療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202218041A
報告書区分
総括
研究課題名
療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究
課題番号
22GC1014
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(学校法人梅村学園 中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 登紀夫(福島学院大学 福祉学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 岡田 俊(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部)
  • 中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
  • 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
  • 上野 修一(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 精神神経科学)
  • 伊藤 大幸(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 浜田 恵(名古屋学芸大学ヒューマンケア学部)
  • 高柳 伸哉(愛知東邦大学 人間健康学部)
  • 明翫 光宜(中京大学心理学部)
  • 村山 恭朗(金沢大学 人間社会研究域 人間科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、本年度は①現行の療育手帳制度の背景を理解することを目的として、我が国における知的障害児支援施策から療育手帳制度に至る変遷の検討、②精神医学的観点から知的発達症の理解を目的として、ICD-11(International Classification of Diseases 11th)における知的発達症の診断概念の把握、③現行の療育手帳の判定業務の実態を把握することを目的として、児童相談所で行われている療育手帳の判定における情報収集の在り方の検討、④ICD-11の知的発達症の診断基準に準拠する療育手帳の判定を目的としたアセスメントツールの開発を目的とした。
研究方法
①については、障害児者支援施策全般を概観し、知的障害児支援における課題を整理した。②については、国際的に使用されている知的障害の診断基準であるICD-11の定義と概念を整理し、現行の診断基準にはどのような研究成果が反映されているのかを英語文献を中心に検討した。③については、児童相談所の機能の概要について説明し、児童相談所における療育手帳制度の位置づけ、実際の判定業務の流れなどについて児童福祉法・児童相談所運営指針に基づいて整理した。④については、定型発達群の調査対象の募集は民間リサーチ会社に依頼した。具体的には、民間リサーチ会社のモニターに登録している関東・東海・関西地域に在住し、療育手帳の交付を受けていない子ども(1歳半-18歳)249名(男子124名、女子123名、不明2名、108.63±59.31か月)と、臨床群(療育手帳の交付児者)132名(男子96名、女子36名、112.61±53.97か月)が本研究に参加した。
結果と考察
①:知的障害者福祉法・児童福祉法において、「知的障害」「知的障害のある児」についての定義は見当たらない。知的障害者福祉法も児童福祉法においても、すでに成立してから、60年以上が経過しているが、「知的障害」についての定義を明記していく必要がある。これでまの知的障害施策の歴史を概観し、知的障害の定義が明記されてこなかったいくつかの理由を理解したところである。しかしながら、統一的判定業務のためには、判定するべき事項(ここでは「知的障害」)について、明確な定義が必要となる。②: 療育手帳が知的障害を対象とするなら知的障害を定義する必要がある。IQだけでは知的障害の診断もできないし、重症度分類も支援ニーズの把握もできない。近年の障害学の進歩を踏まえれば、DSM-5、 ICD-11と大きな乖離がない診断基準が必要であろう。そのためには、最低限、知能水準、適応行動尺度、発症年齢の3つの要素についての情報が必要である。③: これらのことから、統一的な判定業務について少なくとも一定の基準を明記する必要があるのではないとか考え、その後、各児童相談所でどのような判定の手続きにするかは、療育手帳の申請者の公平性が失われないように配慮しながら、児童相談所が設置されている地域性を考慮して、判定業務の具体的な進め方を検討していく必要がある。④選定された適応行動尺度および知的機能検査のパッケージは、いずれも高い信頼性(内的整合性)を有した。知的発達症の判別においては、両者を年齢層に応じた重みづけで合成したときに精度が最大化され、幼児では感度.973、特異度.980、児童青年では感度.986、特異度.958という良好な性能を発揮し、ゴールドスタンダードであるウェクスラー式知能検査の感度をも上回ることが示された。ROC分析におけるAUCは幼児で.995、児童青年で.997であり、知的発達症の診断に対して最良の判別精度を有することが確認された。
結論
各都道府県・指定市等で運用されている療育手帳の判定・交付基準は、知的発達症(知的障害)の国際的診断基準と大きくかい離していること、都道府県・指定市間の判定・交付基準のバラつきにより利用児者およびその家族への負担、公平性の瓦解が生じている。本研究における4つの分担研究から、知的発達症の定義の法制化、国際的診断基準に準拠した療育手帳の判定・交付基準を整備したうえでの全国統一化を進める必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-09-28
更新日
2023-11-22

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2023-09-28
更新日
2023-10-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
18,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,000,000円
人件費・謝金 5,500,000円
旅費 3,000,000円
その他 5,500,000円
間接経費 2,000,000円
合計 18,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-28
更新日
2024-03-27