神経皮膚症候群におけるアンメットニーズを満たす多診療科連携診療体制の確立

文献情報

文献番号
202211035A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群におけるアンメットニーズを満たす多診療科連携診療体制の確立
課題番号
20FC1043
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 整形外科)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 緒方 大(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)
  • 原 政人(愛知医科大学 脳神経外科)
  • 藤井 正純(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 波多野 孝史(東京慈恵会医科大学 医学部 泌尿器科)
  • 久保 亮治(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
  • 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 宮田 理英(東京北医療センター 小児科)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院 神経内科)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科 皮膚科学講座)
  • 大門 真(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 今泉 光雅(福島県立医科大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群は神経と皮膚に加えて、骨・聴覚器・心臓・腎臓・呼吸器.肝臓など多臓器に病変を生ずる難病で、神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、 結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)、ポルフィリン症が含まれる。生命の危機だけでなく、機能的・整容上Quality of Life (QOL)の低下も著しく、患者・家族の治療に対する要望は強い。本研究班の対象疾患は、疾患が多臓器に渡り、年齢、患者によっても症状が異なるため、疾患に応じた実態調査が必要となるので、各疾患患者のアンメットニーズを明らかにして、患者のおかれた状態を少しでも改善する方策を提案することが本研究の全経過を通した目的である。そのために今年度は、①患者レジストリの運用を推進すること、② QOLを含めて疾患に応じた患者実態を探り、アンメットニーズに対応することを目指した。
研究方法
① 疾患レジストリについては。TSCについては2020年から学会主導で立ち上げたレジストリシステムの運用を推進し、結果から導かれる実態を探った。NF1とXPについては2020年から進めていた難病プラットフォームを利用した疾患レジストリのシステムが2021年の12月頃より実装できたので、その運用を進め本研究課題の最終目標である患者のアンメットニーズの克服を達成する基礎となる患者情報の集積をめざした。NF1とXPについては、QOL項目もレジストリに含めた。
② 各疾患に応じたQOLにも着目して調査を行った。特に診療実態が明らかでNF2における脊髄・抹消神経腫瘍の全国的な実態調査なども始めた。NF2患者における聴神経腫瘍切除後の聴力機能の再建についても、実態調査を行った。
結果と考察
疾患レジストリについて:TSCについて:R2年度から運用が開始され、機能も充実しており、患者参加型で登録数も211名に伸びたが、運用コストが嵩むという欠点があり、今年度は一時システムの運用を停止した。今後、システム運用を含めた検討をしつつ、登録を伸ばして臨床情報を今後の医療行政に資する。NF1とXPについては本年度から本格的な運用を進めた、各138例、26例の登録が完了した。解析するほどの症例には達していないが、疾患レジストリを進めたことにより, 今後の患者調査についての研究基盤が確立した。
各疾患におけるアンメットニーズに関する研究については、疾患毎にその実態を把握し、特性に応じた治療の検討やQOL調査のあり方について重症度との関連性も含めて検討した。重症度とQOLの程度は概ね一致するが、一部に一致していない部分もあり、本症候群のように、病変が多臓器にわたり、症状も多彩である疾患におけるdisease burdenをどう捉え、どう評価するかの検討も今後必要と考えた。NF1におけるDNFの出血量を減らす試みや、NF1での各診療科間のネットワーク形成の重要性、NF2における脊髄・末梢神経腫瘍の標準的な治療法の検討とその普及が必要と考えた。
XPとポルフィリン症については遺伝子診断と患者教育にも貢献した。NF1やTSCでは近年登場した分子標的薬の全身臓器への有効性が明らかになりつつあり,ガイドラインの改定などをタイムリーに行え,患者ならびに医療行政にも寄与するものと考える。
結論
神経皮膚症候群のアンメットニーズを満たすため、各疾患における最適な治療法について探索し、現状での患者の置かれている状況の把握を目的として, R3にレジストリの運用を開始した3疾患について、疾患レジストリを進めたことにより, 今後の患者調査についての研究基盤が確立した. XPとポルフィリン症については早期診断が患者の予後の面からも重要であり, 研究班としても診断の確定ならびに患者教育にも貢献した. NF1やTSCでは近年登場した分子標的薬の全身臓器への有効性が明らかになりつつあり, それに応じたガイドラインの改定などをタイムリーに行え,患者ならびに医療行政にも寄与するものと考える.

