SPECT検査の精度向上と施設間誤差のない標準的画像診断法の確立

文献情報

文献番号
200917001A
報告書区分
総括
研究課題名
SPECT検査の精度向上と施設間誤差のない標準的画像診断法の確立
課題番号
H19-トランス・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 秀博(国立循環器病研究センター 画像診断医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡部 浩司(国立循環器病研究センター 画像診断医学部)
  • 石田 良雄(国立循環器病研究センター 主任医長)
  • 中川原 譲二(医療法人医仁会 中村記念病院 診療本部長)
  • 山田 章吾(東北大学病院 がんセンター長 放射線治療科 教授)
  • 松田 博史(埼玉医科大学 核医学科 教授)
  • 中島 孝(国立病院機構 新潟病院 副院長)
  • 丸野 廣大(虎の門病院 放射線科医長)
  • 畑澤 順(大阪大学 医学部 教授)
  • 橋川 一雄(大阪南医療センター 循環器疾患研究室長)
  • 鈴木 倫保(山口大学 医学部 教授)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 医長)
  • 野口 輝夫(国立循環器病研究センター 医長)
  • 森脇 博(国立循環器病研究センター 医長)
  • 横田 千晶(国立循環器病研究センター 医長)
  • 福島 和人(国立循環器病研究センター 医員)
  • 銭谷 勉(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 越野 一博(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 平野 祥之(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
67,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、既存のSPECT装置を使った診断においてその画像精度の大幅な向上を実現し、PETに匹敵する定量評価診断法の確立を目指す。特に、施設間誤差をなくする一貫した撮像・解析体系を構築し、SPECTを使った多施設臨床研究の実施体制を整備することを目的とする。
研究方法
種々ファントムによって画像精度を確認し、かつ各施設におけるクオリティコントロール(QC)と補正法の精度を検証する中で、ヒト頭蓋を模倣する樹脂構造体(ファントム)を新規に開発した。これを用いて日常の臨床診断における頭蓋輪郭抽出の精度を検証し、標準化の道筋を整備する。脳領域において、局所脳組織血流量および血管反応性の診断法を確立し、施設内再現性、施設を超えた再現性、PETとの一致、さらには高次脳機能との関係や血行再建治療における位置づけについての調査を行った。心筋領域では、心筋組織における虚血の重症度指標としての安静時および血管拡張時の組織血流量の定量診断システムを構築し、その妥当性と動脈硬化の進行を評価する指標としての意義を検証した。多施設臨床研究におけるデータの運用と管理、標準化された解析を支援する人材育成を目指した。
結果と考察
各施設のQCと種々の補正法の標準化によって、すべての施設で画像は改善し、かつ施設を超えた定量計測の標準化が確認できた。このことは幾何学的な形状だけでなくヒト頭蓋をよく模倣する樹脂構造体(ファントム)によって施設や装置を超えた一致が確認された。DTARG理論は[(123)I]IMPの二回投与法によく適用され、安静時および血管拡張時の局所脳血流量の定量評価がなされた。これにより得られた画像は、PETで得た結果画像とよく一致しており、既存SPECTで得られた局所脳血流量および血管反応性は、装置および施設を超えての再現性が確認された。さらに健常者を対象にした検討でも同様の結果が得られた。虚血重症度の指標に基づく薬効評価研究においては、本DTARG理論を医療に反映させる体系がほぼ完成し、多施設臨床研究への利用も開始された。このことから当該ソフトを使うことで定量SPECTは、多施設評価臨床研究においてPETに匹敵する有用な診断手法であることが示唆された。
結論
本定量SPECT画像再構成パッケージによって既存の臨床装置で得た画像の施設間再現性が確保され、多施設臨床研究での貢献が期待された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200917001B
報告書区分
総合
研究課題名
SPECT検査の精度向上と施設間誤差のない標準的画像診断法の確立
課題番号
H19-トランス・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 秀博(国立循環器病研究センター 画像診断医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 譲二(医療法人医仁会 中村記念病院 脳神経外科)
  • 山田 章吾(東北大学病院 放射線診療科 )
  • 松田 博史(埼玉医科大学 核医学科)
  • 中島 孝(国立病院機構 新潟病院)
  • 丸野 廣大(虎の門病院 放射線科)
  • 畑澤 順(大阪大学 医学部 )
  • 橋川 一雄(大阪南医療センター 循環器疾患研究室 神経内科学)
  • 鈴木 倫保(山口大学 医学部 高次統御系脳神経病態学)
  • 金田 朋洋(東北大学病院 )
  • 野口 輝夫(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 森脇 博(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 横田 千晶(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 福島 和人(国立循環器病研究センター 放射線診療部)
  • 石田 良雄(国立循環器病研究センター 放射線診療部)
