文献情報
文献番号
202211080A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMならびに類縁疾患の患者レジストリによる診療連携体制および相談機能の強化と診療ガイドラインの改訂
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 原 誠(日本大学 医学部 内科学系 神経内科学分野)
- 松下 拓也(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
- 磯部 紀子(黒木 紀子)(九州大学 大学院医学研究院)
- 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
- 川上 純(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
- 湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部)
- 水野 敏樹(京都府立医科大学医学研究科)
- 中村 龍文(長崎国際大学 人間社会学部)
- 久保田 龍二(鹿児島大学医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
- 松浦 英治(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 松尾 朋博(長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科)
- 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 田辺 健一郎(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
- 鴨居 功樹(東京医科歯科大学 医学部附属病院)
- 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 脳神経内科)
- 村井 弘之(国際医療福祉大学医学部神経内科学)
- 内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
- 坪井 義夫(福岡大学 医学部脳神経内科学教室)
- 石原 聡(琉球大学病院 第三内科)
- 新野 正明(国立病院機構北海道医療センター 臨床研究部)
- 永井 将弘(愛媛大学医学部附属病院臨床研究支援センター)
- 梅北 邦彦(宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野)
- 竹之内 徳博(関西医科大学 医学部 微生物学講座)
- 佐々木 信幸(聖マリアンナ医科大学 リハビリテーション医学)
- 曽根 正勝(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
松下拓也(令和4年4月1日~令和4年11月29日)
→磯部紀子(令和4年11月30日以降)
部署・職名の変更
研究分担者 松尾朋博
大学院医歯薬学総合研究科・助教(令和4年4月1日~令和5年1月31日)
→病院・講師(令和5年2月1日)
研究報告書(概要版)
研究目的
先行研究で、我々が作成した「HAM診療ガイドライン2019」の実践度の評価や導入の問題点を調査した結果、脳神経内科専門医であってもHAMの診療経験が少なくHTLV-1に関する認知度が低いこと、HAMの活動性の把握に重要なバイオマーカーの測定が可能な環境が整っていない等の問題があることが判明した。そこで本研究では、HAMねっとを基盤とした診療連携体制(主治医と患者の相談支援)を強化する。また、診療ガイドラインの改訂と、最近バセドウ病との関連で重要な知見が得られたHTLV-1ぶどう膜炎(HU)の患者レジストリ構築と疫学特性の解明を目指す。
研究方法
① HAM診療ガイドラインの改訂は、Mindsのマニュアルを活用しGRADEアプローチに基づいて進める。② HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化として、HAMの診療に重要なバイオマーカー測定を可能とした「新HAMねっとの構築と運営」、「主治医相談支援および患者相談支援のためのホームページ改修」を中心に、従来から継続している「HAMねっとデータを用いた疫学調査」と「患者QOL調査」を実施した。③ HU患者レジストリの構築に向け、研究プロトコールの協議を行った。
結果と考察
①HAM診療ガイドラインの改訂
ステロイド内服治療のランダム化比較試験、新しい治療法(ロボットスーツHAL, rTMS療法)や検査法(RAISING法)に関する新規エビデンスの収集に努めた。次にガイドライン作成委員会およびシステマティックレビューチームを設立し、上記エビデンスの集積状況に即して、追加すべき9つの重要臨床課題をCQ 候補として抽出した。
②HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化