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211035B
報告書区分
総合
研究課題名
神経皮膚症候群におけるアンメットニーズを満たす多診療科連携診療体制の確立
課題番号
20FC1043
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 整形外科)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 緒方 大(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)
  • 原 政人(愛知医科大学 脳神経外科)
  • 藤井 正純(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 波多野 孝史(東京慈恵会医科大学 医学部 泌尿器科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 宮田 理英(東京北医療センター 小児科)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院 神経内科)
  • 中野 英司(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科 皮膚科学講座)
  • 大門 真(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 今泉 光雅(福島県立医科大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 久保 亮治(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
  • 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経線維腫症1型(NF1)、神経線維腫症2型(NF2)、結節性硬化症(TSC)および色素性乾皮症(XP)ポルフィリン症は神経と皮膚に加えて、骨・聴覚器・心臓・腎臓・呼吸器.肝臓など多臓器に病変を生ずる難病で、生命の危機に加えて、機能的・整容上Quality of Life (QOL)の低下も著しく、患者・家族の治療に対する要望は強い。年齢依存的に、また、患者によっても、臓器症状や症状が異なるため診療科横断的な診療体制への社会的要請は強い。本研究の目的は、患者の診療実態を探り、そのアンメットニーズを明らかにすることにより、患者の置かれた状態の改善ならびに改称を目指すことである。
研究方法
アンメットニーズを把握するために、研究期間の前半は難病レジストリシステムの立ち上げとその運用に力点を置いた。TSCについては、日本結節硬化症学会の主導で関ジュや参加型の双方向性のレジストリシステムが確立され、R2年度から運用が開始された。NF1とXPについては、難病プラットフォームを利用した難病レジストリシステムを立ち上げた。疾患毎の入力項目についてNF1,XP各疾患毎で研究分担者の間での意見調整を行った後、合同会議を重ね、全国の臨床医の入力が進むように、ベンダーのシステムエンジニアも交えて入力しやすいシステムを構築し、2021年の10月から試行→問題点の抽出と改良→12月頃からは実装した。
各疾患におけるアンメットニーズに関する研究については、疾患毎にその症候や治療対象となる臓器、また年齢、個体で異なるので、各疾患に応じてその実態を把握し、疾患特性に応じたQOLに着目した調査のあり方、ならびに治療法の調査を実施し、重症度との関連性も含めて検討した。
結果と考察
疾患レジストリについて: TSCについては、登録数も211名に達し、疾患レジストリを用いた臨床情報の習得と解析が可能となったが、優れたレジストリシステムだけに維持費にコストが嵩むという難点があり、どの情報を優先的に取得するかも今後の課題となる。
NF1とXPについては、2021年12月頃から実装し、NF1:138例、XP:26例の登録が完了した。まだ、解析をするには症例数が不足するが、疾患レジストリシステムを確立し、運用を開始したことにより, 今後の患者の臨床情報・QOL調査の研究基盤が確立した。
各疾患におけるアンメットニーズに関する研究については、疾患毎にその実態を把握し、疾患特性に応じたQOLに着目した調査のあり方、ならびに治療法の調査を実施し、重症度との関連性も含めて検討した。重症度とQOLの程度は概ね一致するが、一部に一致していない部分もあり、今後は、病変が多臓器にわたり、症状も多彩である疾患におけるQOLの評価方法の検討も必要と考えた。NF1やTSCでは近年登場した分子標的薬の全身臓器への有効性が明らかになりつつあり,ガイドラインの改定などをタイムリーに行え,患者ならびに医療行政にも寄与した。NF2については、AMEDと連携して、bevacizumabによる聴神経腫瘍成長抑制について医師主導治験をスタートし、精力的な広報活動により、コロナ禍で他府県への移動が制限される中、エントリーを達成できた。R3-R4には聴神経腫瘍摘出後の聴力障害に対するアンメットニーズの掌握とその克服にも注力した。XPとポルフィリン症については遺伝子診断と患者教育にも貢献した。XPでは遺伝子-症状相関が見られる例が知られるが、NF1では遺伝子解析により病的遺伝子変異がわかる率は66.7%であり、診断精度の向上には、exome解析に続く二次的な検査の確率が必要であると考えた。ポルフィリン症では患者の診断と診療を通して実態を調査し, 診療ガイドラインの策定への基礎情報を収集するとともに、ガイドライン策定の工程を進めた。
結論
・TSC、NF1とXPのレジストリシステムが確立し運用が開始されたことから、今後の難病の実態把握の基盤整備が進んだと考える。
・NF1、NF2、XPの患者におけるQOLを含めた実態調査を多角的に、実施した。
NF2のベバシズマブを用いた治療への道筋と、腫瘍摘出後の聴力再建への全国的な診療体制の構築が開始された。
・3年間を通して、XPとポルフィリン症は全国から紹介される疑い症例の遺伝子診断を実施し、難病行政に貢献した。
・上記、遺伝子診断、QOL調査、レジストリでの患者情報の集積などを反映させて、今後の診療ガイドラインの改定に資する。

