社会経済的格差と高齢者の健康、生活習慣、医療介護資源利用に関する検討

文献情報

文献番号
200921016A
報告書区分
総括
研究課題名
社会経済的格差と高齢者の健康、生活習慣、医療介護資源利用に関する検討
課題番号
H19-長寿・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学科)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
所得格差が大きく、医療・介護の資源消費が多い高齢者層に着目し、社会経済的状況と生活習慣・健康、そして介護医療需要の関係を明らかにする。社会保障政策の枠組みの中に医療・介護ニーズを位置づけ、高齢者の医療・介護制度の構築に資する政策的基礎資料を提示することを目標とした3年計画事業である。
研究方法
先行研究(「暮らしと健康」調査;一橋大学・経済産業研究所)実施の中高齢者大規模調査を母体フレームとし、健康状態など追加的調査を訪問・留め置き質問票により実施した。あわせて承諾を得られた国保加入者について、市町村保険者を通じて医療・介護給付実績を入手した。全国5市町村で初年度4200人分のデータを収集し、最終年度に追跡調査を実施した。また最終年度には西日本地区で1地点の追加調査を実施した。
結果と考察
2007年度;喫煙は性・年齢層により教育歴との関係が異なった。飲酒・高脂血症は高学歴・高所得者に、糖尿病は低学歴で多かった。野菜・果物は、流動資産保有額が高い層で摂取量が多かった。
2008年度:対象者のうち国民健康保険加入者は58% で、8割から給付情報参照の承諾を得た。面接調査情報と給付情報を比較したところ、ばらつきが見られ、年齢や性別・自覚的健康状態・認知機能(計算力)などによって一致率に違いが見られた。
2009年度: 
 縦断調査分析;94.5%について2年後の所在が追跡され1.1%に死亡が見られた。死亡の予測因子として男性、糖尿病、低握力が有意だったが、所得・教育は有意とならず、その関係もU字型だった。大学レベルの教育はIADL良好を、また低所得はうつ状態を有意に予測する社会経済的要因であった。
 横断調査分析;健診受診では市町村による違いが大きく、個人要因として医療保険種別、就労、教育歴、健康状態が有意であった。新規調査地点(西日本)と先行5地点で健康・医療ニーズと社会経済的要因の関係は同様のものが観察された。
結論
中高齢者の社会経済的要因と生活習慣、医療サービス受療の確率ならびに受療量には複雑な関係が見られることが明らかとなった。制度・教育介入などにより医療費の適正化を図るには、高齢者をひとくくりにせず、社会経済的要因や行動要因の関係を見定めたセグメンテーションが必要であることが明らかとなった。今後さらにパネルデータの解析を継続し因果関係の特定を深める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200921016B
報告書区分
総合
研究課題名
社会経済的格差と高齢者の健康、生活習慣、医療介護資源利用に関する検討
課題番号
H19-長寿・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
所得格差が大きく、医療・介護の資源消費が多い高齢者層に着目し、社会経済的状況と生活習慣・健康、そして介護医療需要の関係を明らかにする。社会保障政策の大きな枠組みの中に医療・介護ニーズを位置づけ、高齢者の医療・介護制度の構築に資する政策的基礎資料を提示することを目標とした3年計画事業の最終年度であった。
研究方法
初年度実施した調査の追跡調査を実施し、ベースラインにおける社会経済的状況の違いが、健康・機能・医療介護需要の変化にどう反映されたか、を検討した。併せて医療サービスへのアクセスの所得格差について公平性の検討を行った。またベースラインでデータ収集した5地点が東日本に偏っていたことから、平成21年9-11月に、西日本追加1地点として九州某市において2000人を対象に5地点と同じ手法・項目で調査を実施し、比較した。
結果と考察
1)94.5%について2年後の所在が追跡され1.1%に死亡が見られた。また調査協力は78%から得られた。
2)死亡の予測因子として男性、糖尿病、低握力が有意で、先行研究とも整合的だった。なお所得・教育は有意とならず、その関係もU字型で中等度のカテゴリーでもっとも死亡オッズが低かった。
3)大学レベルの教育はIADL良好を、また低所得はうつ状態を有意に予測する社会経済的要因であった。なお社会関係資本については、横断調査では生活習慣と関係を認めたが縦断調査では死亡率・機能・うつとの関係は有意ではなかった。
4)外来利用についてアクセス公平性が著しく阻害されてはいなかったが、歯科診療については歯の状態を鑑みて所得によるアクセス不公平が観察された。
5)新規調査地点(西日本)と先行5地点で健康・医療ニーズと社会経済的要因の関係は同様のものが観察された。
なお、この2年間の医療・介護サービスの利用について、現在レセプトデータのクリーニングを継続中である。また追跡期間中に就労状態が変化した群の健康状態・所得への影響について現在解析進行中である。
結論
社会経済的状況と健康状態の変化が生活習慣の変化、医療介護サービスの需要、に影響する過程をより詳細に検討していくうえで、重要なデータが蓄積された。中高齢者が置かれる多様な状況を踏まえた、社会保障の制度設計を行ううえで、データ解析を継続するとともに、今後引き続きパネルデータの収集を継続するための準備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康科学・経済学・社会学など複合的学術領域にまたがる包括的測定項目と、パネル構造を有する、比較的大規模データであり、また海外の姉妹研究調査であるHealth and Retirement Surveyなどとデータ交換ができることから、今後匿名化を施したうえで収集データを公開利用に付することで、社会疫学や社会保障・高齢者就労の経済学分析などを飛躍的に進める基盤となることが期待される。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
該当しない
その他行政的観点からの成果
本体調査(一ツ橋大学・経済産業研究所「くらしと健康」調査)と共同で、すでに第1回調査のサマリーを経済産業研究所ホームページを通じて公開したところ、5万件を超えるアクセスが国内外の学術機関・政府関連機関などから得られている。
その他のインパクト
データの一部はこれまで日本経済新聞「経済教室」などで取り上げられた。高齢化社会の社会保障制度の設計に、本調査のような包括的測定・パネル調査が必要であることをアピールした。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-