難治性聴覚障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211040A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
20FC1048
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 篤(弘前大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科学講座)
  • 和田 哲郎(筑波大学 医学医療系)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
  • 大石 直樹(慶應義塾大学 医学部)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 岩崎 聡(国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科)
  • 野口 佳裕(国際医療福祉大学 医学部)
  • 東野 哲也(国際医療福祉大学 国際医療福祉大学病院)
  • 佐野 肇(北里大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 石倉 健司(北里大学 医学部 小児科学)
  • 将積 日出夫(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学) 耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座)
  • 中西 啓(浜松医科大学 医学部)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学大学院医学系研究科 頭頸部感覚器外科学耳鼻咽喉科)
  • 北原 糺(奈良県立医科大学 医学部)
  • 内藤 泰(地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 前田 幸英(国立大学法人 岡山大学 大学病院)
  • 羽藤 直人(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 山下 裕司(山口大学大学院医学系研究科 医学専攻 耳鼻咽喉科学)
  • 中川 尚志(九州大学 医学研究院)
  • 鈴木 幹男(琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 吉村 豪兼(信州大学 医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室)
  • 茂木 英明(信州大学医学部)
  • 西尾 信哉(信州大学医学部)
  • 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
  • 小林 有美子(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、各疾患の患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。
本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、ミトコンドリア難聴、遅発性内リンパ水腫、鰓耳腎症候群およびその類縁疾患について、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
令和4年度は、前年度までの研究を継続し、若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群、ワーデンブルグ症候群の症例登録レジストリを管理・運営するとともに、全国の拠点医療機関に属する分担研究者および研究協力者より、患者の詳細な臨床情報およびDNA試料を収集し、疾患ごと臨床的所見(臨床像・随伴症状など)の詳細な検討を行なった。また、診断のために必要な遺伝学的検査を実施した。上記に加え、令和4年度は、本研究で全国の共同研究施設より収集された症例に加え、今までの研究で収集されていた日本人難聴患者10,047例の遺伝子解析結果および臨床情報の取りまとめを行い、原因遺伝子毎の臨床的特徴(聴力型、重症度、発症年齢、難聴の進行の程度)に関して検討を行った。
結果と考察
症例登録レジストリに集積された情報を基に若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群、ワーデンブルグ症候群の各疾患に関して、遺伝学的検査の実施率、原因遺伝子の種類と頻度に関して明らかにするとともに、原因遺伝子ごとの臨床的特徴(聴力型、重症度、自然経過、随伴症状の有病率、随伴症状の重症度)や治療介入の実態とその効果に関して検討を行った。各疾患とも希少な疾患であるが全国の共同研究施設との連携により多くの症例の臨床情報が集積され、ガイドライン改定に向けたエビデンスを構築することができた。
本研究で全国の共同研究施設より収集された症例に加え、今までの研究で収集されていた日本人難聴患者の症例数が10,000例を超えたことより、10,047例の次世代シークエンス解析の結果および各遺伝子変異による難聴症例の臨床情報の取りまとめを行った。その結果、対象症例の38.2%に相当する3,896例の原因遺伝子変異を同定することができた。原因遺伝子が同定された症例のデータを基に臨床的特徴(聴力型、重症度、発症年齢、難聴の進行の程度)に関して詳細に検討を行い、各原因遺伝子の特徴を明らかにすることができた。
また、研究成果を保険に還元することを目的に、株式会社ビーエムエルとの連携により保険で実施している「先天性難聴の遺伝学的検査」のアップグレードを2022年9月20日に実施した。検査対象の拡充により確定診断率を10%程度向上させることができた。
結論
令和4年度は、若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群に加え、ワーデンブルグ症候群について、臨床実態を効率的に把握することを目的に、症例登録レジストリを活用して臨床情報収集を行い、多くの症例の臨床情報を収集することができた。収集された詳細な臨床情報を解析することで、各疾患の臨床的特徴、自然経過、随伴症状の有病率、治療介入実態とその効果に関して明らかにすることができ、ガイドライン改定に向けたエビデンスを構築することができた。調査研究に関して着実に成果が得られており、診療ガイドライン改定のための基盤情報が整ってきたため、次年度以降に本研究の成果を反映したガイドラインの改定作業を進める。また、大きな成果として日本人難聴患者10047例の遺伝子解析の結果を取りまとめて報告するとともに、原因遺伝子毎の臨床的特徴を明らかにすることができた。本成果はガイドライン改定のための基盤情報として非常に有益である。また、研究成果の臨床への還元として、保険で実施している遺伝学的検査(先天性難聴・若年発症型両側性感音難聴)のアップグレードを株式会社ビーエムエルとの連携で実施することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211040B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
20FC1048
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 篤(弘前大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科学講座)
