障害特性に対応した住居の構造等の類型化のための研究

文献情報

文献番号
202218017A
報告書区分
総括
研究課題名
障害特性に対応した住居の構造等の類型化のための研究
課題番号
21GC1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 雄二(東京大学 大学院工学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 顕(横浜市総合リハビリテーションセンター 研究開発課)
  • 熊谷 晋一郎(東京大学 先端科学技術研究センター)
  • 亀屋 惠三子(豊田工業高等専門学校 建築学科)
  • 藤井 里咲(東京電機大学 未来科学部 建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究は、障害特性(身体障害、医療的ケア、強度行動障害、高次脳機能障害等)に対応した障害者グループホーム(共同生活援助、以下「障害者GH」)や障害者支援施設を対象として、それぞれの障害特性に対して効果的な住宅構造を類型化するとともに、その費用対効果を明らかにし、障害福祉サービス等報酬改定や社会福祉施設整備費補助金等の今後のあり方の検討における基礎的資料を作成することを目的とした。加えて、それらの結果をとりまとめ、事業者等が参考にできるガイドブックの作成も目的とした。
研究方法
本研究は、障害者GHと障害者支援施設を対象とした悉皆アンケート調査と、いくつかの好事例を対象とした訪問調査(事例調査)により構成される。令和4年度は、令和3年度に行ったアンケート調査の分析を継続するとともに、アンケート調査から得られた障害者GH・障害者支援施設の分類から、特に重度の入居者・入所者を対象とし、かつ建築的工夫を比較的多く行っている施設を対象として、それら建築的工夫を取り入れた経緯や評価などについてのヒアリング調査を行った。
結果と考察
アンケート結果の分析から、障害者グループホームを・障害者支援施設、それぞれ以下のように分類することができた。
障害者グループホーム:グループ1:知的障害・強度行動障害、最重度(314住居)、グループ2:身体障害・車椅子、重度(126住居)、グループ3:精神障害、最軽度(815住居)、グループ4:知的障害、やや軽度(2259住居)
障害者支援施設:グループ1:身体障害・最高齢・最重度・車椅子利用者中心・医療的ケア半数、グループ2:知的障害・やや若年・やや軽度、グループ3:身体障害・やや高齢・最軽度・車椅子利用者半数・高次脳機能障害1割、グループ4:知的障害・最若年・最重度・強度行動障害半数
これらの分類に従い、行われている建築的工夫と職員のケアに対する負担感の関係を分析した結果、以下の事柄が示された。
障害者グループホーム:グループ1(知的・最重度)「共用部のテレビカバー」を行った住居で職員の負担感が低い傾向がある。また「居室の大型化」「居室の窓に割れにくい素材を採用」を行った住居で、職員の介助負担が低い項目が見られる。グループ2(身体・重度)では、「居室にリフト設置」を行った施設で、「排泄介助負担」「災害時安全確保負担」「身体的疲労感」が低い。
障害者支援施設:グループ1(身体・最重度)「居室の大型化」を行った施設で職員の負担感が低い傾向がある。また「居室にリフト設置」をした施設で、「身体的疲労感」が低い。加えて、「居室の壁床に破壊に強い素材使用」「共用部の窓に割れにくい素材使用」など、施設の堅牢性を高める工夫で負担感が低い項目が見られる。グループ2(知的・軽度)では、「居室の大型化」を行った施設で、多くの項目で職員の負担感が低い。また「居室の扉の外側からの施錠可能」や「トイレの壁床に水洗い可能な素材使用」などの工夫でも、負担感の低い項目がある。グループ4(知的・最重度)では、強度行動障害に対応した工夫を実施した場合、多くの工夫にて職員の負担感が低い。特に、「居室の設備カバー」「共用部の設備カバー」「居室の壁床に水洗い可能な素材使用」「居室の壁床に防音性の高い素材使用」などの項目で、職員の負担感が低い。
同様に、行われている建築的工夫と入所者の障害に関する行動の関係などについても、分析を行った。
ヒアリング調査においては、障害者グループホーム・障害者支援施設ともに、対象とする入居者・入所者の特徴によって具体的な施設の建築計画は大きく異なることが示された。またコスト分析からは、建築的工夫を行うことによるコストの増加が極めて明確に示された。例えば障害者支援施設・障害者GHいずれにおいても、強度行動障害のある入所者に対応して居室の壁・扉・窓などに建築的工夫を行った場合、工夫の内容にもよるが、なにも建築的工夫を行わない場合に比べ、1居室において約22%コストが増加すること等が示された。
結論
令和4年度は、アンケート調査結果のさらなる分析を行い、またこれらの調査結果を参照し、好事例を特定した上で、訪問による事例調査を実施した。結果として、障害者支援施設・障害者GHのそれぞれにおいて、入居者の特性に対応した類型分けを行うことができ、またそれぞれの類型における特徴を明らかにすることができた、加えてヒアリング調査からは、施設の特徴に応じた今後の求められる建築計画や課題を示すことができた。最終的に、これら成果を報告書とガイドブックにまとめ、広く周知する体制を整えた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218017B
