効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202218023A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究
課題番号
21GC1015
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 大介(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 俊暁(慶應義塾大学 医学部)
  • 中川 敦夫(聖マリアンナ医科大学)
  • 中島 美鈴(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター 臨床研究部)
  • 岡田 佳詠(国際医療福祉大学成田看護学部)
  • 大嶋 伸雄(東京都立大学 大学院人間健康科学研究科)
  • 岡島 美朗(自治医科大学 総合医学Ⅰ)
  • 佐藤 泰憲(慶應義塾大学)
  • 吉永 尚紀(宮崎大学医学部看護学科)
  • 耕野 敏樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、2021年度に、国内精神医療機関を対象とした集団精神療法の実態調査、うつ病・不安症・統合失調症の国際ガイドラインにおける集団精神療法の位置づけの整理、うつ病の集団認知行動療法の介入プログラムの開発とパイロット実施、集団認知行動療法の教育・研修のための研修ニーズ調査、集団認知行動療法の質評価尺度の開発を行った。本年度はこれらの研究をさらに進め、以下の3つの柱で研究を行った。
課題1)保健行政機関における集団精神療法の実態調査
課題2)集団精神療法の介入プログラムの作成と効果研究
①うつ病の集団認知行動療法プログラムの作成とランダム化試験の実施
②リカバリー指向認知行動療法(Recovery-oriented Cognitive Therapy: CT-R)の日本語版マニュアルの開発
課題3)集団精神療法の研修と質担保の方法論の確立
①集団認知行動療法の実践者養成のための研修プログラムの開発と効果検証
②集団認知行動療法治療者の評価尺度の開発および研修・評価への活用
研究方法
課題1)全国の精神保健福祉センター69施設、および、保健所(本所・支所)591施設を対象に集団精神療法の実施状況や課題を調査する。
課題2)①うつ病の集団認知行動療法マニュアルを作成し、ランダム化比較試験を計画立案する。②CT-Rの日本語マニュアルを、cultural adaptationを経て開発する。
課題3)国際的な知見に基づいた集団認知行動療法の研修プログラムを作成し、医療従事者を対象とした効果検証の研究計画を立案する。集団認知行動療法治療者(実践者)の評価尺度を活用する。
結果と考察
課題1)集団精神療法の実施率は、精神保健福祉センターで93.1%、保健所で21.3%であった。当事者のみでなく家族も参加するプログラムも多かった。集団精神療法の目的は、精神疾患の症状改善以外に「知識の向上」「自己の振り返り」「ピアサポート」「居場所づくり」等があり、他の治療と連携して提供目的を検討する必要性が示唆された。心理教育、認知行動療法、家族療法が多く実施されていた。自施設の精神療法が「充足している」と回答した施設は精神保健福祉センターで約25%、保健所で17%にとどまり、職員不足、集団精神療法のスキル不足(研修の機会の不足)が課題の上位にあがった。集団精神療法は、利用者を特定せず広く提供される場合と、特定の精神疾患や悩みを持つ利用者を対象に提供される場合があり、精神保健福祉センターで頻度の多い対象疾患は、行動嗜癖、うつ病、アルコール依存症、アルコール以外の物質関連障害、発達障害、双極性障害で、保健所では、アルコール依存症、統合失調症・精神病性障害、行動嗜癖であった。2021年度の精神医療施設調査の結果(上位がうつ病、統合失調症・精神病性障害、発達障害、不安障害、適応障害、アルコール依存症)と差が見られた。
特定の悩みや問題を持つ利用者の内訳では、「引きこもり」が精神保健福祉センターおよび保健所で多かった。保健所では、遺族ケア、不登校も扱われていた。ただし、「その他」の回答も多くさらなる調査が必要である。
課題2)①1セッション120分×全12回からなるうつ病の集団認知行動療法プログラムを開発し、ランダム化比較試験の計画立案・倫理申請を行い、参加者リクルートを開始した。②CT-Rの日本語版マニュアルを、cultural adaptationを経て開発し、研修を開始した。
課題3)国際的知見に基づいて、一日研修とスーパービジョンの2本立てからなる研修プログラムを作成し、医療従事者を対象とする効果検証の研究計画を立案した。研究デザインは単群前後比較、精神科領域で2年以上の臨床経験を有し、12時間以上の認知行動療法の研修または実務経験のある医療従事者36名を対象とし、研修前・後・6か月後の知識・実践力・実施状況を評価するものとした。研修および評価には、集団認知行動療法の治療者のスキルを評価する尺度を活用した。
結論
全国の精神保健福祉センターと保健所を対象とした集団精神療法に関する実態調査を行い、実施率、内容、課題を明らかにした。うつ病の集団認知行動療法のプログラムを作成し、ランダム化比較試験を開始した。リカバリー指向認知行動療法(CT-R)の日本語版マニュアルを開発した。国際的な知見に基づいて集団認知行動療法の研修方法を開発し効果検証を開始した。研修および評価には、集団認知行動療法の治療者のスキルを評価する尺度を活用した。
今後は、集団精神療法の医療機関・精神保健福祉センター・保健所における実態と課題を比較し、本邦における集団精神療法に関する施策提言、うつ病の集団認知行動療法のランダム化比較試験の完遂、リカバリー指向認知行動療法の実証研究および普及、集団認知行動療法の研修の効果検証と方法論の確立、が課題である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,800,000円
(2)補助金確定額
10,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,255,205円
人件費・謝金 4,320,180円
旅費 375,126円
その他 2,360,616円
間接経費 2,492,000円
合計 10,803,127円

備考

備考
自己資金:3,127円

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
-