文献情報
文献番号
202214007A
報告書区分
総括
研究課題名
心停止後臓器提供数の減少への効果的な対策に資する研究
課題番号
21FF2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 泰平(藤田医科大学 医学部 移植・再生医学)
- 岩本 整(東京医科大学八王子医療センター 腎臓外科)
- 織田 順(東京医科大学 救急・災害医学分野)
- 渥美 生弘(社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院救命救急センター)
- 小笠原 邦昭(学校法人岩手医科大学 医学部 脳神経外科学講座)
- 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
- 土井 研人(国立大学法人東京大学 医学系研究科 救急・集中治療医学)
- 内藤 宏道(岡山大学病院 救命救急科)
- 中村 健太郎(鹿児島県立大島病院 救命救急センター)
- 吉住 朋晴(九州大学 大学院)
- 山本 輝之(成城大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成22年の臓器移植法改正後、死後の臓器提供総数は僅かに増えたに過ぎず、その中で脳死下臓器提供件数の増加に伴い、心停止後臓器提供件数は大きく減少している。心停止後の臓器提供では腎臓・膵臓・角膜が移植できるとされているが、この大きな減少に加え、脳死下に提供された腎臓は膵腎、肝腎同時移植が優先されるため、特に腎単独での移植数は減少し、結果的に献腎移植希望登録者の移植機会は減少している。
この研究では、心停止後の臓器提供件数を増やすための課題を抽出し、解決法を提示するとともに、腎臓・膵臓・角膜だけでなく欧米移植先進国の様に心停止後の多臓器提供を可能とするための法的・医学的課題を明らかにし、心停止後の献腎移植だけでなく多臓器移植の増加のための施策提言を行うことを目的とする。
この研究では、心停止後の臓器提供件数を増やすための課題を抽出し、解決法を提示するとともに、腎臓・膵臓・角膜だけでなく欧米移植先進国の様に心停止後の多臓器提供を可能とするための法的・医学的課題を明らかにし、心停止後の献腎移植だけでなく多臓器移植の増加のための施策提言を行うことを目的とする。
研究方法
2018年から2020年に心停止後臓器移植経験のある66施設に経験数、摘出手技、手順、実施の課題、要望など、心停止後臓器提供に関心のある170施設に実施に至っていない理由、課題、要望など、都道府県臓器移植コーディネーター47人を対象に経験数、経験手技、手順、実施の課題、要望など、また、心停止後臓器提供の経験のある91施設に経験数、摘出手技、手順、実施の課題、要望などについてSurveyMonkeyを用いて昨年度アンケート調査を依頼した。今年度はこれを集計し、問題点、課題を明らかにした。
また、心停止後多臓器提供・移植が行われている欧米での実態調査のため、心停止後の臓器提供が盛んなスペインで、心停止後の臓器提供について世界中の関係者が集まるワークショップに参加した。これを通して、心停止後多臓器摘出のプロセスを調査し、わが国に導入する際の法的・医学的問題を検討した。
また、心停止後多臓器提供・移植が行われている欧米での実態調査のため、心停止後の臓器提供が盛んなスペインで、心停止後の臓器提供について世界中の関係者が集まるワークショップに参加した。これを通して、心停止後多臓器摘出のプロセスを調査し、わが国に導入する際の法的・医学的問題を検討した。
結果と考察
全国的に脳死下臓器提供の体制整備に力が注がれているが、臓器提供の全体数は増加しておらず、結果的に新停止後臓器提供数の減少につながっている。各アンケート結果から、終末期対応の難しさがあり、脳死以外の方、脳死判定が出来ない方、脳死判定を希望しない方の臓器提供の意思を汲めていないことが明らかになった。
心停止後臓器提供を増やすためには、そのための体制整備の必要があり、その前提として、不可逆的全脳機能不全のガイドラインの統一、脳死以外の終末期患者の臓器提供の意思を適切に汲み取るための制度の構築が必要である。
