技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究

文献情報

文献番号
202218050A
報告書区分
総括
研究課題名
技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究
課題番号
21GC2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部情報システム課)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 清水 朋美(西田 朋美)(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部 )
  • 須田 裕紀(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター)
  • 藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
  • 井村 保(中部学院大学 看護リハビリテーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は補装具費支給制度における①3D技術の基本工作法への適用②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理、③支給基準に関する基礎調査、④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査の4課題を設定し、現行制度の問題点の抽出と検証により、技術革新によってもたらされる現行制度の課題と解決法の提案を目的とする。
研究方法
今年度は昨年度の調査で明らかになった課題についてその詳細について調査を行った。
① 3D技術の基本工作法への適用
(ア) 3D技術の実運用に関する調査
(イ) 製作データに基づく基本工作法との比較
の2課題について実態調査した
②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理
追加調査を行った。。
③支給基準に関する基礎調査
(ア) 義肢・装具・座位保持装置の価格根拠調査
補装具製作事業所を対象に価格根拠となる基礎データを収集した。
(イ) プラスチック短下肢装具の製作時間調査
  シューホーンブレースの実際の製作時間を調査した
(ウ) 小児筋電義手の製作修理に関する基礎調査
借受けの対象として、小児筋電義手を選び、小児筋電義手の支給に至るまでの過程について修理頻度等の後方視的調査を行った。また、実運用での課題を整理した。
④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査
(ア) 視覚障害者安全つえ・石突等の価格実態調査
(イ) コンタクトレンズの基準検討のための現況・課題の把握
(ウ) 画像処理方式の眼鏡型新規デバイスの現況
(エ) 骨導補聴器・軟骨伝導補聴器、各種人工聴覚機器の修理対応
(オ) PC アプリとして機能する意思伝達ソフトウエアを組み込んだ装置の実態調査
(カ) 言語獲得時期にある児童への意思伝達装置の支給に関する実態調査
 の6課題について販売実績と課題等を調査した。
結果と考察
結果
① 3D技術の基本工作法への適用
(ア) 3D技術の実運用に関する調査
有用面としてデータ化による利点だけでなく、製作時間の短縮による労働環境の改善が指摘された。また、従来の製作技術とは大きく異なるため、新たな基準を設ける必要があると認識している回答者が多かった。。
(イ) 製作データに基づく基本工作法との比較
体幹装具について一連の作業工程をビデオ撮影し、録画から作業内容、作業時間、使用材料、必要設備などの情報を収集した。結果、3D製法では必要な技術やノウハウ、作業内容や作業時間、必要な設備や物品など、従来製法とは異なる点が多くあった。
②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理
クッション分類について試案を作成した。
③支給基準に関する基礎調査
(ア) 義肢・装具・座位保持装置の価格根拠調査
素材価格については、種目別平均で+7.8%ないし+12.0%上昇していた。売上高利益率は平均3.3%という結果であり、一定水準を確保しているものの全産業平均、製造業平均数値と比較すると低かった。
(イ) プラスチック短下肢装具の製作時間調査
  6名の被験者の平均製作時間は235.8±35.0分(3.93±0.6時間)であった。
(ウ) 小児筋電義手の製作修理に関する基礎調査
2回の調査から電動ハンド等の高額部品を借受制度で運用しても故障等は少なく、繰り返し使用が可能であることが示された。また、課題の整理については、小児受けの運用にあたって、実際にその対象種目別にその適用までの具体的なプロセスを検討する必要があること、対象となる補装具の適用判断に要する期間によっては、補装具の完成用部品だけではなくその製作・修理にかかる費用負担についても支給する必要があり、さらには小児の義手処方と訓練を行う医療提供体制についても課題があることが明らかになった。

④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査
(キ) 視覚障害者安全つえ・石突等の価格実態調査
(ク) コンタクトレンズの基準検討のための現況・課題の把握
(ケ) 画像処理方式の眼鏡型新規デバイスの現況
(コ) 骨導補聴器・軟骨伝導補聴器、各種人工聴覚機器の修理対応
(サ) PC アプリとして機能する意思伝達ソフトウエアを組み込んだ装置の実態調査
(シ) 言語獲得時期にある児童への意思伝達装置の支給に関する実態調査
 の6課題について課題等を把握した。

