文献情報
文献番号
200917016A
報告書区分
総括
研究課題名
陽子線高線量率ラインスキャニングの革新的技術の研究
課題番号
H21-トランス・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 禎治(国立がんセンター 東病院臨床開発センター 粒子線医学開発部粒子線生物学室)
研究分担者(所属機関)
- 二瓶 圭二(国立がんセンター 東病院臨床開発センター 粒子線医学開発部)
- 白土 博樹(北海道大学大学院 医学研究科 病態情報学講座 放射線医学分野)
- 石川 正純(北海道大学大学院 医学研究科 先端医学講座 医学物理工学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
陽子線高線量率ラインスキャニングを先駆的に実施するため、その技術の研究開発から実臨床利用までを本研究の最終目的とする。本年度は、陽子線高線量率ラインスキャニングの実施に必要な物理技術の研究及びそれらの物理的な初期検証実施と¬陽子線治療の安全性を評価することを目的とする。
研究方法
本年度は、(1)陽子線スキャニングビームの高精度位置確認システム及び(2)高精度線量制御システムの研究:高線量率陽子線に対する印可電圧による線量モニタの応答特性を検証した。(3)陽子線スキャニングビームの体内照射位置確認システムの研究:生成ポジトロン放出核の観測によって陽子線照射領域を可視化するビームオンラインPETシステムのアップデートとポジトロン放出核の分布位置・強度のシミュレーションシステムの構築を開始した。(4)陽子線スキャニング及び強度変調陽子線治療(IMPT)の最適化治療計画システムの研究:コマーシャルベースの治療計画装置を利用し、強度変調X線治療(IMRT)との比較によりIMPTの特性を検証した。(5)陽子線スキャニングビームの線量の生物学的効果比の高線量率依存性の検証システムの研究:HSG細胞を利用して生物学的効果比をスキャニング照射相当の高線量率陽子線照射実験で検証した。(6)臨床試験:これまでの陽子線治療の実績から治療の安全性を検証した。
結果と考察
(1)及び(2):印可電圧を高くすることで高い精度で高線量率陽子線の測定が可能であった。モニタの有感体積中でのイオン再結合現象が減少したためと考えられる。(3):ポジトロン放出核を生成するのに必要な体内構成元素を区分して画像表示できるシステムを構築した。アップデートされた装置での基礎実験とポジトロン放出核ごとの生成反応断面積を含めた計算手法の整備が重要である。(4):IMPTとIMRTの比較検証でIMPTの線量分布で高い優位性が示された。開発中の陽子線治療計画装置で検証を実施していく必要がある。(5):高線量率と通常の線量率の陽子線において、線量率依存の相違は観測されなかった。生体反応は細胞と全く同じであるとは限らないため生物学的効果比は十分注意して取り扱う必要がある。(6):陽子線ラインスキャニングによる臨床試験が安全である可能性を示すことができた。患者の経過観察を継続し、解析数を増し安全性を向上させる必要がある。
結論
陽子線高線量率ラインスキャニング照射技術の実現、及び実臨床利用に向け、予定していた本年度の研究目的を達成することができた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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