現在の心停止後臓器提供においては、移植医、コーディネーター、提供施設の負担が大きく、多くの困難がある。移植医の負担軽減のために、摘出チームの輪番制、ECMOや臓器保存技術の活用、救急医や集中治療医との連携を図り、分業できるシステム作りを行っていく必要がある。
臓器提供のためには、救命・集中治療の現場では終末期診断を正しく行うことが必須であるが、そのためには、脳死を臓器提供の時のみ人の死とする考えを改める必要がある。脳死を臓器提供の時のみ人の死とする現在の法律には多くの問題があり、このままでは心停止後の臓器提供に至る過程で多くの困難があることが明らかになった。これを改め、脳死を臓器提供の時だけでなく、一般的な死とすべく法整備が必要であることが明らかであるが、本研究では、そのプロセスに言及することは出来ない。
心停止後臓器提供を増やすためには、そのための体制整備の必要があり、その前提として、不可逆的全脳機能不全のガイドラインの統一、脳死以外の終末期患者の臓器提供の意思を適切に汲み取るための制度の構築が必要である。
現在の心停止後臓器提供においては、移植医、コーディネーター、提供施設の負担が大きく、多くの困難がある。移植医の負担軽減のために、摘出チームの輪番制、ECMOや臓器保存技術の活用、救急医や集中治療医との連携を図り、分業できるシステム作りを行っていく必要がある。
臓器提供のためには、救命・集中治療の現場では終末期診断を正しく行うことが必須であるが、そのためには、脳死を臓器提供の時のみ人の死とする考えを改める必要がある。脳死を臓器提供の時のみ人の死とする現在の法律には多くの問題があり、このままでは心停止後の臓器提供に至る過程で多くの困難があることが明らかになった。これを改め、脳死を臓器提供の時だけでなく、一般的な死とすべく法整備が必要であることが明らかであるが、本研究では、そのプロセスに言及することは出来ない。
結論
昨今の心停止後臓器提供の減少は、脳死下臓器提供への転換、終末期対応の難しさ、移植医の負担が原因であることが推測される。
全国的に脳死下臓器提供の体制整備に力が注がれているが、臓器提供の全体数は増加していない現状がある。脳死以外の方、脳死判定が出来ない方、脳死判定を希望しない方の臓器提供の意思を汲むためには、心停止後臓器提供の体制整備も並行して進める必要がある。
不可逆的全脳機能不全のガイドラインの統一、脳死以外の終末期患者の臓器提供の意思を適切に汲み取るための医療者教育・体制整備が望まれる。
移植医の負担軽減のために、摘出チームの輪番制、ECMOや臓器保存技術の活用、救急医や集中治療医との連携を図り、分業できるシステム作りを行っていく必要がある。
日本人の精神論において、一般的に脳死は人の死とすることはこれまで以上に心停止後提供の減少につながることが予想される。
しかし、患者・家族がより良い最期を迎えるためには、終末期診断を正しく行うことが必須である。そのため、脳死を臓器提供の時のみ人の死とする考えを改める必要があるが、他学会との連携を図り、法整備については慎重に対応していく必要がある。
全国的に脳死下臓器提供の体制整備に力が注がれているが、臓器提供の全体数は増加していない現状がある。脳死以外の方、脳死判定が出来ない方、脳死判定を希望しない方の臓器提供の意思を汲むためには、心停止後臓器提供の体制整備も並行して進める必要がある。
不可逆的全脳機能不全のガイドラインの統一、脳死以外の終末期患者の臓器提供の意思を適切に汲み取るための医療者教育・体制整備が望まれる。
移植医の負担軽減のために、摘出チームの輪番制、ECMOや臓器保存技術の活用、救急医や集中治療医との連携を図り、分業できるシステム作りを行っていく必要がある。
日本人の精神論において、一般的に脳死は人の死とすることはこれまで以上に心停止後提供の減少につながることが予想される。
しかし、患者・家族がより良い最期を迎えるためには、終末期診断を正しく行うことが必須である。そのため、脳死を臓器提供の時のみ人の死とする考えを改める必要があるが、他学会との連携を図り、法整備については慎重に対応していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2023-12-13
更新日
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