精神保健医療の分野における専門性の高い看護師の看護実践の把握及び効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202218029A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療の分野における専門性の高い看護師の看護実践の把握及び効果検証のための研究
課題番号
22GC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
萱間 真美(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国立看護大学校)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸屋 希(聖路加国際大学 精神看護学)
  • 青木 裕見(聖路加国際大学 精神看護学)
  • 木戸 芳史(浜松医科大学 医学部看護学科)
  • 立森 久照(慶應義塾大学 医学部医療システムイノベーション寄付講座)
  • 船越 明子(神戸市看護大学 看護学部精神看護学分野)
  • 片山 成仁(医療法人社団成仁)
  • 高砂 裕子(全国訪問看護事業協会)
  • 草地 仁史(一般社団法人日本精神科看護協会 政策企画局)
  • 平原 優美(日本訪問看護財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神科訪問看護の普及や利用者数の増加に伴い、支援ニーズは多様化しており、サービス提供体制の検討が必要となっている。本研究では、活用が期待されている専門性の高い看護師について、精神科訪問看護における活動実態とニーズを明らかにし、また利用者からみた訪問看護のアウトカムを把握することを目的とした。
研究方法
全国の訪問看護ステーション7,869施設、精神科医療機関1,061施設を対象とした①悉皆調査(Web/FAX質問紙調査)を行い、各施設における専門性の高い看護師の勤務状況および精神科訪問看護の困難、必要な支援を把握した。次に、専門性の高い看護師のいる50施設の施設長、専門性の高い看護師、利用者を対象とした②二次調査を行い、専門性の高い看護師の活動実態と、利用者評価によるアウトカム(ケア内容、満足度、リカバリー志向性、孤独感)を調査した。
結果と考察
専門性の高い看護師(精神看護専門看護師、精神科認定看護師、特定行為研修修了者(精神関連薬物または栄養および水分管理)のいずれか)が配置されている割合は、訪問看護ステーション(回答数2,782施設)で9.5%、精神科医療機関(回答数281施設)で28.5%であった。専門性の高い看護師のいる訪問看護ステーションは、「機能強化型訪問看護ステーション」や「24時間対応体制加算」の届出割合が高く、比較的大規模で多様な機能を担う施設が多かった。
精神科訪問看護における困難は、施設特性によって異なっており、精神科訪問看護を主とする医療機関・ステーションでは、「拒否的な利用者・家族への関わり」や「合併症・身体疾患のケア」の困難が多かった。一方、精神科訪問看護の利用者割合が低い施設では「精神症状のアセスメント・対応」や「症状悪化や自傷他害のリスクの判断」の困難が多く挙げられた。
 利用者(118名)によるアウトカム評価では、孤独感スコアは高齢者に比してやや高く、受けていたケアのリカバリー志向性は先行研究よりも高かった。訪問看護師は、利用者の孤独感に配慮しながら、本人が希望する生活を聞き取り、日常生活や他者との関わりにおいて本人を力づける支援をしていく必要が示唆された。
結論
精神科訪問看護を担う医療機関や訪問看護ステーションは、その施設特性によって、困難や専門性の高い看護師に対するニーズが異なっていた。精神科訪問看護を主とする施設では、身体ケアや関わりの困難な利用者について、多様な領域の専門性をもつ看護師によるサポートや支援が必要である。一方、精神科訪問看護の利用者が少ない施設では、精神症状のアセスメントや、症状悪化時に迅速にリスクと対応を判断し関係機関と調整できるよう、精神看護の専門性をもつ看護師によるコンサルテーションや支援が必要と考えられた。地域ごとの精神科訪問看護の提供体制を整備するためには、専門性の高い看護師によるコンサルテーション(カンファレンスを含む)や同行訪問に対する診療報酬上の評価、ならびにその実施が可能な専門性の高い看護師の配置を機能強化型訪問看護ステーションの指定要件に組み込むことが必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-10-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
精神科訪問看護が普及する中、その実態と施設特性による困難の違いを明らかにし、加えて、専門性の高い看護師の活動実態と役割を把握できたことは新規性が高く、今後のサービス提供体制整備にむけたエビデンスを提供することができた。加えて、利用者による主観的サービス評価結果から、精神科訪問看護の機能を新たな視点で評価することができ、サービスの質向上にむけた評価指標と方法論を提示することができた。本調査結果を踏まえた、継続的なケアのプロセス・効果を評価する仕組みの開発が期待される。
臨床的観点からの成果
精神科訪問看護における合併症・身体症状のケア、症状悪化時のケア、拒否的な対象への関わり等について、各施設の特性を踏まえた施設間連携が必要であることが示され、専門性の高い看護師の活動も含めて提案することができた。また、精神科訪問看護で提供されているケアが利用者によって、どのように認識されているかを把握することができ、ケアの評価と提供のための新たな視点を得ることができた。
ガイドライン等の開発
 本研究ではガイドライン等は開発していないが、精神科訪問看護の質向上にむけて、今後、支援内容や効果評価のためのガイドラインの作成が期待されている。本調査結果で明らかになった、専門性の高い看護師の役割や、施設特性によるニーズ、利用者によるサービス評価の結果は、そうしたガイドライン開発のためのエビデンスとして活用されることが期待できる。
その他行政的観点からの成果
精神科訪問看護を担う医療機関や訪問看護ステーションは、その施設特性によって、困難や専門性の高い看護師に対するニーズが異なることが明らかになった。本結果を踏まえ、専門性の高い看護師によるコンサルテーション(カンファレンスを含む)や同行訪問に対する診療報酬上の評価、ならびに機能強化型訪問看護ステーションの配置について、エビデンスをもとに提言することができた。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
202218029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,980,000円
(2)補助金確定額
5,015,000円
差引額 [(1)-(2)]
965,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,855円
人件費・謝金 6,341円
旅費 0円
その他 3,619,804円
間接経費 1,380,000円
合計 5,015,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-10-05
更新日
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