産科医師確保計画を踏まえた産科医療の確保についての政策研究

文献情報

文献番号
202222002A
報告書区分
総括
研究課題名
産科医師確保計画を踏まえた産科医療の確保についての政策研究
課題番号
20IA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,734,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師不足等に対応した地域における周産期医療の確保については、産科医師の絶対数の減少や偏在といった既知のものに加え、医師の働き方改革への対応等の課題が指摘されている。医療提供側は以前より集約化による勤務条件の緩和を目指しているが、その成果は限定的であるとされている。
都道府県は平成30年の医療法改正によって2019年度末までに「産科医師確保計画」を策定することとなっている。この計画の策定にあたっては、厚生労働省が「産科医師偏在指標」を公開しているが、その他の産科医療に関する定量的な指標は明らかとなっておらず、公的統計や既存の大規模データベース(以下、DB等)の活用による研究も少ない。
そこで、本研究では前年度から引き続いてDPCデータを分析するとともに、二次医療圏別の医療機能集約度を測定する指標の開発やアクセシビリティの検証を行い、地域の実情に応じた具体的な取組方法を提言するための知見を得ることを目的とする。
研究方法
DPCデータの活用については、一般社団法人・診断群分類調査研究機構が保有する既存の対応表がない匿名化データを用いた後ろ向き観察研究を実施することとした。公的統計を活用した分娩取扱医師の実態把握については、今年度は病床機能報告データやDPC公開データの分析を行うこととした。
結果と考察
病床機能報告データの分析については、分娩取扱医療機関等までのアクセシビリティについて計算及び可視化を行った。DPC公開データの分析では、新生児医療の二次医療圏別集中度の指標を考案し可視化を行った。DPCデータの分析では、医療機関別の異常分娩取扱件数でグループ化し、Maternal End-Organ Injuryの発生について集計した。
アクセシビリティの分析では、60分以内のエリアに99%が居住していることが明らかとなった。今後の集約化の議論の補助となると考えられた。新生児入院医療の集中度指標については、集中度が低い二次医療圏での集約化について検討が必要と考えられた。DPCデータの活用については、肺塞栓症が症例数の少ない医療機関で発生しており、医療安全体制との関連が示唆された。
結論
DPCデータや厚生労働省の公開するデータを分析することで、アクセシビリティや集中度、医療機関別の診療ボリュームを踏まえた産科医療提供体制の見直しのための議論に資する知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
2024-03-25

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222002B
報告書区分
総合
研究課題名
産科医師確保計画を踏まえた産科医療の確保についての政策研究
課題番号
20IA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター)
  • 海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では産科医師や妊産婦と行った当事者に対するインタビューやアンケートを行い、医療機関の機能分化・連携を促進又は阻害する要因を明らかにする。また、公的統計や病床機能報告、DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告といったオープンデータを活用し、現状の把握及びこれまでの医療提供体制の変化について可視化を行う。更に、一般社団法人・診断群分類調査研究機構が保有する既存の対応表がない匿名化されたDPCデータを用いた後ろ向き観察研究を行い、医療機関規模とアウトカムとの関連について検討する。
研究方法
産科医師及び妊産婦を対象としたインタビュー及びアンケート調査については、インタビュー調査で今後のアンケート調査に含めるべき項目を洗い出した後、規模を変えて二度アンケート調査を実施した。
公的統計等の活用では、医師歯科医師薬剤師統計の2018年調査医師届出票やDPC導入の影響評価に関する調査、病床機能報告を活用した。
DPCデータを用いた後ろ向き観察研究は、本研究は一般社団法人・診断群分類調査研究機構が保有する既存の対応表がない匿名化データを用いた後ろ向き観察研究である。協力病院で匿名加工したデータを診断群分類調査研究機構が収集・データベース化したものを研究者が受領し分析を行った。なお、一般社団法人・診断群分類調査研究機構は診断群分類の公的研究を支援する目的で設立されたもので、厚生労働省に提出されているDPC関連データを別途個々の病院と契約を締結することで収集を行っている。データは機構が保有するクラウド上のサーバから、セキュリティの担保された方法でダウンロードすることで受領した。
結果と考察
産科医師及び妊産婦を対象としたインタビュー及びアンケート調査では、最終の大規模調査において、産婦人科等医師540名、現在妊娠中の女性2,366名、現在妊娠中の女性の夫625名、現在妊娠中の女性又はその夫の両親1,461名に対し調査を実施した。産婦人科医師を対象とした多元的無知に関する分析では、産婦人科等医師において、自他ポジティブ群と多元的無知群との間に医療提供体制等に関する意向や実際に表明する意見等に差が認められなかった。交流と対立に関する分析では、医療機関内、医療機関間ともに交流があることと対立があることとの間に有意な関連が認められた。妊産婦等を対象とした多元的無知に関する分析では、医療機関の集約化に関する考えや意見表明との関連が認められた。
公的統計の活用では、地域別に一医療機関平均分娩取扱医師数を4パターン算出した。働き方改革に対応するためには集約化が必要と考えられた。新生児入院医療ジニ係数では、ほぼ同規模の医療機関が複数存在することが想定される医療圏は、機能分化・連携の検討対象になると考えられた。分娩取扱医療機関へのアクセシビリティ分析については、分娩取り扱い医療機関へのアクセシビリティは、30分以内で93%、60分以内では99%カバーされており、現状の分娩取り扱い医療機関への全国的なアクセスについては良好である可能性が示唆された。DPCデータを用いた後ろ向き研究については、症例数の少ない医療機関で肺血栓塞栓症が多いことが示唆された。
結論
当初の計画通り、当事者への調査や公的統計の活用、データベース分析を実施した。我が国の産科医療提供体制を検討するための資料を得ることができた。これらを元に、医療機関の集約化に向けた議論が活性化することを望む。

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
分娩取扱件数で作成したHospital Case Volumeと有害事象の発生との間に関連を認めた。成果は国際産婦人科連合(FIGO)が発行するInternational Journal of Gynecology & Obstetricsに掲載され、我が国の異常分娩の現状について広く周知することが出来た。
臨床的観点からの成果
二次医療圏別の産科医師の配置に関する指標や新生児医療の地域差、分娩取扱医療機関へのアクセシビリティの可視化等、地域医療行政の現場で活用できる資料を開発した。
ガイドライン等の開発
妊婦の診療に係る医療提供体制整備事業」の産科、産婦人科以外の診療科医師に対する研修で使用可能なテキストの作成を行った。
その他行政的観点からの成果
地域医療構想を推進するに当たり、心理学的な観点から妊産婦等に医療機関の統廃合に関して「多元的無知」があることを明らかにした。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
妊婦の診療に係る医療提供体制整備事業」の産科、産婦人科以外の診療科医師に対する研修で使用可能なテキストの作成
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
2023-06-21

収支報告書

文献番号
202222002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,854,000円
(2)補助金確定額
4,357,000円
差引額 [(1)-(2)]
497,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 151,620円
旅費 0円
その他 3,086,100円
間接経費 1,120,000円
合計 4,357,720円

備考

備考
千円未満を自己資金から支払ったため

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-