好酸球性副鼻腔炎における手術治療および抗体治療患者のQOL評価と重症化予防に関する研究

文献情報

文献番号
202211062A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎における手術治療および抗体治療患者のQOL評価と重症化予防に関する研究
課題番号
21FC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
研究分担者(所属機関)
  • 竹野 幸夫(広島大学大学院医系科学研究科耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室)
  • 三輪 高喜(金沢医科大学 医学部 耳鼻咽喉科)
  • 小林 正佳(三重大学 大学院 医学系研究科)
  • 近藤 健二(東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科)
  • 都築 建三(兵庫医科大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 吉田 尚弘(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 松根 彰志(日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科)
  • 中丸 裕爾(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室)
  • 太田 伸男(東北医科薬科大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 秋山 貢佐(香川大学 耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
  • 平野 康次郎(昭和大学 医学部)
  • 朝子 幹也(関西医科大学総合医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 上野 貴雄(金沢大学 附属病院 耳鼻咽喉科頭頸部外科)
  • 舘野 宏彦(富山大学 学術研究部医学系)
  • 中村 真浩(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の治療に関して、経口ステロイド使用は副作用の発生を考慮して国際的には使用抑制の機運がある。その背景にはECRSに対する生物学的製剤の使用が大きい。本研究班では国内の医師の治療実態を調査する。またECRSでは嗅覚障害を主訴に受診することが最も多い。ECRSの嗅覚障害の特徴、治癒率を求める。生物学的製剤による、ECRS・喘息に合併した難治性の好酸球性中耳炎への効果を調べる。ECRSの病態解明と新規治療法の開発を目指す。
研究方法
2015年から2020年までの間の登録症例において、術後の経口ステロイド使用状況調査を解析する。鼻・副鼻腔手術ウェブ講義に登録した435人に、医師の経験年数、ECRSに対する治療法、使用期間についてアンケート調査を行った。502名のECRSと500名のNon-ECRSで嗅覚障害の程度および各種検査データ、それぞれの治癒率を検討した。ECRSに合併している好酸球性中耳炎に対して行われた生物学的製剤の効果を各製剤別に検討した。
結果と考察
手術症例1093名が登録された。術後のステロイド使用状況調査をまとめた結果からは、術後6か月時点でステロイド使用は68.6%と高かった。JESRECスコアによりECRSの重症度をより客観的に認識されたことにより、再発抑制のための経口ステロイド使用が多くなったものと考察した。しかし生物学的製剤の登場により、経口ステロイドの使用が減少してきた。医師経験6年以上で、術後経口ステロイドの処方期間は、2週間程度がおよそ半数で、1か月程度が20%、半年以上が10%程度であった。術後に経口ステロイドを使用しないのは、10%であった。ECRS、NECRSともに性別では男性が女性の1.5倍多く、平均年齢は差がなかった。嗅覚障害の程度は、自覚的評価、VAS、SAOQ、平均検知域値、認知域値、Open EssenceスコアいずれもECRSの方が高度であった。ECRSが72.1%、NECRSが63.6%であった。年齢による治療効果に関して、ECRS症例では、55歳未満の群で56歳以上の群よりも有意に改善率が高く、NECRS症例では治癒、軽快を合わせた改善率では年齢による有意差は出なかったものの、治癒に至る症例は51.1%と56歳以上の症例よりも高い傾向を示した。ECRSに合併している好酸球性中耳炎にはオマリズマブ(11例)でステロイド鼓室内投与回数は減少した。メポリズマブ(8例)でステロイド鼓室内投与回数は減少したが粘膜肥厚、側頭骨粘膜腫脹のスコアが悪化した例があった。ベンラリズマブ(7例):ステロイド鼓室内投与回数は増加した例があった粘膜肥厚の程度、側頭骨粘膜腫脹が全例で維持または改善した。デュピルマブ(22例):ステロイド鼓室内投与回数は減少、気導聴力閾値、側頭骨粘膜腫脹ともに有意差を認め改善し、粘膜腫脹は全例で維持または改善した。
アスピリン喘息(AERD)患者、鼻ポリープを伴うCRS患者から鼻ポリープ組織を、鼻ポリープを伴わないCRS患者、健常者からは鈎状突起を採取して比較したところ、AERD患者の鼻茸において、ビタミンAとレチノイン酸はCRS患者よりも低く、tPAも低下していた。組織中のビタミンAとレチノイン酸、線溶系マーカーとしてtPAとdダイマー濃度をELISA法で測定した結果、線溶系マーカーであるtPAとdダイマー濃度はAERDにおいて最も低かった。正常ヒト気道上皮細胞をレチノイン酸とIL-13の組み合わせで24時間刺激して培養細胞中のtPAのmRNA発現、培養上清中のtPAタンパク濃度を測定したところ、培養細胞ではレチノイン酸刺激によりtPA発現は15倍上昇し、同時刺激によりIL-13のtPA発現抑制を逆転させた。AERD患者の組織ではレチノイドが減少しており、tPA産生減少に伴い線溶系活性を低下させている可能性がある。
血管内皮細胞に発現しているPeripheral lymph node addressin (PNAd)を介して好酸球が鼻茸に浸潤していた。Transglutaminase (TGM) isoforms、苦み受容体も病態に関与している可能性を見出した。
結論
予後調査のレジストリー、ウェブ登録者からの臨床実態調査から、経口ステロイド使用に関するコンセンサス形成に向けて学会での発表、論文作成を進める必要がある。また、医師のみの調査ではなく、患者ニーズ調査を加えていくことにより、本研究班の活動が国民の健康に資するものになるよう、成果を出す。市民講座による一般への普及活動も継続していく。新規治療法の開発、出口戦略についても進めていく。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,410,000円
(2)補助金確定額
7,410,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,174,978円
人件費・謝金 2,316,436円
旅費 169,310円
その他 1,039,276円
間接経費 1,710,000円
合計 7,410,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-02-09
更新日
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