立研究を推進し、国際的標準化に資する。
研究方法
周産期母子医療センターネットワーク共通データベースに出生体重1500g以下の入院児を全て登録する.罹病率・死亡率・発達障害発症率・成長発達予後等をアウトカム指標として、ベンチマーク手法を用いた施設間比較・要因分析を行なう。各研究参加施設はアウトカム指標を最善の施設・対象に近似させるための改善を行なう。
結果と考察
2003年からの登録数は19,115例となった。全体の死亡率は9%で2003年のデータベースの開始時に比べ経年的に減少し、多くの合併症の頻度も減少が見られる。一方、一部の合併症では、頻度に低下が認められないことから、さらなる背景因子の検討が必要であった。また、本データベースと米国の国際的データベースとアウトカムを比較したところ、死亡率のみならず合併症の頻度も日本の方が明らかに低かった。
総合周産期母子医療センターネットワークにおけるフォローアップ体制の構築を進めた。極低出生体重児の発育発達評価に必要な統一プロトコールに基づく診査を実施した施設は2004年には40%に満たなかったが、2009年には66%に向上した。
結論
1)本研究で構築した周産期母子医療センターネットワークの極低出生体重児入院症例データベースが着実に運営されている。
2)周産期医療のアウトカム指標として必要な生命予後、罹病、交絡因子、発育発達予後に関する症例データベースが構築されつつある。
3)このデータべースにすでに登録された種々の因子の解析を行っており、さらに児の予後を改善することが可能である。
4)我が国の優れた周産期医療レベルを維持するためには、このような大規模データベースによる評価が必要である。大規模データベースを用いて、アウトカムに作用する要因を解析し、また介入による改善の効果を判定することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200923005B
報告書区分
総合
研究課題名
「周産期母子医療センターネットワーク」による医療の質の評価と、フォローアップ・介入による改善・向上に関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 正哲(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学母子総合医療センター)
  • 河野 由美(自治医科大学)
  • 上谷 良行(兵庫県立子ども病院)
  • 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部)
  • 横尾 京子(広島大学)
  • 和田 和子(大阪大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中核的周産期医療施設における新生児集中治療の標準化を行う。罹病率・死亡率・発達障害発症率・成長発達予後等をアウトカム指標として、ベンチマーク手法を用いた施設間比較・要因分析を行う。各研究参加施設は、自施設の指標・要因の解析結果の提供を受けて、アウトカム指標を最善の施設・対象に近似させるための改善を行なう。
新生児心肺蘇生法ガイドラインを開発し、全国の周産期医療関係者に習得させるための研修体制と登録システムの構築とその効果に関する検討を進め、蘇生プログラムを実施する。
在胎期間別胎児発育値を作成する。
研究方法
2003年から、総合周産期母子医療センターネットワーク共通データベースに出生体重1500g以下の入院児を全て登録した。アウトカム指標として、登録児の生命予後、3歳発育・発達予後をフォローアップする。
結果と考察
1. 2003年からの総数は19,115例となった。全体の死亡率は9%で2003年のデータベースの開始時に比べ経年的に減少し、多くの合併症の頻度も減少が見られる。臨床要因とアウトカムについて、施設間比較・要因分析を行った。ベンチマーク・データとして施設に提供し、アウトカムの改善のための手がかりを提供した。
2. 新生児心肺蘇生法ガイドラインの開発、研修体制と登録システムの構築とその効果に関する研究を進め、蘇生プログラムの実施について関係学会と協力して推進してきた。
3.胎児発育の現状調査を実施した。在胎期間別胎児発育値を作成し、それに影響する要因を明らかにした。
4. 総合周産期母子医療センターの実態、NICU必要病床数、新生児集中治療に従事する医師の現状、NICUにおける医師と看護師の協働等、新生児集中治療提供体制の改善に必要な事項を調査研究した。その結果NICU必要病床を現状の1.5倍(2000床→3000床)、NICU医師の不足数(1130人→1540人)等、当面の到達すべき目標を明らかにしてきた。
結論
我が国の優れた周産期医療レベルを維持するためには、本研究が構築してきたような大規模データベースによる評価が必要である。大規模データベースを用いて、アウトカムに作用する要因を解析し、また介入による改善の効果を判定することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200923005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2003年から、総合周産期母子医療センターネットワーク共通データベースに出生体重1500g以下の入院児を全て登録した。調査対象は総合周産期母子医療センターの指定を受けた施設およびそれに準ずる施設で、2008年出生児としては76施設から3,678例が登録した。また2003年からの総数は19,115例となった。多施設ランダム化比較臨床試験を6課題について実施した
臨床的観点からの成果
全体の死亡率は9%で2003年のデータベースの開始時に比べ経年的に減少している。また、多くの合併症の頻度も減少が見られる。一方、一部の合併症では、頻度に低下が認められないことから、さらなる背景因子の検討が必要であった。また、本データベースと米国の国際的データベースとアウトカムを比較してところ、死亡率のみならず合併症の頻度も日本の方が明らかに低かった。
ガイドライン等の開発
日本人在胎期間別出生時体格基準値の作成
新生児蘇生法ガイドラインの講習会教材を作成し、機材の安全性の検証を行った
2008年12月8日の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」における新生児科からのNICU整備に関する提言資料となった。
その他行政的観点からの成果
2005年出生超低出生体重児の3歳時予後の全国調査
NICU必要病床数について全国調査を実施、出生1000人に2床の旧基準を3床に改めるべきであるとの提言を行った
新生児医療における医師と看護者の協働に関する研究を進めた試験を6課題について実施した
2008年1月26日付医政局長通知「周産期医療の確保について」及び「周産期医療体制整備指針」策定に反映された
その他のインパクト
① ハイリスク児のフォローアップマニュアル(メジカルビュー社、2007年)発行
② フォローアップ外来保護者用リーフレット5種の発行
③ 平成21年11月29日(日)に横浜で開催された第54回日本未熟児新生児学会と第19回日本新生児看護学会の合同シンポジウムにおいて、本研究の取り組みについて発表
④ ネットワークデータベースホームページ: http://plaza.umin.ac.jp/nrndata/

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
26件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
54件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
平野慎也、藤村正哲、楠田 聡、他
超低出生体重児の脳室内出血および動脈管開存症の発症予防(ランダム化比較試験)
日本小児臨床薬理学会雑誌 , 20 (1) , 98-102  (2007)
原著論文2
藤村正哲
"図1.出生体重別新生児死亡率、 図2.施設別死亡退院率"
日本子ども資料年鑑2007年版  (2007)
原著論文3
楠田 聡、福井トシ子
周産期医療の格差を考える
日本未熟児新生児学会雑誌 ,  (71) , 1859-1861  (2008)
原著論文4
Kono Y, Mishina J, Sato N, et al.