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
AMEDと連携してNF2に対するベバシズマブの石主導治験を実施し,コロナ禍での他府県の移動が制限されている中で、62例の目標登録数を達成できた。世界的に見ても最大規模の知見となった。また、知見と合わせて、聴覚再建の実態調査など、患者のニーズに合わせて研究を展開できた。
NF1のDNFに対する手術について多診療科での連携により標準化を進めつつある。
臨床的観点からの成果
NF1とXPのレジストリを本研究班で難病プラットフォームを介して立ち上げ、それぞれ、133名、26名の登録が進んだ。TSCのレジストリは結節硬化症学会の主導で、患者と医療従事者の双方向でのレジストリを立ち上げ、登録患者数211名に達した。今後、これらのレジストリの利用を促進して、患者の臨床的な実情をより詳細に検討することが可能となる。
ガイドライン等の開発
2021年に国際エキスパートパネルによる改訂版NF1診断基準が発表されたため、2018年の本邦のNF1診断基準との比較検討を行ない、軽微な修正を加えた。遺伝子診断についてはその有用性と結果の解釈の検討を要するため、新規治療薬の記載と合わせて、次の診療GLで盛り込むこととした。ポルフィリン症についても国際的な疾患名を併記し、新しく増えた二疾患を追記する軽微な修正を行った。
その他行政的観点からの成果
NF1、NF2,TSC、XP、ポルフィリン症について難病情報センターのHPを見直して、患者にとってわかりにくい表現などに修正を加え、内容も最新の内容にアップデーとした。
その他のインパクト
TSCのangiofibromaに対するmTOR inhibitorの外用治療薬は患者にとても、医療面でも大きなインパクトがある。AMEDと連携して、世界で初めてXPの医師主導治験が始まった。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
61件
その他論文(和文)
80件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
55件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
5件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
テレビ放送4件、ラジオ放送2件、新聞掲載1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,880,000円
(2)補助金確定額
34,098,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,782,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,258,686円
人件費・謝金 5,606,364円
旅費 1,473,586円
その他 6,480,218円
間接経費 8,280,000円
合計 34,098,854円

備考

備考
自己資金:854円

公開日・更新日

公開日
2024-01-24
更新日
-