高齢者の自立支援・重度化防止を効果的に進めるための栄養専門職と介護職等による栄養・食生活支援体制の効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202216005A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の自立支援・重度化防止を効果的に進めるための栄養専門職と介護職等による栄養・食生活支援体制の効果検証のための研究
課題番号
21GA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 一弘(駒沢女子大学 人間健康学部 健康栄養学科)
  • 田中 弥生(関東学院大学 栄養学部管理栄養学科)
  • 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
  • 吉田 直美(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野)
  • 山田 律子(北海道医療大学 看護福祉学部)
  • 池田 紫乃(園田 紫乃)(慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学)
  • 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
  • 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
  • 白部 麻樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和 3 年度介護報酬改定において、「高齢者の自立支援・重度化防止」を効果的に行う制度整備が求められている。また介護サービス需要が増加・多様化する中で、現役世代の減少が進むことが予想され、介護現場における ICT 利用促進が求められている。
「高齢者の自立支援・重度化防止」を重点的に推進される介護保険サービス対象者の実態の報告は多く、本研究事業テーマである栄養関連報告では、介護保険施設の低栄養リスク者が半数以上、通所サービス利用者においても低栄養リスク者が30%以上との報告が有る。我々の研究においても、食欲低下、低栄養リスクが介護保険施設入所者の生存率に有意に関連することを報告している。その他の多くの報告知見からも介護保険関連サービス利用者の自立支援・重度化防止には早期からの栄養管理は必要不可欠であり、介護現場で低栄養リスクを早期に把握し栄養専門職へつなぐ栄養指標提示が必要である。
本研究では、介護保険等のサービスとして地域等において効率的に実装されることを目的に以下の調査事業を実施した。
調査事業 1:介護職等から栄養専門職につなぐための簡易な栄養評価指標作成
調査事業 2:簡易な栄養評価指標を組み込んだ介護保険施設等における栄養関連連携モデル作成
調査事業 3:介護保険施設等における栄養関連連携モデル運営マニュアル作成(ICT の活用を含む)
研究2年目は、調査事業 2:簡易な栄養評価指標を組み込んだ介護保険施設等における栄養関連連携モデル作成、調査事業 3:介護保険施設等における栄養関連連携モデル運営マニュアル作成(ICT の活用を含む)を行った。
研究方法
①通いの場への栄養専門職の介入効果に関する検討
会食を行う通いの場に、月に1回、3ヶ月訪問し栄養講話や個別栄養相談と事前・事後アンケート調査を実施した。また対照群を設け、介入と同時期にアンケート調査を行い、介入群との比較検討を行った。
②在宅医療・在宅介護を受ける高齢者への介護支援専門員と連携および栄養専門職の介入効果に関する検討
在宅介護を受ける高齢者を対象に口腔・栄養スクリーニング加算項目に関するアンケートを実施し、介護支援専門員と管理栄養士が共有した。共有後、管理栄養士が月に1回、3ヶ月の在宅訪問し栄養相談を実施した。また介入の前後にアンケート調査を行い前後比較を行った。
③通所施設におけるICTを活用した管理栄養士による栄養支援
A県の同一法人内通所介護を利用する高齢者5名を対象にテレビ通話を用いて、管理栄養士による遠隔栄養支援を月1回、2ヶ月間実施した。
結果と考察
①通いの場への栄養専門職の介入効果に関する検討
介入群は3ヶ月間の介入で有意差は認められず、食品摂取多様性、食欲といった栄養指標に維持傾向が認められた。一方で、対照群は食品摂取の多様性スコアが有意に低値を示し、基本チェックリストは減少傾向が認められた。
また介入の効果については、関心をもつようになったが最も多く、講座の参考度は参考になったの解答が最も多くなっていた。
会食を行う通いの場へ管理栄養士・栄養士・専門職が訪問し、栄養講話や個別栄養相談を行ったところ、介入群で食品摂取の多様性が維持される傾向にあることが明らかとなった。

②在宅医療・在宅介護を受ける高齢者への介護支援専門員と連携および栄養専門職の介入効果に関する検討
介護支援専門員と連携し、管理栄養士が介入を行ったところ食欲、食品摂取多様性が有意に向上した。
また介入の効果については、関心をもつようになったの回答が最も多く、講座の参考度は参考になったの回答が最も多くなっていた。
介護支援専門員と連携し、管理栄養士が在宅訪問を行い、栄養相談等を行うことで食欲、食生活に効果を示すことが明らかとなった。

