光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発

文献情報

文献番号
200912037A
報告書区分
総括
研究課題名
光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発
課題番号
H19-ナノ・若手-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野 努(国立大学法人 岡山大学 大学院環境学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大河原 賢一(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
光線力学的治療(PDT)は,外部から腫瘍組織選択的に印加する光刺激によって局所的な抗がん効果を期待するものであり,光増感物質を腫瘍組織内部へ安定に送達する技術基盤の確立が鍵を握る。そのため,PDTに必要なポルフィリン類を高効率で封入可能なナノ運搬体の調製技術を構築するとともに,腫瘍組織への移行の駆動力となる高い血中濃度が維持可能な血中滞留型ナノ運搬体の創製とPDTへの適用を目指す。また,疎水性薬物を高効率で内封する機能を積極的に活用することで,作用機序の異なる薬剤との併用型薬剤へ応用を検討する。
研究方法
深部まで光が到達可能な高波長域の光増感剤を開発し,疎水性の高いこの光増感剤を高効率で内封可能な薬物キャリアについて,リポソーム,水中油滴型エマルション,ナノ粒子などの様々なナノ運搬体を検討した。その結果,ポリ乳酸(PLA)鎖とポリエチレングリコール(PEG)鎖を併せ持つジブロック共重合体(PLE)を用いたナノ粒子調製プロセスを検討することによって光増感剤の高効率内封を実現する。ステルス性を備えた100 nm以下のナノ粒子調製条件を見いだし,血中滞留性,一重項酸素生成による殺細胞効果およびin vivoでのPDTによる抗腫瘍効果について評価した。
結果と考察
溶媒拡散法によって調製したPLEナノ粒子は,水溶性PLEと油溶性PLEを組み合わせることで約70 nmのナノ粒子調製を簡便に行えることを確立し,さらにほぼ100%に近い高い内封効率を達成した。また,細胞培地中に分散したナノ粒子へ光照射することによって,極めて低濃度(50 nM程度)でも各種細胞の死滅を可能にした。また,血中滞留性は非常に良好でEPR効果によって腫瘍近傍へ集積させることも確認できた。さらに,担癌マウスを用いたPDTにおいては有意な抗腫瘍効果が確認できた。
結論
高効率で光増感剤を内封可能で100 nm以下のナノ粒子を簡便に安全に調製できる手法を確立した。さらにそのナノ粒子を用いると極めて低濃度でも光照射による高い殺細胞効果を示した。高い血中滞留性と腫瘍への集積が確認されたうえ腫瘍への光照射によって有意な抗腫瘍効果が観察されたことから,PDTのための薬物運搬体として有望であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912037B
報告書区分
総合
研究課題名
光線力学的治療に有効な多機能型薬剤内封ナノ運搬体の開発
課題番号
H19-ナノ・若手-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野 努(国立大学法人 岡山大学 大学院環境学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大河原 賢一(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
光線力学的治療(PDT)は,外部から腫瘍組織選択的に印加する光刺激によって局所的な抗がん効果を期待するものであり,光増感物質を腫瘍組織内部へ安定に送達する技術基盤の確立が鍵を握る。そのため,PDTに必要なポルフィリン類を高効率で封入可能なナノ運搬体の調製技術を構築するとともに,腫瘍組織への移行の駆動力となる高い血中濃度が維持可能な血中滞留型ナノ運搬体の創製とPDTへの適用を目指す。また,疎水性薬物を高効率で内封する機能を積極的に活用することで,作用機序の異なる薬剤との併用型薬剤にも適用可能なナノ運搬体を構築する。
研究方法
深部まで光が到達可能な高波長域の光増感剤を開発し,高効率で内封可能な薬物キャリアとして,ポリ乳酸(PLA)鎖とポリエチレングリコール(PEG)鎖を併せ持つジブロック共重合体(PLE)で構成されたナノ粒子を調製した。本調製プロセスは常温・低エネルギー型の簡便な操作で調製できる。この光増感剤内封ナノ粒子を用いて,in vitro系における殺細胞効果の評価やin vivo系における血中滞留性,体内動態評価および担癌マウスを用いた実際のPDTによる抗腫瘍効果について検討した。
結果と考察
溶媒拡散法によって調製したPLEナノ粒子は,水溶性PLEと油溶性PLEを組み合わせることで約70 nmのナノ粒子調製を簡便に行えることを確立し,さらにほぼ100%に近い高い内封効率で光増感剤含有ナノ粒子を調製できた。また,細胞培地中に分散したナノ粒子へ光照射することによって,in vitro系において極めて低濃度(50 nM)で各種細胞を死滅させることが確認できた。一方,in vivo系においては,PEG化リポソームに匹敵あるいはそれ以上の高い血中滞留性を示し,EPR効果によって腫瘍近傍へ集積することも確認できた。担癌マウスを用いたPDTにおいては,有意な抗腫瘍効果が確認できた。
結論
光増感剤を高効率で100 nm以下のナノ粒子に内封できる簡便なナノ運搬体調製プロセスの構築に成功した。ナノ粒子に内封された光増感剤は,in vitro系,in vivo系においても光照射による殺細胞効果が認められ,ナノ粒子表面構造に基づく高い血中滞留性とナノ粒子サイズに起因するEPR効果での腫瘍近傍への集積が達成された。担癌マウスを用いた実際のPDTによっても抗腫瘍効果が示され,本ナノ運搬体を用いることで,光過敏症のような副作用を抑制したPDTが可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912037C