文献情報
文献番号
202221001A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな手法を用いた肝炎ウイルス検査受検率・陽性者受診率の向上に資する研究
課題番号
20HC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター肝炎情報センター)
- 江口 有一郎(医療法人ロコメディカル ロコメディカル総合研究所)
- 榎本 大(大阪公立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
- 立道 昌幸(東海大学医学部基盤診療学系)
- 井上 貴子(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 内田 義人(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
- 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
- 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 日高 勲(済生会山口総合病院 消化器内科)
- 井上 淳(東北大学 大学院医学系研究科・消化器病態学分野)
- 末次 淳(岐阜大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
- 加藤 彰(JCHO下関医療センター 消化器内科)
- 是永 圭子(地域医療機能推進機構 船橋中央病院 健診科)
- 井出 達也(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
- 永田 賢治(国立大学法人宮崎大学 医学部内科学講座消化器内科学分野)
- 小川 浩司(北海道大学病院 消化器内科)
- 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
- 井上 泰輔(韮崎市国民健康保険韮崎市立病院)
- 寺井 崇二(新潟大学大学院 医歯学総合研究科・消化器内科分野)
- 柿崎 暁(国立病院機構 高崎総合医療センター 臨床研究部)
- 遠藤 美月(大分大学医学部附属病院 消化器内科)
- 瀬戸山 博子(熊本大学病院 消化器内科)
- 加治屋 幹人(広島大学病院 口腔検査センター)
- 池上 正(東京医科大学 茨城医療センター)
- 高橋 宏和(国立大学法人佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
- 平井 啓(大阪大学 大学院人間科学研究科)
- 戸所 大輔(群馬大学医学部附属病院 眼科)
- 西村 知久(医療法人YT 美川眼科医院)
- 磯田 広史(佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
- 小塚 立蔵(大阪公立大学 大学院医学研究科)
- 大原 正嗣(北海道大学病院 消化器内科)
- 徳本 良雄(愛媛大学 医学系研究科)
- 川部 直人(藤田医科大学 医学部 消化器内科学)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
39,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成26年~令和元年の6年間「効率的な肝炎ウイルス検査陽性者フォローアップシステムの構築」「職域等も含めた肝炎ウイルス検査受検率向上と陽性者の効率的なフォローアップシステムの開発・実用化に向けた研究」内で①職域肝炎ウイルス検査促進とモデル地域で陽性者に対する新規フォローアップシステム開発②地方公共団体が実施主体である肝炎ウイルス検診・フォローアップ事業の問題点抽出③電子カルテアラートシステムを用いた院内肝炎ウイルス陽性者への受診勧奨の課題④院外非専門医から紹介を高めるシステム⑤働く陽性者に対する両立支援の必要性を検討し、非受検者が多く存在する職種や地域が明らかとなり、開発したシステムを全国に水平展開することで、肝炎ウイルスの周知向上、陽性者の医療機関受診率・受療率の上昇が確認された一方で、各システムに反応しない陽性者・医師、システムを導入しても十分な向上が得られない地域が存在することが明らかになった。
本研究は、開発してきた既存システムを改良し全国へ展開するだけに留まらず、受検者・陽性者に対して新規手法を用いて、背景因子や受診行動に応じた最適なアプローチの方法を検討し、実用化することを目的とする。
本研究は、開発してきた既存システムを改良し全国へ展開するだけに留まらず、受検者・陽性者に対して新規手法を用いて、背景因子や受診行動に応じた最適なアプローチの方法を検討し、実用化することを目的とする。
研究方法
・ 職域肝炎ウイルス検査受検率・陽性率を解析とD&I研究による阻害因子抽出と介入
・術前に見つかる肝炎ウイルス陽性者の受診阻害要解析・介入と拠点病院以外での実態調査
・非専門医科へ肝炎医療コーディネーター(Co)を配置する効果
・特定科(眼科・歯科)医師自身による啓発モデルの開発
・肝炎ウイルス検査受検者が陽性・陰性に関わらず、結果を長期間、覚えているように意識づける方法を開発
・自治体が行う肝炎ウイルス検診陽性者の受診確認状況の実態調査と、新規手法による受診確認方法(QRコード、検査医師利用=川崎モデル)の効果測定
・肝疾患における「治療と仕事の両立支援に対する」必要性と癌になっても働く意志について多施設共同で実態調査
・術前に見つかる肝炎ウイルス陽性者の受診阻害要解析・介入と拠点病院以外での実態調査