  • 成冨 博章(国立循環器病研究センター 臨床心理部)
  • 岡山 明(国立循環器病研究センター 予防検診部)
  • 斯波 真理子(国立循環器病研究センター 研究所 分子生物学部)
  • 銭谷 勉(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 林 拓也(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 越野 一博(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 平野 祥之(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
  • 渡部 浩志(国立循環器病研究センター 研究所 画像診断医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、既存のSPECT装置を使った診断においてその画像精度の大幅な向上を実現し、PETに匹敵する定量評価診断法の確立を目指す。特に、施設間誤差をなくする一貫した撮像・解析体系を構築し、SPECTを使った多施設臨床研究の実施体制を整備することを目的とする。
研究方法
我々の開発したSPECT定量解析理論とプログラムパッケージ(QSPECT)に基づき、既存SPECTを使った機能画像の定量診断環境を整備する。種々ファントムによって画像精度を確認し、かつ各施設におけるクオリティコントロール(QC)と補正法の標準化を図る。脳および心筋領域の局所組織血流量および血管反応性、神経受容体の定量評価を行うために、トレーサ動態の解析プログラムを整備する。脳および心筋組織における虚血の重症度指標としての安静時および血管拡張時の組織血流量の定量診断の意義を検証する。さらにこれらの施設を越えた再現性の実証を検証した。また本研究のもう一つの柱である多施設臨床研究におけるデータの運用と管理、標準化された解析を支援する人材育成を目指した。
結果と考察
各施設のQCと種々の補正法の標準化によって、すべての施設で画像は改善し、かつ施設を超えた定量計測の標準化が確認できた。このことは幾何学的な形状だけでなくヒト頭蓋をよく模倣する樹脂構造体(ファントム)によって施設や装置を超えた一致が確認された。DTARG理論は[(123)I]IMPの二回投与法に適用され、安静時および血管拡張時の局所脳血流量の定量評価がなされた。これにより得られた画像は、PETで得た結果画像とよく一致しており、血管反応性の低下領域と程度は、装置および施設を超えての再現性が確認された。さらに健常者を対象にした結果でも同様の結果が得られた。虚血重症度の指標に基づく薬効評価研究においては、本DTARG理論を医療に反映させる体系がほぼ完成し、多施設臨床研究への利用も開始された。このことから当該ソフトを使うことで定量SPECTは、多施設評価臨床研究においてPETに匹敵する有用な診断手法であることが示唆された。本研究の目標であった循環器疾患に対する治療薬の大規模臨床試験を実施する体系の構築が達成された。今後はこの体系を血管病変リスク因子と本検査で得られる脳・心筋の血管反応性との関係調査、脳梗塞2次予防に向け利用されるべきである。
結論
本定量SPECT画像再構成パッケージによって既存の臨床装置で得た画像の施設間再現性が確保され、今後、多施設臨床研究での貢献が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200917001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床SPECT検査における誤差要因をモデル化し、正確な補正と実用的な画像化が可能になった。このことは、既存のSPECT装置を使った検査の診断精度の向上と、施設や装置を超えた再現性が確保されたことを意味する。従来はPETのみで可能とされた機能画像の定量化診断が、日常の臨床で広く利用されている既存のSPECT装置を用いて実施可能になった。この成果は、米国核医学会のハイライト講演や学会誌ハイライト記事で紹介され、国内外より大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
施設間誤差をなくするSPECT撮像・解析が開発されたことで、既存のSPECT装置を利用した大規模多施設臨床研究の実施が可能になり、一線の臨床機関での利用が開始されるに至った。特に、主幹動脈閉塞症におけるステント留置術や血管内外科術治療の適用を決める術前診断、同症例の術後評価などを目的に、国内で140の施設にて、年間9,500を超える症例を対象に利用されている。また、心筋領域でも同様の定量化診断が可能になり、今後新しい臨床検査法として大きく期待されている。
ガイドライン等の開発
今までは、SPECT画像の定量性を保障する画像再構成ソフトが存在しなかったために、医療機器工業会の規格(NEMA規格)にもSPECT画像の一様性については言及されていない。このような中で、当該研究成果によって、一部の機器メーカーでは独自のQC指標が整備されるに至った。日本核医学会内では研究主任者のもとにワーキンググループが設立され、今後はガイドラインの作成に貢献することが期待される。
その他行政的観点からの成果
米国FDAにおいても新薬開発の加速のためにPETの利用が推奨され、ただし画像の標準化の必要性が示唆されている。当該研究成果の最も重要な点は、今まではPETでのみ可能だった生理機能画像の定量化が全国で多く設置されている既存のSPECT装置を使って実施できることである。一回の撮像で安静時だけでなく薬理的負荷に基づく反応性などの動的機能の診断を介して、薬理効果を正確に評価できるようになったことで、新薬開発の加速に貢献することが期待される。脳梗塞治療薬の開発先進国である我が国にとって極めて重要である。
その他のインパクト