考察
昨年度より詳細な調査から、現行制度の加地アを明確にした。これらの課題解決を考慮して、制度設計をする必要がある。
結論
実態調査に基づき現行制度の問題点の抽出を行った。各課題において、技術の進歩に由来する現行制度と現実の乖離が認められ、制度運用のための課題を明らかにできた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218050B
報告書区分
総合
研究課題名
技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究
課題番号
21GC2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部情報システム課)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 清水 朋美(西田 朋美)(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部 )
  • 須田 裕紀(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター)
  • 藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
  • 井村 保(中部学院大学 看護リハビリテーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は補装具費支給制度における①3D技術の基本工作法への適用②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理、③支給基準に関する基礎調査、④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査の4課題を設定し、現行制度の問題点の抽出と検証により、技術革新によってもたらされる現行制度の課題と解決法の提案を目的とする。
研究方法
①3D技術の基本工作法への適用
 従来製作技術と3D技術を比較するために、短下肢装具と体幹装具の製作における一連の作業工程の録画と時間を計測して、両製法の比較を行った。補装具製作に関わる企業・団体に対し3次元デジタル造形技術に関する実態調査を行い、調査対象の44%が技術導入済みの結果を得た。さらに実運用に関する追加調査を行い3次元デジタル造形技術の有効性と課題を把握した。
②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理
 座位保持装置については、アメリカのHCPCS (the Healthcare Common Procedure Coding System)やWHOの車椅子関連資料等を調査し、これらには補装具費支給制度における「座位保持装置」の全体の分類は存在しないことが確認された。一方、クッションに関しては複数の分類が確認され、それらを元に機能的な要素を考慮した整理案を試作した。試作した座位保持装置の座支持部(シートクッション)の機能的な区分の試案について、さらに情報収集と検討を行って、区分への応用可能性が高い機能を抽出して整理した。座位保持装置の処方判定時における判断材料として、あるいは費用対効果を考える上での整理方法として参考情報となることが期待される。
義肢装具に関して区分整理における課題を整理した。
③支給基準に関する基礎調査
 義肢・装具・座位保持装置について、従来法による調査を実施した。また急激な物価上昇の影響を把握するために車椅子、電動車いす、歩行器、歩行補助つえ、座位保持椅子、起立保持具、頭部保持具、排便補助具、補聴器について仕入れ値価格の上昇を調査した。素材価格と仕入れ値ともに二けたの価格上昇を確認した。下肢装具製作時間の調査による検証は、被験者である義肢装具士6名のプラスチック短下肢装具製作時間を記録した。複数施設において小児筋電義手の試用評価における修理状況調査を行い、ソケット交換頻度、部品修理状況等のデータを得た。小児筋電義手の借受け制度での運用に関し課題抽出を行った。
④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査
 視覚系補装具については、視覚障害者安全つえの価格と支給実態の調査を行うとともにコンタクトレンズの仕様に基づいた分類と価格差を明らかにした。また高額高機能な眼鏡型デバイスの仕様、性能について整理した。
 聴覚系補装具については、デジタル補聴援助システムについて先行研究の結果もふまえ、補装具の基準改正案をまとめた。骨導補聴器の販売状況、人工内耳と共に使用されるイヤモールドの販売状況、健康保険適応で手術により埋め込まれる人工聴覚機器(の音声信号処理装置の修理状況を調査した。
 意思伝達装置に関しては、PCアプリとして機能する意思伝達ソフトウエアを組み込んだ装置の実態調査を行った。また、言語獲得時期である学齢前の児童における重度障害者用意思伝達装置の導入支援について調査した。対象児に長期的な介入による認知・運動発達面に関する情報整理が行われれば、意思伝達装置の有効利用が見込まれる。
結果と考察
①3D技術の基本工作法への適用と④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査は現在の支給制度と実際の技術や基準価格との差異が明確になり、一部は支給基準改定へ反映した。②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理において、座位保持装置の機能区分は海外でも少なく、基礎資料を作成した。③支給基準に関する基礎調査では、義肢・装具・座位保持装置の従来調査に加え、物価上昇の影響についても調査を行い、次年度の改定に向けた基礎資料を作成した。
調査からは、現行制度が技術の進歩に追いついていない面が明確になり、その課題が明らかになった。制度見直しに向けて課題解決の根拠を形成する必要がある。
結論
補装具費支給制度における①3D技術の基本工作法への適用②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理、③支給基準に関する基礎調査、④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査の4課題を設定し、現行制度の問題点の抽出と検証により、技術革新によってもたらされる現行制度の課題を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218050C

収支報告書

文献番号
202218050Z