慢性腎臓病(CKD)患者に特有の健康課題に適合した多職種連携による生活・食事指導等の実証研究

文献情報

文献番号
202212002A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病(CKD)患者に特有の健康課題に適合した多職種連携による生活・食事指導等の実証研究
課題番号
20FD1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
要 伸也(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部 腎臓・高血圧内科学)
  • 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部)
  • 猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)
  • 阿部 雅紀(日本大学 医学部)
  • 金崎 啓造(島根大学医学部)
  • 内田 明子(聖隷佐倉市民病院 看護部)
  • 石川 祐一(茨城キリスト教大学 生活科学部)
  • 竹内 裕紀(東京医科大学病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、チーム医療の実態を把握した上で多職種連携によるCKD療養指導の有効性を実証研究によって示し、エビデンスに基づいた課題解決への提言を行うことである。最終的には、多職種連携の普及による治療目標の達成率向上、さらにCKD重症化予防とQOL改善を目指す。本研究は、進行中の厚生労働省研究班(柏原・岡田班)や腎臓病療養指導士委員会、およびコメディカル団体、日本糖尿病学会とも連携し、CKD対策に係る職種横断的なオールジャパン体制で進めてゆく。
研究方法
以下の課題について、それぞれ研究方法にそって研究を進める。1) CKDにおける多職種連携の実態調査の取りまとめ:昨年度実施したアンケート調査(一次調査)について解析し、次の二次調査(多職種介入研究)に繋げる。2) 多職種連携の有効性に関するエビデンス構築:一次調査から明らかになった多職種介入実施施設のうち協力24施設から、介入前後のΔeGFRや蛋白尿等についてデータ提供いただき、これを解析する。3) 多職種連携に関する既存エビデンス集積を行う。4) 大阪府における特定健診データの解析(保健師介入の実証研究)を継続する。5) マニュアルの作成と普及:ワーキンググループを組織し、多職種連携に関するマニュアルを作成し、公開方法を検討する。6) ホームページによる成果の公表:成果を公表する。7) 課題解決への提言:成果を踏まえ、多職種連携の課題を取りまとめ、その解決方法を提案する。
結果と考察
(結果)
1) CKDにおける多職種連携の実態調査と取りまとめ
一次アンケート調査の結果、約60%の施設から、二次調査への協力の意向が示され、実証研究立案の資料とした。
2) 多職種連携の有効性に関するエビデンス構築
一次アンケート調査に対し回答のあった施設のうち協力の意向の示された24施設の計3,015例のCKD患者について、多職種介入による有効性の解析(多職種介入前後のΔeGFR、蛋白尿の変化)を行った。その結果、CKDステージG3~G5において介入後に有意にアウトカムの改善を認め、多職種連携の有効性が明らかになった。
3) 多職種連携に関する既存エビデンス集積
既存のガイドラインのデータベース統合と新たな文献検索により、英文49件、和文6件が抽出された。
4) 特定健診データの解析(保健師介入の実証研究)
大阪府の各市町村における特定健康診査の実施率は平均30.3%(20%~50%)、特定保健指導実施率は5%~70%と両者に違いが認められたが、両者に関連は認められなかった。また、比較的受診までの期間についても市町村によって開きがあり、この受診までの期間は特定保健指導実施率との関係が認められた。
5) マニュアルの作成と普及
ワーキンググループを組織し、多職種連携による生活・食事指導等のマニュアルを作成した。具体的には、マニュアルの章立てを決定のうえ、各担当の研究分担者・協力者に執筆を依頼、わが国初となる「CKDケアのための多職種連携ガイド」を完成することができた。
6) ホームページによる成果の公表
研究班のホームページに本研究の成果(実証研究の結果と多職種連携ガイド)を公表する準備を進めた。