脳画像化装置用頭部模型及びその製造技術など3件の特許、独自の医用画像解析プログラム著作権をそれぞれ取得した。国内の医療機器メーカーや製薬企業とのネットワークは今後の大規模臨床試験において大きな財産である。本研究で設置された事務局では多施設より収集した複数の経時的データについて、初期画像へ位置合わせや部分容積効果補正など一貫した解析を行い、標準化されたデータを研究者に提供することで大きな役割を果たした。これらの研究を支える人材を育成したことは、今後さらに重要なインパクトを与えることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
4件
SPECT画像構成・画像処理の標準化とその評価に関する研究など
原著論文(英文等)
59件
Acceleration of Monte Carlo-based scatter compensation for cardiac SPECT, etc.
その他論文(和文)
35件
核医学的測定法の進歩など
その他論文(英文等)
7件
3D-OZEM reconstraction from truncated data in pinhole SPECT, etc.
学会発表(国内学会)
5件
第49回日本核医学会学術総会・第29回日本核医学技術学会総会学術大会合同シンポジウム(2009/10/2)など
学会発表(国際学会等)
41件
SNM 56th Annual Meeting.Toronto,Canada,2009, etc.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
脳画像化装置用頭部模型及びその製造技術(特願2009-096188)など
その他成果(施策への反映)
5件
QSPECT DTARG法が臨床診断に広く用いられるようになった など。
その他成果(普及・啓発活動)
5件
QSPECT研究会の開催、日本核医学会学術総会での研究成果に関する展示・発表・講演会を開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Teramoto N, Koshino K, Iida H, et al.
Experimental Pig Model of Old Myocardial Infarction with Long Survival Leading to Chronic Left Ventricular Dysfunction and Remodeling as Evaluated by PET
J Nucl Med , 52 (5) , 761-768  (2011)
原著論文2
Ikoma Y, Watabe H, Iida H, et al.
Measurement of Density and Affinity for Dopamine D2 Receptors by a Single PET Scan with Multiple Injections of [11C]raclopride
J Cereb Blood Flow Metab , 30 (3) , 663-673  (2010)
原著論文3
Iida H, Nakagawara J, Hayashida K, et al.
Multicenter evaluation of a standardized protocol for rest and acetazolamide cerebral blood flow assessment using a quantitative SPECT reconstruction program and split-dose 123I-iodoamphetamine
J Nucl Med , 51 (10) , 1624-1631  (2010)
原著論文4
Koshino K, Watabe H, Iida H, et al.
Development of motion correction technique for cardiac 15O-water PET study using an optical motion tracking system
Ann Nucl Med , 24 (1) , 1-11  (2010)
原著論文5
Yamamoto A, Sato H, Iida H, et al.
Use of a clinical MRI scanner for preclinical research on rats
Radiol Phys Technol , 2 (1) , 13-21  (2009)
原著論文6
Kudomi N, Hayashi T, Iida H, et al.
A physiologic model for recirculation water correction in CMRO2 assessment with 15O2 inhalation PET.
J Cereb Blood Flow Metab , 29 (2) , 355-364  (2009)
原著論文7
Ikoma Y, Watabe H, Iida H, et al.
Quantitative evaluation of changes in binding potential with a simplified reference tissue model and multiple injections of [11C]raclopride
Neuroimage , 47 (4) , 1639-1648  (2009)
原著論文8
Iida H, Eberl S, Kim KM, et al.
Absolute quantitation of myocardial blood flow with 201Tl and dynamic SPECT in canine: optimisation and validation of kinetic modelling
Eur J Nucl Med Mol Imaging , 35 (5) , 896-905  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-