アナフィラトキシン阻害ペプチドの実用化推進研究

文献情報

文献番号
200917007A
報告書区分
総括
研究課題名
アナフィラトキシン阻害ペプチドの実用化推進研究
課題番号
H20-トランス・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 秀親(医療法人さわらび会 福祉村病院 長寿医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小橋 修(医療法人さわらび会 福祉村病院)
  • 奥田 研爾(医療法人さわらび会 福祉村病院 長寿医学研究所)
  • 寺尾 恵治(医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 戸苅 創(名古屋市立大学 医学部)
  • 岡田 則子(名古屋市立大学 医学部)
  • 間瀬 光人(名古屋市立大学 医学部)
  • 多田 豊曠(名古屋市立大学 医学部)
  • 大塚 隆信(名古屋市立大学 医学部)
  • 祖父江 和哉(名古屋市立大学 医学部)
  • 宮原 亮(京都大学 医学部)
  • 今井 優樹(名古屋市立大学 医学部)
  • 黒野 幸久(名古屋市立大学 薬学部)
  • 前田 康博(名古屋市立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
50,428,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C5a阻害ペプチドの臨床治療研究を行うため、各施設のIRBの承認を得たプロトコールで医師主導型臨床研究を実施する。
研究方法
・前臨床安全性試験を実施。肺炎などで38℃以上の発熱をした感染患者の血漿ではC5a、HMGB1などの上昇を認めた。
・前臨床安全性試験で安全性の確証がとれたので、正常人での臨床研究を実施するための実験計画を作成し倫理委員会の承認を得た。臨床治験登録は Phase I試験ID「JMA-IIA00027」で登録した(2009.4.6登録)。正常人被験者は50歳以上に限定し、投与量は、カニクイザル及びブタ新生児で救命効果が確認されている2mg/kg とした。
結果と考察
健常人6名に20 mg/kg AcPepAを生理食塩水に溶解(120 mg/180 ml)し、2時間かけて点滴静注を行った。LDHの上昇を若干認めた場合もあったが、それ以外には有害事象を認めなかった。ミオグロビンの上昇を若干認めた場合もあったので、カニクイザルにAcPepAを大量投与して、病理組織学的解析で心筋細胞の一部に若干の細胞変性を認めた。
AcPepAの投与により、致死的炎症病態にあるカニクイザルやCLP処置ブタ新生児敗血症の病態を抑制できるメカニズムを解析した。HMGB1の上昇がAcPepAの投与で抑えられることが、LPS投与カニクイザルでもCLP処置ブタ新生児でも認められた。C5aがC5a第二レセプターであるC5L2に反応して、HMGB1を放出させる作用を抑えることが重要であると考えた。 白血球にLPSやC5aが作用すると白血球が活性化し、C5a第二レセプターのC5L2を発現させる。白血球のC5L2にC5aが反応するとHMGB1を放出するので、その放出されたHMGB1が別の白血球のTLR4に作用してLPSが作用したと同様に活性化され、更にC5L2の発現を促進する。この循環が炎症増悪をもたらすサイトカインストームであるので、AcPepAがC5aを阻害することにより、この増悪循環を断ち切り、ゼプシスの様な過剰炎症反応病態を抑制して治療効果をあげると考えてよい。
結論
炎症細胞膜上に炎症時に発現誘導されるC5L2 (C5a第二レセプター)にC5aが反応するとHMGB1の放出を起こさせ、炎症反応の増悪循環が起こる。このC5aの作用をAcPepAが抑制することによりHMGB1の放出が抑制され、炎症増悪が防がれてゼプシス病態の治療に役立つ。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-