7) 課題解決への提言
実態調査から得られた課題、および実証研究の結果、および既存のエビデンス解析の結果等をふまえ、具体的な教育プログラム開発に向けた基盤が整った。また、CKDチーム医療による多職種療養指導の診療報酬反映に向けた準備を開始している。
(考察)
CKD診療における多職種連携の実態調査および多職種介入研究により、多職種連携の有効性が示された。文献検索等や特定健診調査によりわが国においても近年多職種介入のエビデンスが蓄積して来ていることも明らかになった。以上の取組みは、CKD多職種療養指導の診療報酬獲得に向けた基盤になると期待される。また、これらの成果をもとに、CKD多職種連携ガイドも作成することができた。腎臓専門医のみならず、多職種からの多面的な視点から記載がなされている。今後は、どのような多職種連携方法が効果的かを明らかにし、多職種連携を全国に普及させることが重要である。
結論
研究成果を通じて、わが国のCKD診療における多職種連携の実態と課題が明らかになり、多施設全国調査により、多職種介入の有効性を示すことができた。今後は、標準的な多職種による教育プログラムを開発し、全国展開することにより、CKD重症化予防とCKD患者のQOL改善、医療費節減に繋げることができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202212002B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性腎臓病(CKD)患者に特有の健康課題に適合した多職種連携による生活・食事指導等の実証研究
課題番号
20FD1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
要 伸也(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部 腎臓・高血圧内科学)
  • 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部)
  • 猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)
  • 阿部 雅紀(日本大学 医学部)
  • 金崎 啓造(島根大学医学部)
  • 内田 明子(聖隷佐倉市民病院 看護部)
  • 石川 祐一(茨城キリスト教大学 生活科学部)
  • 木村 健(兵庫医療大学 薬学部)
  • 竹内 裕紀(東京医科大学病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、CKDにおけるチーム医療の実態を把握した上で多職種連携による療養指導の有効性を実証研究によって示し、エビデンスに基づいた課題解決への提言を行うことである。最終的には、多職種連携の普及による治療目標の達成率向上、さらにCKD重症化予防とQOL改善を目指す。本研究は、進行中の厚生労働省研究班(柏原・岡田班)や腎臓病療養指導士委員会、およびコメディカル団体、日本糖尿病学会とも連携し、CKD対策に係る職種横断的オールジャパン体制で進める。
研究方法
以下の課題について研究を進める。1) CKDにおける多職種連携の実態調査の取りまとめ:昨年度実施した一次調査について解析し、次の二次調査(多職種介入研究)に繋げる。2) 多職種連携の有効性に関するエビデンス構築:一次調査を実施した多職種介入実施施設のうち協力24施設から、介入前後のΔeGFRや蛋白尿等についてデータ提供いただき、これを解析する。3) 多職種連携に関する既存エビデンスの集積を行う。4) 大阪府における特定健診データの解析(保健師介入の実証研究)を継続する。5) マニュアルの作成と普及:WGを組織し、多職種連携に関するマニュアルを作成し、公開方法を検討する。6) ホームページによる成果の公表、7) 課題解決への提言:成果を踏まえ、多職種連携の課題を取りまとめ、その解決方法を提案する。
結果と考察
(結果)
1)CKDにおける多職種連携の実態調査と取りまとめ
日本腎臓学会認定教育施設704施設を対象とする一次アンケート調査の結果(回答率40.9%)、75%の認定施設で多職種によるCKD療養指導が実施され、40%の施設で効果検証、30%でそれらの学会・研究会発表を行っていることが判明した。評価項目は、教育前後のGFR変化が最も多く、蛋白尿減少効果が多かった。また、約60%の施設から、二次調査への協力の意向が示され、実証研究立案の資料とした。
2)多職種連携の有効性に関するエビデンス構築
一次アンケート調査に対し回答のあった施設のうち協力の意向の示された24施設の計3,015例のCKD患者について、多職種介入による有効性の解析(多職種介入前後のΔeGFR、蛋白尿の変化)を行った。その結果、CKDステージG3~G5において介入後に有意にアウトカムの改善を認め、多職種連携の有効性が明らかになった。
3)多職種連携に関する既存エビデンス集積
既存のガイドラインのデータベース統合と新たな文献検索により英文49件、和文6件が抽出された。
4) 特定健診データの解析(保健師介入の実証研究)
大阪府の各市町村における特定健康診査の実施率は平均30.3%(20%~50%)、特定保健指導実施率は5%~70%と両者に違いが認められたが、両者に関連は認められなかった。また、比較的受診までの期間についても市町村によって開きがあり、この受診までの期間は特定保健指導実施率との関係が認められた。
5) マニュアルの作成と普及
WGにて多職種連携による生活・食事指導等のマニュアルを作成した。具体的には、マニュアルの章立てを決定のうえ、各担当の研究分担者・協力者に執筆を依頼、わが国初となる「CKDケアのための多職種連携ガイド」を完成することができた。
6) ホームページによる成果の公表
研究班のホームページに本研究の成果(実証研究の結果と多職種連携ガイド)を公表する準備を進めた。

7) 課題解決への提言
実態調査から得られた課題、および実証研究の結果、および既存のエビデンス解析の結果等をふまえ、具体的な教育プログラム開発に向けた基盤が整った。また、CKDチーム医療による多職種療養指導の診療報酬反映に向けた準備を開始している。
(考察)
CKD診療における多職種連携の実態調査および多職種介入研究により、多職種連携の有効性が示された。文献検索等により、わが国においても近年多職種介入の有効性を示すエビデンスが蓄積して来ていることが明らかになった。大阪府におけるCKDの特定健診の結果は、CKDの早期発見、早期治療における保健師介入の重要性を示している。以上の取組みは、CKD多職種療養指導の診療報酬獲得に向けた基盤になると期待される。また、これらの成果をもとに、CKD多職種連携ガイドも作成することができた。腎臓専門医のみならず、多職種からの多面的な視点から記載がなされている。今後は、どのような多職種連携方法が効果的かを明らかにし、多職種連携を全国に普及させることが重要である。
結論
本研究班の取り組みにより、わが国のCKD診療における多職種連携の実態と課題が明らかになり、多施設全国調査により多職種介入の有効性が示された。今後は、多職種による教育プログラムを開発、全国展開することにより、CKD重症化予防とCKD患者のQOL改善、医療費節減に繋げることができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202212002C

収支報告書

文献番号
202212002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,525,093円
人件費・謝金 650,570円
旅費 825,111円
その他 2,010,022円
間接経費 2,300,000円
合計 10,310,796円

備考

備考
自己資金310,796円使用のため

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-