文献情報
文献番号
200918028A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性インスリン抵抗性症候群に基づく慢性腎臓病新規治療戦略の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-医療研究・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 脇野 修(慶應義塾大学 医学部)
- 水口 斉(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性腎臓病(CKD)にはインスリン抵抗性(IR)が存在し、Renal Insulin Resistance Syndrome (RIRs,腎性インスリン抵抗性症候群)と呼ばれるが、その発症機序及び臨床的意義は明らかではない。我々はCKDにおいてRIRsがCKD進行並びに心腎連関を引き起こす基盤病態ではないかと想定している。本研究の目的は、当院腎臓内科外来CKD患者について統計学的に、RIRsの発症機序及び臓器障害作用を検討することである。
研究方法
対象は当院腎臓病外来患者185名、 空腹時血糖³ 126mg/dL、GA ³ 16.0% は対象外とした。eGFR、空腹時インスリン血中濃度(IRI)、空腹時血糖(FBS)、脂質データ、HOMA-IR、アルドステロン(ALDO)、ACTH、 活性化レニン濃度(ARC)、尿β2-microglobulin(β2MG)、尿NAG、尿α1-microgloblin(α1MG) を測定し、各ステージごとにパラメータの分布を分散分析にて比較、さらには相関が疑われるパラメーターにつき単回帰分析及び重回帰分析にて解析した。次にCKDstage2~3、HOMA-IR>1.6、血中アルドステロン値>200pg/mlの全てを満たす患者12名を無作為に2グループに分配し、1グループに対してはアルドステロンブロッカーであるスピロノラクトン25mg/日の投与、もう1グループは対象群として、4ヶ月後の検査データを比較した。
結果と考察
その結果HOMA-IRとeGFRとの負の相関が認められ、RIRsの存在が確認された。血中アルドステロン濃度はeGFRに対しては負の相関を認め、空腹時IRIおよびHOMA-IRに対しては正の相関を認めた。重回帰分析においても、血中アルドステロン値は独立したCKDにおけるIRの調節因子であり、スピロノラクトン投与の介入試験にてCKDにおけるIRは改善した。
結論
我々は観察研究、介入研究を通して、RIRs発症においてアルドステロンが重要な役割を果たしている可能性を示唆する結果を得た。アルドステロンはそれ自体、CVD発症およびCKD進行のリスクとなるため、RIRsにおけるアルドステロン上昇はCKD進行の主要な因子である可能性が示唆される。アルドステロンブロッカーは、CKDにおいてRIRsおよび心血管病を抑制する有効な治療戦略である可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2011-05-31
更新日
-