  • 和田 哲郎(筑波大学 医学医療系)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
  • 大石 直樹(慶應義塾大学 医学部)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 岩崎 聡(国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科)
  • 野口 佳裕(国際医療福祉大学 医学部)
  • 東野 哲也(国際医療福祉大学 国際医療福祉大学病院)
  • 佐野 肇(北里大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 石倉 健司(北里大学 医学部 小児科学)
  • 将積 日出夫(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学) 耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座)
  • 中西 啓(浜松医科大学 医学部)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学大学院医学系研究科 頭頸部感覚器外科学耳鼻咽喉科)
  • 北原 糺(奈良県立医科大学 医学部)
  • 内藤 泰(地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 前田 幸英(国立大学法人 岡山大学 大学病院)
  • 羽藤 直人(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 山下 裕司(山口大学大学院医学系研究科 医学専攻 耳鼻咽喉科学)
  • 中川 尚志(九州大学 医学研究院)
  • 鈴木 幹男(琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 吉村 豪兼(信州大学 医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室)
  • 茂木 英明(信州大学医学部)
  • 西尾 信哉(信州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、各疾患の患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。
本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、ミトコンドリア難聴、遅発性内リンパ水腫、鰓耳腎症候群およびその類縁疾患について、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
本研究では、若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群、ワーデンブルグ症候群の症例登録レジストリを管理・運営するとともに、全国の拠点医療機関に属する分担研究者および研究協力者より、患者の詳細な臨床情報およびDNA試料を収集し、疾患ごと臨床的所見(臨床像・随伴症状など)の詳細な検討を行なった。鰓耳腎症候群、ワーデンブルグ症候群に関しては令和2年度より調査対象疾患に追加した疾患であることより、研究初年度に調査項目を選定するとともに症例登録レジストリシステムを開発し、令和3年度より本運用を開始して詳細な臨床情報の収集を行った。また、各症候群の診断のために必要な遺伝学的検査を実施した。
上記に加え、令和4年度は、本研究で全国の共同研究施設より収集された症例に加え、今までの研究で収集されていた日本人難聴患者10,047例の遺伝子解析結果および臨床情報の取りまとめを行い、原因遺伝子毎の臨床的特徴に関して検討を行った。
結果と考察
症例登録レジストリに集積された情報を基に若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群、ワーデンブルグ症候群の各疾患に関して、遺伝学的検査の実施率、原因遺伝子の種類と頻度に関して明らかにするとともに、原因遺伝子ごとの臨床的特徴や治療介入の実態とその効果に関して検討を行った。全国の共同研究施設との連携により多くの症例の臨床情報が集積され、ガイドライン改定に向けたエビデンスを構築することができた。また、若年発症型両側性感音難聴に関しては、EYA4、MYO6、MYO15A、POU4F3遺伝子が遅発性の進行性難聴という臨床像を呈し、若年発症型両側性感音難聴の原因遺伝子として追加することが妥当であるというエビデンスを得たことより、診断基準の改定を行うとともに学会承認を得た。さらに、新規の原因としてMYH14、TMC1、MYO7A遺伝子を同定した。これら3遺伝子に関しては次年度以降に診断基準の改定を行い原因遺伝子として追加を行う予定である。
また、日本人難聴患者10,047例の次世代シークエンス解析結果および臨床情報の取りまとめを行った。原因遺伝子が同定された症例のデータを基に臨床的特徴に関して詳細に検討を行い、各原因遺伝子の特徴を明らかにすることができた。また、研究成果を保険に還元することを目的に、株式会社ビーエムエルとの連携により保険で実施している「先天性難聴の遺伝学的検査」のアップグレードを実施し、確定診断率を10%程度向上させることができた。
結論
若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、ミトコンドリア難聴、鰓耳腎症候群に加え、ワーデンブルグ症候群を対象に、All Japanの研究体制により非常に多くの症例の臨床情報を収集することができた。また、収集された詳細な臨床情報を解析することで、各疾患の臨床的特徴、自然経過、随伴症状の有病率、治療介入実態とその効果に関して明らかにすることができ、ガイドライン改定に向けたエビデンスを構築することができた。また、若年発症型両側性感音難聴に関しては、新規原因遺伝子としてEYA4、MYO6、MYO15A、POU4F3遺伝子を追加することが妥当であるというエビデンスを得たことより、診断基準の改定を行うとともに学会承認を得た。また、大きな成果として日本人難聴患者10047例の遺伝子解析の結果を取りまとめて報告するとともに、原因遺伝子毎の臨床的特徴を明らかにすることができた。本成果はガイドライン改定のための基盤情報として非常に有益である。また、研究成果の臨床への還元として、保険で実施している遺伝学的検査(先天性難聴・若年発症型両側性感音難聴)のアップグレードを実施することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211040C

収支報告書

文献番号
202211040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,000,000円
(2)補助金確定額
36,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,290,271円
人件費・謝金 8,307,915円
旅費 3,062,048円
その他 5,056,295円
間接経費 8,300,000円
合計 36,016,529円

備考

備考
自己資金16,529円
その他(利息)0円

公開日・更新日

公開日
2023-12-05
更新日
-