高齢者に対する向精神薬の使用実態と適切な使用方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200921023A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者に対する向精神薬の使用実態と適切な使用方法の確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-長寿・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井孝子(国立保健医療科学院・福祉サービス部 ・福祉マネジメント室)
  • 兼板佳孝(日本大学医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の睡眠障害(不眠、せん妄、昼夜逆転等)と随伴精神行動障害に対する睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬等の催眠・鎮静系向精神薬(以下、向精神薬)の使用実態と臨床転帰を調査し、医学的問題点と対処方策を明らかにすることを通じて、高齢者の睡眠障害に対する向精神薬の使用ガイドラインと応用指針を作成することを目的とした。
研究方法
約30万人分の診療報酬データを用いて日本における向精神薬処方実態調査、生活習慣病罹患者における睡眠薬の使用実態調査を行った。層化無作為法による面接聞き取り調査によって2206人を対象とした睡眠薬の使用実態とその問題点に関する意識調査を行った。65歳以上の要介護高齢者594名を対象に随伴精神行動障害BPSDおよび睡眠障害の罹患実態と介護負担に及ぼす影響を検討した。睡眠障害・BPSDの治療を目的として抗精神病薬を服用している認知症高齢者を対象として、長期投与中の抗精神病薬から認知症高齢者を離脱させる手法の開発に関する多施設共同研究を進めた。
結果と考察
2005年~2007年にかけての推定処方率は睡眠薬3.66-4.58%、抗うつ薬2.02-2.53%、抗不安薬4.42-5.07%、抗精神病薬0.67-0.84%と経年的に増加していた。高齢者では睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬(女性)の処方率が顕著に増加しており、身体疾患の合併が主たる要因であった。糖尿病、高血圧、高脂血症等の生活習慣病の罹患者は有意に睡眠薬の服用率が高く高齢者においてより顕著であった。睡眠薬服用により不眠症状は90%の患者で改善するが日中のQOL低下の改善は30~50%の患者にとどまり、アドヒアランスを低下させる要因であることが明らかになった。要介護高齢者におけるBPSDでは、睡眠障害(50.8%)、拒絶(33.2%)、自閉(32.5%)、被害妄想(30.1%)の順に高頻度であり、睡眠障害は認知症の発症早期から終末期に至るまで慢性的に出現していた。BPSDカテゴリ(攻撃的行動、行動の過多と変質、不安と焦燥)の中で不安と焦燥(62.8%)が最も高頻度であり高率に睡眠障害と併存していた。長期投与中の抗精神病薬から認知症高齢者を離脱させる手法の開発に関する多施設共同研究に45名の認知症患者をエントリーし、26名が離脱試験プロトコルを完遂した。
結論
合理的で安全性の高い高齢者の不眠・昼夜逆転に対する薬物使用ガイドラインを作成するための調査・研究を行い、当初の目標を達成した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-04
更新日
-