「新HAMねっとの構築と運営」に関して、2023年4月時点で96の共同研究機関が登録し、47都道府県のうち37都道府県をカバーしており、新HAMねっとの実施はHAMの全国診療ネットワークの構築につながっている。次に、「主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト改修」を行った。具体的には、HTLV-1情報ポータルサイト内に、新HAMねっと(https://htlv1.jp/hamnet/)を含むHTLV-1関連のwebサイトが集約された。主治医からの相談支援については、新HAM ねっとの共同研究機関登録方法、検査依頼後の相談申込方法をウェブサイトに掲載した。この活動は共同研究機関の登録数増加、主治医からの相談件数の増加につながっている。また患者からの相談支援については、既存のHTLV-1 関連サイトに掲載されているQ&A の内容を再構成し、最新の情報に修正した。これにより、HAM患者とその家族に有用で正確な情報を提供できるようになった。さらに「HAMねっとデータを用いた疫学解析」では、2010年代以降のHAM発症者において、20歳代以下の発症が認められないことが判明し、わが国での母子感染予防対策の効果が現れている可能性が示唆された。またリハビリに関して、片手杖レベルのHAM患者でリハビリを行っている割合が低く、その主な原因として65歳未満で介護保険認定を受けていないことが大きく影響していることが判明した。今後、65歳未満のHAM患者に対して継続的にリハビリを実施していく支援体制の整備が求められる。「患者QOL調査」に関しては、HAM患者の健康関連QOLは一般集団よりも有意に低いことが判明した。また多変量解析の結果、より良い健康関連QOLを維持するためには、感覚障害や排尿障害も含めて症状を包括的にコントロールする必要があると考えられた。
③ HUレジストリの構築と疫学解析
HU患者およびHTLV-1陽性バセドウ病患者を対象としたレジストリ構築のためのプロトコール骨子を策定した。
ステロイド内服治療のランダム化比較試験、新しい治療法(ロボットスーツHAL, rTMS療法)や検査法(RAISING法)に関する新規エビデンスの収集に努めた。次にガイドライン作成委員会およびシステマティックレビューチームを設立し、上記エビデンスの集積状況に即して、追加すべき9つの重要臨床課題をCQ 候補として抽出した。
②HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化
「新HAMねっとの構築と運営」に関して、2023年4月時点で96の共同研究機関が登録し、47都道府県のうち37都道府県をカバーしており、新HAMねっとの実施はHAMの全国診療ネットワークの構築につながっている。次に、「主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト改修」を行った。具体的には、HTLV-1情報ポータルサイト内に、新HAMねっと(https://htlv1.jp/hamnet/)を含むHTLV-1関連のwebサイトが集約された。主治医からの相談支援については、新HAM ねっとの共同研究機関登録方法、検査依頼後の相談申込方法をウェブサイトに掲載した。この活動は共同研究機関の登録数増加、主治医からの相談件数の増加につながっている。また患者からの相談支援については、既存のHTLV-1 関連サイトに掲載されているQ&A の内容を再構成し、最新の情報に修正した。これにより、HAM患者とその家族に有用で正確な情報を提供できるようになった。さらに「HAMねっとデータを用いた疫学解析」では、2010年代以降のHAM発症者において、20歳代以下の発症が認められないことが判明し、わが国での母子感染予防対策の効果が現れている可能性が示唆された。またリハビリに関して、片手杖レベルのHAM患者でリハビリを行っている割合が低く、その主な原因として65歳未満で介護保険認定を受けていないことが大きく影響していることが判明した。今後、65歳未満のHAM患者に対して継続的にリハビリを実施していく支援体制の整備が求められる。「患者QOL調査」に関しては、HAM患者の健康関連QOLは一般集団よりも有意に低いことが判明した。また多変量解析の結果、より良い健康関連QOLを維持するためには、感覚障害や排尿障害も含めて症状を包括的にコントロールする必要があると考えられた。
③ HUレジストリの構築と疫学解析
HU患者およびHTLV-1陽性バセドウ病患者を対象としたレジストリ構築のためのプロトコール骨子を策定した。
結論
本研究班はHAM診療ガイドラインの改訂に向けCQ候補を明確化できた。また、HAM診療ガイドライン2019の診療現場への導入は継続的に実施され、新HAMねっとの参加施設や検査依頼が順調に増えた。今回HAMねっとのウェブサイト改修を受け主治医と患者に対する相談支援がより一層充実した。この支援体制基盤の強化は全国のHAM患者のQOL向上につながると期待される。また、HU発症とバセドウ病やその治療薬との因果関係を明らかにするためにHUレジストリ構築による疫学解析が喫緊の課題であるが、これまでのレジストリ構築の経験を活かして進捗している。以上のように、本研究はHAMに関連する研究や情報が有機的につながることで、全国の診療体制強化と患者のQOL向上に寄与し、HTLV-1総合対策を大きく前進させると期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-04-09
更新日
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