文献情報
文献番号
200912043A
報告書区分
総括
研究課題名
固形がんの標的治療とその治療効果のMRIによる追跡を可能にする診断-治療機能一体型DDSの創製
課題番号
H21-ナノ・若手-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西山 伸宏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- Cabral Horacio (カブラル オラシオ)(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん組織に選択的に集積し、がんのMRI診断に広く利用できるMRI造影剤が望まれているが、そのような造影剤は未だ開発されていないのが現状である。また、がん化学療法においては、その有効性を的確に把握する必要があり、その目的においてMRIは有効な手段であると考えられる。そこで本研究では、研究代表者である西山が過去に開発を行い、現在、第一相臨床治験中のオキサリプラチン活性体(DachPt)を内包する高分子ミセルに、MRI造影剤のGd-DTPAを搭載し、DachPtによる治療効果をMRIによって追跡できる診断-治療機能一体型DDSを開発することを目指している。
研究方法
H21年度は、DachPtとGd-DTPAの混合比を変化させ、それらを同時に内包した高分子ミセルの調製を行い、その最適化を行った。ミセルの物性評価としては、粒径測定とT1緩和能の測定に加えて、リン酸緩衝液中における安定性評価を行った。また、担がんマウスを用いて、ミセルの体内動態、制がん活性、MRイメージングに関する検討を行った。
結果と考察
本年度は、粒径33nmのDachPt/Gd-DTPA内包ミセルの調製法を確立し、ミセルのリン酸緩衝液中での安定性試験により、ミセルからGd-DTPAはDACHPtよりも速くリリースされることが確認された。これは、制がん剤であるDACHPtは、がん組織に滞留する必要がある一方で、Gd-DTPAはMRI撮像後になるべく速やかに体外に排泄されることが望ましいという点からは理想的である。一方で、MRI造影剤としての性能評価では、ミセルはGd-DTPAの24倍のT1緩和能を有することが確認され、非常に高い造影能を有することが示唆された。一方、担がんマウスを用いた検討では、ミセルは優れた血中滞留性と固形がん集積性を示すことが確認され、オキサリプラチンよりも優れた制がん活性を示した。がん組織のMRIに関しては、Gd-DTPAは造影効果を示さなかったが、ミセルにより腫瘍特異的で、かつ持続的なコントラストの増強が確認された。
結論
以上のように本年度は、DachPt/ Gd-DTPA内包ミセルを開発し、物性評価に加えて担がんマウスを用いた動物実験によりその機能検証を行った。本システムは、DachPtによる治療効果をMRIによって追跡できる診断-治療機能一体型DDSとして今後の展開が期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-