③通所施設におけるICTを活用した管理栄養士による栄養支援
介入を担当した管理栄養士、通所施設スタッフともに初回の介入時においては、対面が必要であるとの回答であったが、栄養ケアの継続性、情報共有の簡便さという点では前向きな回答であった。一方で、本研究においては、栄養指標に有意な改善の傾向は認められなかった。
通所施設を利用する高齢者へICTを活用した栄養ケア支援を実施し、栄養ケアの継続性、情報共有の簡便さがメリットとなると考えられたが、結果の解釈のためには今後も継続して検討を行う必要がある。
結論
通いの場、在宅介護高齢者への管理栄養士による介入は、食品摂取多様性の維持・向上、食欲の維持・向上に効果を示した。一方で、通所施設へのICTを活用した栄養介入は、使用感、介入の継続については効果的であると考えられたが、対象者の拡大や長期の介入が必要と考えられる。
以上の結果から、介護支援専門員等と管理栄養士が連携するためのツール作成を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202216005B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の自立支援・重度化防止を効果的に進めるための栄養専門職と介護職等による栄養・食生活支援体制の効果検証のための研究
課題番号
21GA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 一弘(駒沢女子大学 人間健康学部 健康栄養学科)
  • 田中 弥生(関東学院大学 栄養学部管理栄養学科)
  • 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
  • 吉田 直美(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野)
  • 山田 律子(北海道医療大学 看護福祉学部)
  • 池田 紫乃(園田 紫乃)(慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学)
  • 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科/研究所 口腔保健と栄養)
  • 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
  • 白部 麻樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民全員が状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」を図る重要性が平成 30 年度介護報酬改定で示された。さらに令和 3 年度介護報酬改定では2040 年を見据え、介護保険の持続可能性を確保しながら、「高齢者の自立支援・重度化防止」を効果的に行う制度整備が求められている。また介護サービス需要が増加・多様化する中で、現役世代(担い手)の減少が進むことが予想され、介護現場における ICT 利用促進が求められている。「高齢者の自立支援・重度化防止」を重点的に推進される介護保険サービス対象者の実態の報告は多く、本研究事業テーマである栄養関連報告では、介護保険施設の低栄養リスク者が半数以上、通所サービス利用者においても低栄養リスク者が30%以上との報告が有る。我々の研究においても、食欲低下、低栄養リスクが介護保険施設入所者の生存率に有意に関連することを報告している(Mikami,Motokawa)。その他の多くの報告知見からも介護保険関連サービス利用者の自立支援・重度化防止には早期からの栄養管理は必要不可欠であり、介護現場で低栄養リスクを早期に把握し栄養専門職へつなぐ栄養指標提示が必要である。
令和3年度の介護報酬改定において、栄養関連の施設系サービスでは、栄養専門職配置を強化し入所者の状態に応じた計画的な栄養管理の実施など、通所系のサービスでは、栄養専門職と介護職員等との連携による栄養アセスメント実施などへ、介護報酬としての評価が検討されている。さらに、栄養管理介入のみならずリハビリテーションおよび機能訓練、さらには口腔・嚥下機能への介入を連携し実施することが効果的であるとの報告(Yoshimura,Shiraishi)がある。以上から、高齢者の自立支援・重度化防止を効率的に行うために、栄養管理も包含した多職種による総合的なリハビリテーション・機能訓練、口腔健康管理が連携し一体的に実施されることが重要である。以上を介護保険等のサービスとして地域等において効率的に実装されることを目的に事業を実施した。
研究方法
調査事業 1:介護職等から栄養専門職につなぐための簡易な栄養評価指標作成
調査事業 2:簡易な栄養評価指標を組み込んだ介護保険施設等における栄養関連連携モデル作成
調査事業 3:介護保険施設等における栄養関連連携モデル運営マニュアル作成(ICT の活用を含む)

研究1年目は、調査事業 1:介護職等から栄養専門職につなぐための簡易な栄養評価指標作成のための栄養評価指標作成データベースの構築を進め、それを基に介護職等と栄養専門職をつなぐツール作成のための栄養指標の検討を行った。
研究2年目は、調査事業 2:簡易な栄養評価指標を組み込んだ介護保険施設等における栄養関連連携モデル作成、調査事業 3:介護保険施設等における栄養関連連携モデル運営マニュアル作成(ICT の活用を含む)を行った。
結果と考察
①研究1年目
通所施設利用者および通いの場参加者のデータ収集を進めN=1168のデータセットを作成した。
また栄養指標の検討にあたり、アウトカムを設定するため、これまで我々調査した通所施設の縦断データを使用し、低BMIと転帰の関連について検討し、通所施設継続には他の因子を調整してもBMIが独立して有意に関連することが明らかとなった。
以上より、低BMI(BMI 21.5kg/m2未満あるいはBMI 18.5kg/m2未満)をアウトカムとし、口腔・栄養スクリーニング加算の同等の項目・後期高齢者の質問票の栄養口腔評価項目の2通りで、感度・特異度・Area Under Curve (AUC)を算出した。結果、口腔・栄養スクリーニング加算の同等の項目4つでのアウトカム検出能について検討したところ、4項目中1項目以上該当している者の割合は81%であった。4項目中1項目以上該当する場合、BMI 18.5kg/m2未満を感度81%、特異度19%でスクリーニングできた。

②研究2年目
 通いの場、在宅介護高齢者への管理栄養士による介入は、食品摂取多様性の維持・向上、食欲の維持・向上に効果を示した。
一方で、通所施設へのICTを活用した栄養介入は、使用感、介入の継続については効果的であると考えられたが、対象者の栄養指標の向上といった効果は示されず、対象者の拡大や長期の介入が必要と考えられる。
結論
以上の結果をもとに、介護支援専門員等と管理栄養士が連携するためのツール作成を行った。ツール内には連携先としての栄養ケア・ステーションに関する情報を含めた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202216005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
第8次医療計画において、在宅訪問栄養の重要性が議論された。本研究では、介護支援専門員と栄養専門職との連携強化のためのツールを作成し、今後の普及・啓発による在宅栄養管理の拡大が期待される。
臨床的観点からの成果
栄養専門職による在宅訪問栄養の効果については、研究が少なく、エビデンスの構築の一助となったと考えられる。
ガイドライン等の開発
介護支援専門員等と栄養専門職の連携強化のためのツールを作成し、共通指標としての口腔・栄養スクリーニング加算の有用性を示した。
その他行政的観点からの成果
栄養ケア・ステーションと連携し事業を展開した。今後さまざまな地域で栄養ケア・ステーションを活用した事業拡大が期待される。
その他のインパクト
今回作成したツールについてプレスリリース等を実施する予定。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
202216005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,500,000円
(2)補助金確定額
9,301,385円
差引額 [(1)-(2)]
198,615円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,146,562円
人件費・謝金 1,996,071円
旅費 1,263,636円
その他 2,703,116円
間接経費 2,192,000円
合計 9,301,385円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-06-06
更新日
-