リン酸化タウの凝集阻害及び分解促進を標的とした新しいアルツハイマー病の根本治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200922010A
報告書区分
総括
研究課題名
リン酸化タウの凝集阻害及び分解促進を標的とした新しいアルツハイマー病の根本治療法に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究分担者(所属機関)
  • 工藤喬(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
  • 田中稔久(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
  • 数井裕光(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
  • 長谷川成人(東京都精神医学総合研究所 )
  • 高島明彦(理化学研究所アルツハイマー病研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リン酸化タウ凝集阻害やその分解促進を行うことでシナプス消失、神経脱落を抑制し、ADの根本的治療法を確立する事を目的とする。

研究方法
タウオリゴマー凝集阻害物質の探索として、化合物マイクロアレイに結合しているタウを可視化し、タウと結合活性を持つ化合物を得、化合物の凝集阻害活性をチオフラビン蛍光で測定する。
変異タウトランスジェニックマウスにポリフェノール化合物、フェノチアジン化合物、ポルフィリン化合物など低分子化合物を32週齢まで経口投与し、解析する。また、2種類のリン酸化タウペプチドワクチンを34週まで計6回免疫して同様に解析する。
低濃度のプロテアソーム阻害剤で前処理しておくとその後の高濃度の阻害剤に対して抵抗性を示す。このプロテアソーム・トレランス現象のタウやTDP-43の蓄積に対する効果を検討する。
ERストレスに対するシャペロンBiPを誘導するコンパウンドを見出し、そのERストレスに対する効果を検証する。
新しい治療薬の効果を確認するための臨床治験を行うため、アルツハイマー病及びその他のタウオパチーについての診断基準、評価項目、評価方法について検討し、作成する。
結果と考察
タウ凝集体凝集阻害物質の探索では、理研化合物バンクからマイクロアレイを作製し、タウと反応する親和性の高い化合物約100種類が得られた。リバスチグミンを変異タウ発現細胞株に投与しSDS不溶性タウの形成阻害効果を検討したところ、10μMで不溶性タウ形成阻害が観察された。
変異タウ発現マウスの解析から、低分子化合物exifone投与群と lacmoidでリン酸化タウ蓄積量の減少を認めた。また、2種類のタウワクチンに対する抗体価の上昇が観察され、運動機能低下が軽減することが認められた。
低濃度プロテアソーム阻害剤の前処理によりプロテアソーム・トレランスが獲得され、遺伝子導入されたタウやTDP-43の代謝亢進が観察された。
シャペロン誘導剤BIXは濃度依存的にBiPを選択的に誘導することが示され、ERストレス保護作用を示した。
また、タウオパチーの臨床治験に特化した診断プロトコールの作成し、臨床治験に備えた。

結論
タウの凝集阻害と分解促進に観点を絞って治療法を検討した結果、タウオリゴマーの凝集阻害物質、タウワクチン、プロテアソーム・トレランス誘導、さらにはシャペロン誘導剤が、候補としてあげられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-