Developmental characteristics of very low-birthweight infants at 18 month' corrected age according to birthweight.
Pediatr int ,  (50) , 23-28  (2008)
原著論文5
Kono Y, Mishina J, Takamura M, et al.
Impact of being small-for-gestational age on survival and long-term outcome of extremely premature infants born at 23-27 weeks' gestation.
J Perinatal Med ,  (35) , 447-454  (2007)
原著論文6
上谷良行
全国調査から見た妊娠22?23週出生児の予後の推移
日本周産期・新生児医学会雑誌 ,  (43) , 877-879  (2007)
原著論文7
Ezaki S, Suzuki K, Tamura M, et al
Resuscitation of preterm infants with reduced oxygen results in less oxidative stress than resuscitation with 100% oxygen
J Clin Biochem Nutr ,  (44) , 111-118  (2009)
原著論文8
Suzuki K, Takayama C, Tamura M, et al
Resuscitation with mask CPAP - Is it useful for reducing oxygen exposure and oxidative stress in preterm infants?
J Paediatr Child Health ,  (45) , 116-  (2009)
原著論文9
山口文佳、田村正徳
新生児医療における生命倫理学的調査結果 第1部 -在胎22週児への対応-
日本周産期・新生児学会雑誌 , 45 (3) , 864-871  (2009)
原著論文10
Hosono S, Mugishima H, Fujita H, et al.
Blood pressure and urine output during the first 120 h of life in infants born at less than 29 weeks' gestation related to umbilical cord milking
Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. , 94 (5) , 328-331  (2009)
原著論文11
Hosono S, Inami I, Fujita H, et al.
A role of end-tidal CO(2) monitoring for assessment of tracheal intubations in very low birth weight infants during neonatal resuscitation at birth.
J Perinat Med. , 37 (1) , 79-84  (2009)
原著論文12
田村正徳、山口文佳
予後不良とされる疾患への新生児科医師の対応と「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」の活用
日本周産期・新生児医学会雑誌 , 44 (4) , 925-929  (2008)
原著論文13
田村正徳、杉浦正俊
Consensus2005に基づいた新生児蘇生法ガイドラインとその普及事業
日本小児科学会雑誌 , 112 (1) , 1-7  (2008)
原著論文14
Hosono S, Mugishima H, Kitamura T,et al.
Effect of hemoglobin on transfusion and neonatal adaptation in extremely low-birthweight infants.
Pediatr Int. , 50 (3) , 306-311  (2008)
原著論文15
Hosono S, Mugishima H, Fujita H,et al.
Umbilical cord milking reduces the need for red cell transfusions and improves neonatal adaptation in infants born at less than 29 weeks' gestation: a randomised controlled trial.
Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. , 93 (1) , 14-19  (2008)
原著論文16
Hosono S, Mugishima H, Kitamura T, et al.
Effect of hemoglobin on transfusion and neonatal adaptation in extremely low-birthweight infants.
Pediatr Int. , 50 (3) , 306-311  (2008)
原著論文17
田村正徳
Consensus2005に則った新しい新生児心肺蘇生法
小児科診療 , 4 (70) , 18-27  (2007)
原著論文18
田村正徳、横尾京子
「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン話し合いのガイドライン」が新生児医療の現場で活用される事を願って
日本未熟児新生児学会雑誌 , 19 (1) , 27-31  (2007)
原著論文19
和田雅樹、田村正徳
わが国の分娩取扱い施設における新生児心肺蘇生対策の現状
周産期医学 , 37 (2) , 171-176  (2007)
原著論文20
Itabashi K, Horiuchi T, Kusuda S, et al.
Mortality rates for extremely low birth weight infants born in Japan in 2005
Pediatrics. ,  (123) , 445-450  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
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