・非専門医科へ肝炎医療コーディネーター(Co)を配置する効果
・特定科(眼科・歯科)医師自身による啓発モデルの開発
・肝炎ウイルス検査受検者が陽性・陰性に関わらず、結果を長期間、覚えているように意識づける方法を開発
・自治体が行う肝炎ウイルス検診陽性者の受診確認状況の実態調査と、新規手法による受診確認方法(QRコード、検査医師利用=川崎モデル)の効果測定
・肝疾患における「治療と仕事の両立支援に対する」必要性と癌になっても働く意志について多施設共同で実態調査
結果と考察
・Nudgeを用いた受検勧奨が有効性 (Environ Health Prev Med. 2021 ) により、協会けんぽ10支部に展開、年間5万件の検査を上昇させたが、2020年に協会けんぽ本部が改定した受検票では有効性が認められなかった
・職域陽性率は低率であったが、60歳代より50歳代のやや陽性率が高く、費用対効果からは60歳前後に検査を促進すべきと考えられた
・職域肝炎検査の阻害要因として、費用対効果や外的要因の少なさは抽出され、陽性率が高い職種があること(J Infect Public Health. 2022 )や検査促進に関する通知発出を検討した
・拠点病院でも肝Co配置に偏在があり (肝臓 2021)、継続調査にてコロナ禍は活動に影響していなかったが配置の改善は数施設しか認められなかった(肝臓 査読中)
・眼科に肝Coを養成した群馬大・北海道では陽性者の紹介率が飛躍的に向上した(臨床眼科2023 肝臓 in press)
・日本眼科医会は研究班と連携し、肝炎対策を事業化させ、更に眼科のニーズに配慮したコミュニケーションツール(検査説明用・陽性者配布用)を作成した
・愛知県歯科医師会は研究班と連携し、肝炎対策を事業化させ、愛知県と共催で歯科医師を約200名、Coとして養成化に成功し、HBワクチン対策が不十分であることが明らかになった(肝臓 2022, 2023)
・入院・手術時に行う肝炎ウイルス検査結果を紙で渡していたところに、陰性カードを付け加えるだけで、認識率が40%~70%と有意に上昇した(肝臓 in press)
・陽性者の受診確認方法を患者さん自身のみならず検査委託医療機関に変更する川崎モデルにて、飛躍的に精検率の実態把握が向上し、政令市で最も検査数が多い札幌市で川崎モデルを導入し、約70%の陽性者が精密検査を受けていることが明らかになっただけでなく、1名の担当者でも調査可能であること証明された
・川崎モデルの水平展開に自治体への周知が重要であるが、愛知県では研究班と共催で市町への精密受診率調査の説明会を企画、今後毎年開催することになった
・「治療と仕事の両立支援」に関するアンケート調査2500例の解析により、両立支援の周知不足、陽性者は会社に病名を伝えにくい配慮が必要であること、更に「両立支援を必要とする肝疾患患者が一定数存在する」ことが明らかになり、拠点病院ではその意思を積極的に確認すべきと考えられた
・職域陽性率は低率であったが、60歳代より50歳代のやや陽性率が高く、費用対効果からは60歳前後に検査を促進すべきと考えられた
・職域肝炎検査の阻害要因として、費用対効果や外的要因の少なさは抽出され、陽性率が高い職種があること(J Infect Public Health. 2022 )や検査促進に関する通知発出を検討した
・拠点病院でも肝Co配置に偏在があり (肝臓 2021)、継続調査にてコロナ禍は活動に影響していなかったが配置の改善は数施設しか認められなかった(肝臓 査読中)
・眼科に肝Coを養成した群馬大・北海道では陽性者の紹介率が飛躍的に向上した(臨床眼科2023 肝臓 in press)
・日本眼科医会は研究班と連携し、肝炎対策を事業化させ、更に眼科のニーズに配慮したコミュニケーションツール(検査説明用・陽性者配布用)を作成した
・愛知県歯科医師会は研究班と連携し、肝炎対策を事業化させ、愛知県と共催で歯科医師を約200名、Coとして養成化に成功し、HBワクチン対策が不十分であることが明らかになった(肝臓 2022, 2023)
・入院・手術時に行う肝炎ウイルス検査結果を紙で渡していたところに、陰性カードを付け加えるだけで、認識率が40%~70%と有意に上昇した(肝臓 in press)
・陽性者の受診確認方法を患者さん自身のみならず検査委託医療機関に変更する川崎モデルにて、飛躍的に精検率の実態把握が向上し、政令市で最も検査数が多い札幌市で川崎モデルを導入し、約70%の陽性者が精密検査を受けていることが明らかになっただけでなく、1名の担当者でも調査可能であること証明された
・川崎モデルの水平展開に自治体への周知が重要であるが、愛知県では研究班と共催で市町への精密受診率調査の説明会を企画、今後毎年開催することになった
・「治療と仕事の両立支援」に関するアンケート調査2500例の解析により、両立支援の周知不足、陽性者は会社に病名を伝えにくい配慮が必要であること、更に「両立支援を必要とする肝疾患患者が一定数存在する」ことが明らかになり、拠点病院ではその意思を積極的に確認すべきと考えられた
結論
職域にも陽性者は多く存在する。検査促進とともに陽性者の受診状況を積極的に把握する施設の増加を目指す必要がある。非専門医対策には拠点病院自らが院内Coの配置改善、特定科(眼科・歯科)との連携により他科の環境にあわせた受診勧奨方法の開発が考慮される。検査結果を忘れさせない工夫や肝Co研修を介した知識向上も肝炎撲滅に必要である。
公開日・更新日
公開日
2024-03-29
更新日
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