報告書区分
総合
研究課題名
障害特性に対応した住居の構造等の類型化のための研究
課題番号
21GC1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 雄二(東京大学 大学院工学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 顕(横浜市総合リハビリテーションセンター 研究開発課)
  • 熊谷 晋一郎(東京大学 先端科学技術研究センター)
  • 亀屋 惠三子(豊田工業高等専門学校 建築学科)
  • 藤井 里咲(東京電機大学 未来科学部 建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害特性(身体障害、医療的ケア、強度行動障害、高次脳機能障害等)に対応した障害者グループホーム(共同生活援助、以下「障害者GH」)や障害者支援施設を対象として、それぞれの障害特性に対して効果的な住宅構造を類型化するとともに、その費用対効果を明らかにし、障害福祉サービス等報酬改定や社会福祉施設整備費補助金等の今後のあり方の検討における基礎的資料を作成することを目的とした。加えて、それらの結果をとりまとめ、事業者等が参考にできるガイドブックの作成も目的とした。
研究方法
令和3年度は、多様な障害種別に対応した障害者GH・障害者支援施設等を特定し、またそれら障害者 GH の特徴を明らかにするため、全国の障害者 GH・障害者支援施設等を対象とした悉皆アンケート調査を実施した。令和4年度は、令和3年度に行ったアンケート調査の分析を継続するとともに、アンケート調査から得られた障害者GH・障害者支援施設の分類から、特に重度の入居者・入所者を対象とし、かつ建築的工夫を比較的多く行っている施設を対象として、それら建築的工夫を取り入れた経緯や評価などについてのヒアリング調査を行った。
結果と考察
アンケート調査で得られたデータより、障害者GH・障害者支援施設をそれぞれ4つのグループに分類した。結果、障害者GHにおいては「知的障害・強度行動障害のある最重度グループ」「身体障害のある重度グループ」「精神障害のある・最軽度グループ」「知的障害のあるやや軽度グループ」の4グループに、障害者支援施設においては「身体障害のある最重度グループ」「知的障害のある軽度グループ」「身体障害のある最軽度グループ」「知的障害のある最重度グループ」の4グループに分類することができた。これらの分類に基づき、分類ごとに建築的工夫の特徴や職員のケアに対する負担感、入居者の障害に関わる行動の多寡などを集計・比較した。結果として、障害者GH・障害者支援施設ともに、類型によって行われている建築的工夫・職員のケアに対する負担感・入居者の障害に関する行動の発生状況が異なることが示された。
また、行われている建築的工夫と職員のケアに対する負担感の関係を分析した結果、障害者GHでは「知的障害・強度行動障害のある最重度グループ」において「共用部のテレビカバー」を行った住居で職員の負担感が低い傾向があることや、障害者支援施設では「知的障害のある最重度グループ」において強度行動障害に対応した工夫を実施した場合、多くの工夫にて職員の負担感が低いことなどが示された。
同様に、行われている建築的工夫と入所者の障害に関する行動の関係などについても分析を行い、障害者GHでは「知的障害・強度行動障害のある最重度グループ」において「居室にリフト設置」「居室に電動ベッド」などを行った住居で、「ヒヤリハット」が有意に少ないこと、障害者支援施設では「居室の大型化」「居室にリフト設置」などを行った場合、「転倒等の事故」が有意に少ないことなどが示された。
ヒアリング調査においては、障害者グループホーム・障害者支援施設ともに、対象とする入居者・入所者の特徴によって具体的な施設の建築計画は大きく異なることが示された。またコスト分析からは、建築的工夫を行うことによるコストの増加が極めて明確に示された。例えば障害者支援施設・障害者GHいずれにおいても、強度行動障害のある入所者に対応して居室の壁・扉・窓などに建築的工夫を行った場合、工夫の内容にもよるが、なにも建築的工夫を行わない場合に比べ、1居室において約22%コストが増加すること等が示された。
結論
本研究の成果として、障害者グループホーム・障害者支援施設ともに、入居者の状況によって分類することができ、それぞれの分類によって入居者の行動や職員の負担、そして評価される建築的工夫が異なることが示された。入居者・入所者の生活環境を考える上で、現状だけで無く、将来像を含めて検討を行い、適切な入居者特性を把握する必要がある。加えて、入居者・入所者の特性に応じた建築的工夫には効果があるが、相応のコストが発生すると言うことも示された。ただし、これらの建築的工夫によって、入居者・入所者の障害に関わる行動が落ち着き、職員の支援に関わる負担も軽減できる。それにより、入居者・入所者には快適な環境を提供することができ、また職員確保も容易になることが予想される。それらの事柄を勘案しながら、建築的工夫の導入コストを検討する必要があると言える。最終的に、これら成果を報告書とガイドブックにまとめ、広く周知する体制を整えた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218017C

収支報告書

文献番号
202218017Z