HIV感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究

文献情報

文献番号
202220001A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究
課題番号
20HB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 明神 大也(奈良県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,409,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国の保険診療の全数(悉皆)調査であるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、HIV感染症及びその併存疾患の「医療状況」と「医療費」の2つの実態を把握することを目的としている。
研究方法
研究班の最終年度である2022年度は、 (1) HIV/AIDSの検査・治療状況の推計(エイズ動向委員会への報告を含む。)、(2) HIV 治療中の患者の年間医療費推計、(3)NDB 集計定義に基づいて算出された2016 年~2020 年における日本の HIV 治療の変容についての分析、(4) 抗HIV薬に関する医療経済分析、(5) 血液凝固異常症(血友病等)で治療を受けている患者における大腿骨近位部骨折の発生数および入院状況、リハビリテーション実施状況の分析の5つを具体的な研究対象とした。
結果と考察
(1)については、2020年12月~2021年3月の4ヶ月間で継続的に抗HIV薬の処方を受けたHIV感染者は、全国で24631人(男性 22977人、女性 1654人)であることや、2020年1~12月に、新規に抗HIV薬の処方が開始された新規患者は1862人であること、2013~2020年に抗HIV薬を処方された31424人を対象にした2014~2020年における各年の死亡数は89~128人の範囲であることなどが推計された。(2)については、2013~2020年度に抗HIV薬の処方を受けたHIV感染者について、年間総医療費の平均が2,907,079~3,268,453円の範囲であることや、年間入院医療費の平均が181,205~257,879円の範囲であること、年間HIV薬剤費の平均が1,962,435~2,263,998円の範囲であることなどが明らかとなった。(3)については、STRがTop10処方に入る時期と、Top10処方患者割合が上位の都道府県が増加する時期が重なっており、STRの発売により治療内容の集約化が促進されたことが示唆された。また、各都道府県におけるTop10処方患者割合は最低でも60%を超えており、日本全体でHIV治療の均てん化が進んでいることが定量的に示された。(4)については、2剤併用療法と3剤併用療法とで、生存年数を変えることなく、生涯費用を縮減できる可能性が示唆された。(5)については、大腿骨近位部骨折の分析で、男性が 29 人で女性が 57 人が対象となることや、リハビリテーションの分析で、最も多いリハ算定項目が男女ともに運動器リハであることが明らかとなった。
結論
本研究により、HIV感染者の医療状況について、NDBを用いて様々な指標を把握する技術が確立され、第159回~第160回のエイズ動向委員会に資料を提供し、国のオンライン公表資料(API-Net)に追加されるなどエイズ統計の基幹的な資料を提供するなど、本研究は予定の進捗を超えた多くの目標が達成された状況である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202220001B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究
課題番号
20HB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 明神 大也(奈良県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の抗HIV療法(ART)普及によりHIV感染症は慢性疾患化しつつあり、中長期的な対応が臨床上、患者支援上の大きな課題となっている。
また、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は国民皆保険制度を有する我が国における保険診療の全数調査であり、生活保護の医療扶助や感染症法に基づく公費医療などを除く、1億1千万人前後の医療受療状況のデータがほぼすべて格納されている。NDBは病院だけでなく、診療所のデータも取得されており、また、適切な名寄せを行うことで、同一患者の医療機関や都道府県をまたいだ受診を追跡できる。このようにNDBは既存の集計値にはない強み(全国悉皆性)を有するため、既存統計と補完的に用いることで精緻な実態把握が可能となる。
本研究は、わが国の保険診療の全数(悉皆)調査であるNDBを活用し、HIV感染症及びその併存疾患の「医療状況」と「医療費」の2つの実態把握を目的としている。
研究方法
各年度に実施した研究は以下の通りである:
2021年度:
(1) HIV/AIDSの検査・治療状況の推計、(2) 前項の推計と厚労科研「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究」(横幕班)の全国実態調査との比較、(3) 抗HIV薬に関する医療経済分析。
2022年度:
(1) HIV/AIDSの検査・治療状況の推計(エイズ動向委員会への報告を含む。)、(2) レセプトによる血友病特定アルゴリズム開発のためのバリデーションプロトコル構築、(3)国連合同エイズ計画(UNAIDS)で定義されている90-90-90の2nd90(Retained to Care)と治療が行われている(On treatment)のNDBにおける集計定義策定、(4) 抗HIV薬に関する医療経済分析、(5)HIV及び血液凝固異常症を有する患者の整形外科的治療分析。
2023年度:
(1) HIV/AIDSの検査・治療状況の推計(エイズ動向委員会への報告を含む。)、(2) HIV 治療中の患者の年間医療費推計、(3)NDB 集計定義に基づいて算出された2016 年~2020 年における日本の HIV 治療の変容についての分析、(4) 抗HIV薬に関する医療経済分析、(5) 血液凝固異常症(血友病等)で治療を受けている患者における大腿骨近位部骨折の発生数および入院状況、リハビリテーション実施状況の分析。
結果と考察
研究は計画通りか予定を超えて達成された。抗HIV薬の処方状況分析により、抗HIV薬の処方レジメンの全国均てん化が進んでいることが明らかとなり、我が国のHIV診療を定量的に示すことに成功した。医療費分析についても、Budget Impact Analysisにより、3剤から2剤への切り替えが生命予後に影響せず医療費を下げるという重要な知見がもたらされた。
各々の研究結果に対する考察は、本報告書に付属する各年度の総括研究報告書を参照する形式で詳述した。
結論
本研究班においては、NDBを用いて、HIV/AIDSの検査・治療状況に関する総合的・多面的な分析を実施した。研究期間を通じ、HIV感染者の医療状況について、NDBを用いて様々な指標を把握する技術が確立された。また、本研究班は第155回~第160回のエイズ動向委員会にNDB集計資料を提供し、提供資料が国のオンライン公表資料(API-Net)で公表されるなど、当研究班の成果は、国のエイズ統計の基幹的な資料の一部として採用された。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202220001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
悉皆性の高い世界最大級のヘルスデータベースを用いて、HIV感染症の医療受療状況を明らかにする研究である。レセプトデータを使用した国全体のHIV患者の集計は諸外国では存在点で、ないため、血液凝固異常症やHIV感染症に関する悉皆調査・臨床研究が可能になった点で、学術的・国際的な意義は大きい。
臨床的観点からの成果
本研究により、HIV感染者及び血液凝固異常症患者が受けている治療の姿を全国を網羅する形で明らかになった。特に、抗HIV薬処方の全国均てん化度合いの把握(Top10レジメン処方患者割合)は我が国のHIV診療の状況を定量的に示した大規模データであり、全国あまねく標準的な治療を届けるというHIV臨床のミッションを裏打ちする成果である。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は、ガイドラインに即した標準的な医療を、NDBというビッグデータを用いて支援する試みである。研究成果は、他の厚労科研研究班(「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究班」代表・横幕能行)等に共有した。
その他行政的観点からの成果
本研究班は、第155回~第160回のエイズ動向委員会にNDB分析結果を資料として提供し、国からのオンライン公表資料(API-Net)に追加されるなどエイズ統計の基幹的な資料の一部として採用されている。また、当研究班の成果は、厚労省を通じてUNAIDSへの報告に生かされる予定であり、継続的な国際貢献が期待されている。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
特になし
その他成果(特許の取得)
0件
特になし
その他成果(施策への反映)
0件
特になし
その他成果(普及・啓発活動)
0件
特になし

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202220001Z