咽頭冷却による選択的脳冷却法の臨床応用を目的とした研究

文献情報

文献番号
200917004A
報告書区分
総括
研究課題名
咽頭冷却による選択的脳冷却法の臨床応用を目的とした研究
課題番号
H19-トランス・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 吉正(岡山大学 岡山大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 浩(岡山大学 岡山大学病院 )
  • 森田 潔(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 武治(大研医器株式会社 商品事業本部)
  • 橋本 裕志(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 國部 雅誠(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 森本 直樹(津山中央病院)
  • 萩岡 信吾(津山中央病院)
  • 内藤 宏道(津山中央病院)
  • 前川 剛志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 笠岡 俊志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 鶴田 良介(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 氏家 良人(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 長野 修(岡山大学 岡山大学病院 )
  • 谷川 攻一(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 鈴木 幸一郎(川崎医科大学 医学部医学科)
  • 土肥 修司(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 稲垣 喜三(鳥取大学 医学部医学科)
  • 市原 清志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 麓 耕二(釧路工業高等専門学校)
  • 清田 和也(さいたま赤十字病院)
  • 川嶋 隆久(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 藤見 聡(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 岸川 政信(済生会福岡総合病院)
  • 恩田 純(北九州総合病院)
  • 篠崎 広一郎(千葉大学医学部附属病院)
  • 小畑 仁司(大阪府三島救命救急センター)
  • 筈井 寛(大阪府三島救命救急センター)
  • 井 清司(熊本赤十字病院)
  • 頼藤 貴志(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 坂本 哲也(帝京大学 医学部医学科)
  • 高橋 毅(熊本医療センター)
  • 石川 雅巳(呉共済病院)
  • 横山 智仁(東京医科大学 八王子医療センター)
  • 谷西 秀紀(岡山大学 岡山大学病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
33,744,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17年度の統計では、日本全国で救急隊員は1年間に9万5千人に対し心肺蘇生を施行しているが社会復帰率はわずか1%以下である。本研究では蘇生時の脳保護に極めて有効な脳低温療法をより発展させた、脳を急速かつ選択的に冷却する方法の開発を通して患者の神経学的予後及びQOLの改善を目的とする。
研究方法
咽頭の1cm外側に総頸動脈が存在する。咽頭を冷却すると総頸動脈が冷却され脳温が低下する。方法としては気管挿管後に咽頭カフを挿入し冷却水を潅流する。本研究は、咽頭冷却カフ及び冷却水潅流装置を作成し、解剖学液構造がヒトに近似したニホンザルを用いて実証試験を行い、臨床応用を目指した臨床研究や臨床評価を行う。
結果と考察
①咽頭冷却カフの改良
平成20 年度に作成した咽頭冷却カフの熱交換効率を改善するため、スーパーコンピュータを用いた熱動態解析を行った。
②咽頭冷却の臨床研究
臨床研究は中央割付(電話)による多施設,無作為化比較試験とした。心肺蘇生時に咽頭冷却を施行し、生命予後、神経学的予後を指標に有効性を確認する。治療法においては咽頭冷却群、コントロール群とも従来の方法に制限を設けず、咽頭冷却群では気管挿管直後に咽頭冷却カフを挿入し、咽頭冷却を2時間施行した。2009 年6 月から2010 年2 月までの10 ヶ月間に1649 名の心肺停止患者が臨床研究参加施設に搬送された。そのうち70 名が対象としてランダマイズされ、咽頭冷却群36 名、コントロール群34 名となった。
結論
RCT データを解析した結果、咽頭冷却は循環動態に悪影響を及ぼすことなく鼓膜温を早期に低下しうることがわかった。また、鼓膜温低下速度は他の冷却法併用の影響をあまり受けていないように見受けられた。このことは咽頭冷却が鼓膜温低下速度を決定する主要因子であることを示している。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200917004B
報告書区分
総合
研究課題名
咽頭冷却による選択的脳冷却法の臨床応用を目的とした研究
課題番号
H19-トランス・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 吉正(岡山大学 岡山大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 谷西 秀紀(岡山大学 岡山大学病院)
  • 高田 研(岡山大学 岡山大学病院)
  • 片山 浩(岡山大学 岡山大学病院)
  • 森田 潔(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 武治(大研医器株式会社 商品事業本部)
  • 橋本 裕志(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 國部 雅誠(大研医器株式会社 商品開発研究所)
  • 森本 直樹(津山中央病院)
  • 萩岡 信吾(津山中央病院)
  • 内藤 宏道(津山中央病院)
  • 前川 剛志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 笠岡 俊志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 鶴田 良介(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 相引 眞幸(愛媛大学大学院 医学系研究科)
  • 氏家 良人(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 長野 修(岡山大学 岡山大学病院)
  • 谷川 攻一(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 廣橋 伸之(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 鈴木 幸一郎(川崎医科大学 医学部医学科)
  • 黒田 泰弘(香川大学 医学部・医学系研究科)
  • 西村 匡司(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 土肥 修司(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 稲垣 喜三(鳥取大学 医学部医学科)
  • 市原 清志(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 麓 耕二(釧路工業高等専門学校)
  • 清田 和也(さいたま赤十字病院)
  • 川嶋 隆久(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 藤見 聡(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 岸川 正信(済生会福岡総合病院)
  • 恩田 純(北九州総合病院)
  • 篠崎 広一郎(千葉大学医学部附属病院)
  • 小畑 仁司(大阪府三島救命救急センター)
  • 筈井 寛(大阪府三島救命救急センター)
  • 井 清司(熊本赤十字病院)
  • 高村 政志(熊本赤十字病院)
  • 頼藤 貴志(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 坂本 哲也(帝京大学 医学部医学科)
  • 高橋 毅(熊本医療センター)
  • 石川 雅巳(呉共済病院)
  • 横山 智仁(東京医科大学 八王子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17年度の統計では、日本全国で救急隊員は1年間に9万5千人に対し心肺蘇生を施行しているが社会復帰率はわずか1%以下である。本研究では蘇生時の脳保護に極めて有効な脳低温療法をより発展させた、脳を急速かつ選択的に冷却する方法の開発を通して患者の神経学的予後及びQOLの改善を目的とする。
研究方法
咽頭の1cm外側に総頸動脈が存在する。咽頭を冷却すると総頸動脈が冷却され脳温が低下する。方法としては気管挿管後に咽頭カフを挿入し冷却水を潅流する。本研究は、咽頭冷却カフ及び冷却水潅流装置を作成し、解剖学液構造がヒトに近似したニホンザルを用いて実証試験を行い、臨床応用を目指した臨床研究や臨床評価を行う。
結果と考察
咽頭冷却カフと冷却水潅流装置の開発と改良を継続的に行い、潅流液温、潅流圧、潅流速の自動制御が可能になった。ニホンザルを用いてシステムの検証を行い、直腸温をほぼ一定に保ちつつ、10 分で2℃以上脳温が低下することを確認した。また咽頭の病理検査では低温障害の発生を認めなかった。以上より、本咽頭冷却システムは咽頭に低温障害を及ぼすことなく、脳温を選択的に低下させることが可能であると考えられた。平成20 年度に岡山大学病院と津山中央病院で行った臨床研究では30分で鼓膜温が0.7℃低下することを観察した。心拍数や血圧に変化を認めなかったことは、咽頭冷却が循環系に対し負荷を与えないことを示している。
結論
RCT データを解析した結果、咽頭冷却は循環動態に悪影響を及ぼすことなく鼓膜温を早期に低下しうることがわかった。また、鼓膜温低下速度は他の冷却法併用の影響をあまり受けていないように見受けられた。このことは咽頭冷却が鼓膜温低下速度を決定する主要因子であることを示している。
また、咽頭冷却群において心停止から脳低温療法開始までの時間がコントロール群と比較して半分以下(52.6 分)となり、より早期から脳を冷却できることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200917004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
咽頭冷却カフと冷却水潅流装置の開発と改良を継続的に行い、潅流液温、潅流圧、潅流速の自動制御が可能になった。ニホンザルを用いて10 分で2℃以上脳温が低下することを確認した。また咽頭の病理検査では低温障害の発生を認めなかった。平成20 年度に行った臨床研究では30分で鼓膜温が0.7℃低下することを観察した。平成20年度の多施設臨床研究では心肺蘇生中に咽頭冷却を施行し循環動態に悪影響を与えることなく早期に鼓膜温が低下することを観察した。
臨床的観点からの成果
脳低温療法は心停止蘇生後の神経学的予後改善に対する有効性が確認されている唯一の治療法である。本研究は、咽頭冷却法は脳を選択的に冷却するため効率よく目標温に到達できること、また全身温を低下させず不整脈を誘発しないので蘇生と同時に冷却を開始できることを示した。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
咽頭冷却は従来の脳冷却法に比べ循環器系への悪影響が少ないため、集中治療室等設備の整った拠点病院の少ない地方にも普及しやすいといえる。このため咽頭冷却は、より安全で効果的な蘇生医療を地方にも均等にかつ安価にもたらす可能性がある。
その他のインパクト
山陽新聞(2009/3/24,2009/6/5)、日経産業新聞(2009/9/3)、NHK(2009/5/19)等のメディアに、本研究の咽頭冷却機の開発及び臨床試験が、蘇生時の脳温低下による脳保護法を飛躍させる可能性のある画期的アイデアとして取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
47件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
武田 吉正
脳低温療法の基礎
脳神経外科速報 , 19 (2) , 185-192  (2009)
原著論文2
武田 吉正
脳保護の現状と今後 脳低温療法の現状と今後
Anet , 13 (1) , 8-13  (2009)
原著論文3
武田 吉正
新しい手技による脳低温療法
救急・集中治療 , 21 , 1452-1456  (2009)
原著論文4
麓 耕二
Heat Transfer Characteristics of a Pharyngeal Cooling Cuff for theTreatment of Brain Hypothermia 
Journal of Biomechanical Science and Engineering , 15 (1)  (2010)
原著論文5
佐々木 俊宏
Dynamic changes in cortical NADH fluorescence in rat focal ischemia:Evaluation of the effects of hypothermia on propagation of peri-infarct depolarization by temporal and spatial analysis.
Neuroscience Letters , 449 , 61-65  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-